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栖鄭 椎(すてい しい)
年齢:
40
性別:
非公開
誕生日:
1983/06/25
職業:
契約社員
趣味:
ビルバク
自己紹介:
 24歳、独身。人形のルリと二人暮し。契約社員で素人作家。どうしてもっと人の心を動かすものを俺は書けないんだろう。いつも悩んでいる……ただの筋少ファン。



副管理人 阿井幸作(あい こうさく)

 28歳、独身。北京に在住している、怪談とラヴクラフトが好きな元留学生・現社会人。中国で面白い小説(特に推理と怪奇)がないかと探しているが難航中。

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このブログは、友達なんかは作らずに変な本ばかり読んでいた二人による文芸的なブログです。      
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129日(土曜)と10日(金曜)、上海の新国際博覧中心で同人即売会COMICUP21CP21)が開かれた。


前回5月に同場所で開催されたCP20にハマってしまった私は今回も当然参加。


 


CP20の模様などはここに書いているので興味がある人は読んでほしい。

 

 


8日(金曜)に会社から高鉄(高速鉄道)に乗り、約6時間かけて上海虹橋駅に到着し、付近のユースホステルに着いたのは深夜12時過ぎ。本番を控えてこの日はすぐに就寝。


 


本番の翌9日は朝8時過ぎにホテルを出て地下鉄に乗り、会場付近の7号線の花木路駅に着いたのはそれから1時間後。花木路駅のプラットフォームや改札口付近にコスプレイヤーがたむろしている。着替えや化粧をしている子らも少なくない。


 


 


CP21は午前10時開場だ。その時間前にすでに大行列が出来ており、一般来場者はその時刻からようやく入場できるが、VIPチケット購入者は8時に事前入場ができ、並ぶ必要もない。


 


しかし6時半のほぼ始発の地下鉄に乗り、8時前に会場に着いた知人たちの情報によると、上海にしては寒い天気の中並ぶ入場者に運営側が優しさを見せたのか、8時半には開場して中に入れたという。一般来場者は入場してから会場に入るまでも長い時間歩く必要があるが、これでますますVIPチケットの存在価値がわからなくなった。


 


中国の同人イベントは大体有料だ。CP21では、事前予約の通常チケットが148元だったが、当日チケットは60元(117元)。VIPチケットは199元だった。もちろんVIPチケットは予約の段階ですぐ完売するので普通チケットの2倍の値段というわけだが、通常チケットと入場時間があまり変わらないのであれば購入者は少し損をした気分にならないのだろうか。


 


ちなみに上記の知人たちは事前に9日と10日の2日分のチケットを購入したのだが、11月に北京大興区の火災により進められた宅配物倉庫整理のせいで起きた宅配便の遅配が原因でチケットが届かず、当日現場で購入することになった。だから日本のコミケのように始発の地下鉄に乗ったのである。


 


結局私も9時過ぎには入場。しかし入場してから会場に入るまで5分以上歩いた。CP20より入場してからの距離が長くなっているような気がする。


 


 


写真はチケット改札場所の様子だ。「実体票」が要するに普通の紙のチケットで、「電子票」が電子チケットだ。前回は電子チケットの確認がやたらチンタラしていたのでこれには期待していなかったのだが今回はスムーズだった。これなら次回から電子チケットを購入しても良いかもしれない。


 


 


会場―同人エリアの様子


 


CP20の時は同人エリア2館と企業エリア1館の計3館を使用していた記憶がある。今回は2館と2館の計4館で企業エリアの規模が増えたが、同人ブースも数が増えた。


 


 


 


CPの同人ブースはやはり女性向けが多い印象だ。『ユーリ!』や『僕のヒーローアカデミア』など日本と同じジャンルの他、『陰陽師』や『全職高手』など中国オリジナルのジャンルや『布袋劇』という中国独自のコーナーもある。


 


当然来場者も女性の方が多い気がする。少なくとも、同人エリアには女性来場者の方が多い。だからVIPチケットの購入者も大体が女性なのだろう。なにせ人気があり行列ができているブースに並んでいるのは大抵女性だった。特に今回で言うと「StudioRS現実幻境」というサークルは1日中行列が途切れることなく、2日目の10日はすでに画集など売り切れていたのにオマケ目当てにまだ大勢が並んでいた。


 


 


中国の同人即売会を語る上で「オマケ」は一目に値する存在だ。中国語で「無料」と書くオマケはポストカードやポスターなどの他、クリアファイルやミニ冊子なども含まれる。おそらく日本語から来ているだろう「無料」にお金を払う必要はないが、お金で買えないという厄介な面も持ち、購入品とセットでサービスとして付いてきて、「無料」だけを配るサークルは少ない。「無料」欲しさにグッズや本を購入するようになったら中国の同人即売会にハマっている証拠だ。


 


 


この「無料」文化は何なのか。日本のコミケ事情を知る知人は、中国だと公式グッズとバッティングする恐れがないからここまで豊富な種類の「無料」グッズが生まれたのではと言っていた。さもありなん。


 


しかしこの「無料」、良い物ばかりではなく正直言って欲しくない物も多い。私がある同人誌を購入しようとした時、それと一緒にポスターと袋まで付けてくれたのだが、荷物が多くなるから同人誌だけくれとサークルに言うと「本だけじゃ売れない。サービスだからもらってくれ」と押し付けられた。


サークル側も全員が上海暮らしというわけではなく私のように北京などから出てきた人間も多い。だから売れ残りを持って家に帰りたくないのだろう。しかしポスターはともかく袋はデカイし使い道はないしで全く無用だ。


 


もらった「無料」の品々


 


 


 


袋・ポストカード・クリアファイル・うちわ?・冊子など


 


 


 


同人サークル


 


今回目立ったサークルは圧倒的な行列の長さを誇った前述の「StudioRS現実幻境」だ。その他行列を作っていたのもやはり女性向けサークルが多く、正直私にはそれがオリジナル同人なのか二次創作なのか、そして中国のものなのかどうかすらもピンとこなかった。


東方の島では設定集を販売し、事前に微博で何度も宣伝をしていた「」というサークルが行列を作っていた。私も並んで購入した。



その他、東方の音楽関係サークルではビートまりおを始めとする日本から来たサークルも多く、あちこちで日本語が聞こえた。翌10日に上海の別の場所で東方のミュージックフェスティバルが開催されたのだが、彼らはそこにも参加したのだろうか。東方関係以外で日本人が出展しているところはなかった、と思うが実際は不明。FATEの島で日本語を聞いたという情報はあった。


 


 今回は早い段階で現金払いから微信支付(WeChat Pay)に切り替えたためか、購入した同人誌の数はCP20よりだいぶ多かった。ほとんどのサークルが微信支付か支付宝のどちらかに対応しており、サークル側も現金より電子マネーの方が便利そうだった。


 サークルによっては支付宝(Alipay)しか対応していないところもあり、私のスマホにはそのアプリがないのでそういうところは現金で払うしかなかった。いくら使ったかデータが残るので、次回からは電子マネー払いをメインにしていったほうがいいかもしれない。




支付宝オンリーのサークル



微信支付と支付宝どちらもOKのサークル


 


同人エリアの端っこに小さな企業ブースがある。


 


ディズニー映画『リトルマーメイド』のデザイナーPHILO BARNHARTCP20に引き続き今回もいて画集にサインとイラストを描いていた。PHILO BARNHART宇宙の銀河を切り取ったかのような派手なジャケットを着ていたのを覚えている。


 


成都で『COMIDAY』という中国語のアニメ情報誌を出版している会社があった。


しかし話を聞いてみると、この雑誌は出版しているが市場に出ることはないようで、今回のようなイベントでのみ販売しているのだと言う。日本と中国のアニメ事情を特集したり、有名な監督らのインタビューを掲載していたり面白い内容だった。


 


 


日本からセル画?を売るブースが来ていたがこれがちょっと近寄りがたい雰囲気を出していた。ブースの中は日本人の中年男性だけ。外に看板も出しておらず遠目から見ると何を売っているのかわからない。やっと来た客がセル画の値段を尋ねるとようやく電卓を出して日本円から人民元に換算する始末。


本人たちにはそのつもりはないんだろうが、感じが悪いし不気味だったし色々対応がお粗末だった。


そこではエロイラスト集も売られていたがどうもどっかで見た絵柄だったので有名な漫画家だったのかもしれない。だが個人的感想を言うと、コンセプトもないエロ同人誌(しかも古い)を売るぐらいなら中国向けに新しいイラスト1枚でも描いた方が断然マシだと思う。



おそらくこのブースはCP20で士貴智志サイン会をやっていたところと同じ会社だろう。CP20のときは漫画家本人が色紙にかなり丁寧なイラストとサインを描いていたせいでファンとの交流が全然できず、それもどうだろうと思ったのだが、今回に比べたらだいぶマシだ。流れ作業で大勢のファンにサインだけするのではなく、1枚のイラストに集中するという企画は面白いし希少価値があるが、今回のコレはなんだったんだろうか。もし次回も出展するのならせめて何をしているブースなのかポスターとか貼ってくれ。


 


 

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 中国歴が長い人間はジャージ(校服)にこそ萌える。

 

本書『昨日青空』(2015年)は2012年に出版された同名タイトルの新装版です。2018年にアニメ映画の上映が決定していて、中国のとあるニュースサイトで「中国版『君の名は』」だと紹介されていました。とは言え、「中国の○○」とはどのジャンルにも見られる常套句で、私は今まで何度「中国の東野圭吾」作品を読んだかわかりません。

 

そして中身を読んでみると……

 

 

自分の好きな女の子が

 

 

クラスの不良に恋していて

 

 

……

 

 

おいコレ、同じ新海誠作品でも『秒速5センチメートル』寄りの作品じゃねぇか。


 おそらくアニメのこと全く知らない記者が中国でも流行った『君の名は』の名前を借りて記事を書いたんでしょうが、わかって書いていたとするならばだいぶ性格悪いですね。

 


1990年代末の中国南部の浙江省南汐(浙江省南渓がモデル)で高校3年生の屠小意はクラス全体が受験に向かっている中でも漫画家になりたいと言う夢を持ち、進学に興味を持っていなかった。教師から同じクラスの女子・姚哲恬と共に黒板係に任命された小意は漫画という共通の趣味の話に花を咲かせ、彼女に心惹かれていく。しかし哲恬は、教育局局長の父親を持つが問題児で1年留年している同じクラスの斎景軒のことが好きだった。ある日、景軒に告白して振られる恬を見た小意は世界から光が消えたようになり、将来の目標を失う。だが友達の花生とゲームセンターで不良に絡まれていたところを景軒に助けられ、3人で野宿をしたことで、小意は景軒の真意を知り、彼と親しくなる。


 

 

この漫画、あらすじを書きづらい内容で、一言で言えばよくある青春漫画なのですが、水彩画的なタッチで描き込まれた背景によってストーリーに丁寧さが増していて、更に作者の口袋巧克力が青春時代を過ごしたであろう90年代の中国の様子が見事に再現されていて、絵から伝わる情報量が豊富です。町並みや家屋の様子などが中国人の郷愁を引き起こすものであるばかりか、小意が読んでいる漫画が「ドラゴンボール」であったり、ゲーセンで不良相手に「キング・オブ・ファイターズ」で連勝したりしていて、1ページごとの情報量が多く、毎ページ隅々まで目を通す価値があります。

 

 

この漫画、上の画像のようにセリフよりも小意の独白が圧倒的に多いのが特徴で、自分の描いた絵にセリフの吹き出しで空白を作りたくないから文字だけを入力しているのかなとも思えます。そう考えてしまうぐらい絵が素晴らしいので、中国語がわからなくても漫画を読めと言いたいです。

 

ストーリーだけを見れば決して厚いとは言えないこの漫画がどう映画化されるのか気になるところです。絵は大変素晴らしかったので、アニメ化してそのクオリティが下がることはないようにしてもらいたいです。

 

 

・新装版だけの(?)特典

 

この本は上下巻と言いながらも下巻の半分は別の短編漫画が収録されています。



 『明月清風』は、スポーツの得意な少女・邱望舒と母親の拘束が厳しい夏軽風が高校の女子寮の同じ部屋に暮らし、互いの立場を理解しながら仲良くなっていくという、ジャンルとしては百合に入る漫画です。中国の学校の寮は1つの部屋を大抵4人以上で使うのが一般的で、この漫画も本来は2人の他にまだルームメイトがいたのですが事情によって一室をたった2人で共有することになります。

 

 

そして上巻には旧版出版時に読者から送られた、ジャージを着た学生たちの写真をイラスト化して収録しています。



 またフランス語版の出版を記念して行われたフランスでのサイン会の様子なども載っており、作者の国際的な活躍を読むことができます。

 

 

 

・ジャージ礼賛

 

作者の口袋巧克力は読者の「なぜキャラクターに日本の高校生のような制服を着させず敢えてダサいジャージにしたのか」という問いにこのように答えています。

 

この物語は1990年代の江南の小さな町を舞台にしているので、そこに日本風の制服を着た学生が登場したらギャグにしかなりません。でも中国の一般的なジャージ(校服)を着せたキャラクターをどう魅力的に描けばいいのかにだいぶ悩みました。

 

 

アニメ『快把我哥帯走(兄に付ける薬はない!)』の日本語版タイトルが企画段階では『中国ジャージ兄妹』だったことからも分かる通り、中国の学園生活にジャージは欠かせないのです。


 
 確かに中国の一部の学校も日本のような制服の着用を指定していますが、大半はジャージ(校服)です。本国でもダサいとか醜いと言われがちなジャージですが、それもまた中国文化の一つとして数えて、今後も漫画やアニメなどに積極的に取り入れられてほしいですね。

 

SCAVENGER 老馬/左手韓

 

中国ではどこでも見かけるゴミ拾い(SCAVENGER)を相手に、一般高校生が差別や偏見を取り払って一人の人間として対峙する社会派漫画。

 

  本作は第十回日本国際漫画賞銀賞および中日漫画「悟空杯」グランプリに輝いた大作であり、おそらく今後なんらかの形で日本語訳が出版されることになるでしょう。だからネタバレは避けます。

 

 


 

 

眼鏡をかけた男性(教師)に「この成績じゃ『老馬』みたいになっちまうぞ」と注意を受けたジャージ姿の少年が本作の主人公・韓巍。

 

老馬とは韓巍の学校を中心にした地域一帯のゴミ箱を漁り、ペットボトルの空き瓶や空き缶など回収し、それをお金に替えている女性で、学校の教師や生徒たちから「老馬(馬オバサン)」の名前で親しまれているが、決して年長者として敬われてはおらず、むしろ見下されている。

 

 

もう20年間ゴミ漁りをしている老馬には夢があった。それは北京の天安門広場に行って、そこで国歌を歌うことである。だがそれは学生たちにとって世迷い言にしか聞こえなかった。

 

 

ある日、韓巍は先生に注意されて机の中のゴミをまとめてゴミ箱に捨てたが、その中にあった祖母の薬の処方箋まで捨てたことに気が付いた。老馬より早くゴミ捨て場に行かなくては、彼女にゴミを荒らされて処方箋がますます見つけづらくなる。

 

だが、老馬は処方箋を見つけても無視せず、なくした人間がきっと困っているだろうと、学校の警備員や教師の制止を振り切り、生徒たちに気持ち悪がられるのを一向に気にせずに持ち主を探していた。

 

 

韓巍は老馬にお礼のお金(学生にとっては決して少なくないお金。おそらく財布にあった全財産)を上げようとするが断られる。

 

 

韓巍は「老馬」を呼び止め、「受け取ってよ」とお金を渡すも「私の仕事はもともと汚いけど、アンタからお金を受け取っちまったらもっと汚くなるよ」と言い、絶対にお礼を受け取ろうとはしない。

 

 

そこで韓巍は次に開けていないペットボトルを彼女に上げて、彼女に飲んでもらおうとする。しかし老馬が今度は校内までやってきて「ペットボトルはもらうが、水代は受け取れない」と言い、クシャクシャの1元札を韓巍に渡す。

 

 

決してブレない老馬の態度に教師や学生は彼女の見方を改めていくが、そんな中、彼女の地盤を狙う別の同業者によって彼女が怪我を負う。代わりにやってきたゴミ拾いによって学校のゴミ箱が汚く荒らされるようになり、韓巍たちは姿を見せなくなった老馬を心配する。

 


 

 

老馬はゴミ漁りという決して他人には自慢できない仕事をしていますが、自分の仕事にプライドを持っており、ゴミ以外はもらわないというポリシーがあります。漫画の中では韓巍に処方箋を渡していましたが、例えばゴミの中から大量のお金を見つけたとしても、彼女はそれを警察に届けるでしょうし、住所がわかれば持ち主まで自分で届けに行くでしょう。彼女は乞食でもホームレスでもなく、他の職業に就く人々と同様に「ゴミ拾い」という仕事を全うしているだけで、ゴミを漁り終えれば、ゴミをちゃんと分別して周囲を綺麗に片付けます。

 

実際、ゴミ拾いは老人がアルバイト感覚であまり抵抗なくできる仕事のようで、私は以前マンション付近にある果物屋のおじさんがペットボトル拾いをしていた姿を見たことがあります。

 

ですので、学校のように大きな収入を見込める地盤は争奪の対象になりますし、また彼らがいなければゴミが分別されることないまま捨てられてしまうことになり、ますますゴミが溢れることになります。

ゴミ拾いの話は北村豊さんの「キタムラレポート」に詳しく載っているのでそれを御覧ください。

 中国のくず拾い、600万人の夢と現実

 

 

本書は左手韓がサイン会を開いた時に余ったサイン本なのですが、120ページ程度の漫画に50元(800円ぐらい)という価格はサイン本ということを考慮してもまだ高いと思い、買うのをためらいました。しかし結局購入してしまったのは老馬らの迫力に押されたためです。

 

『ハッピーピープル』や『勇午』や『ろくでなしBLUES』のような写実的な画風は迫力ありすぎてちょっと不気味ですが、キャラクターのいろんな表情を描きたいという作者の気持ちが伝わってきます。

 

 

 

(チンピラの表情の三変化。3コマもいらんやろ)

 

 

おそらく作者はストーリーの中でキャラクターの顔をできるだけ多く変化させることに深くこだわっています。もちろんストーリーも面白いです。100ページ程度の作品で、敬遠されていた老馬が徐々に韓巍ら学校の仲間になるという少年漫画的な展開は、こうして書いてみると陳腐に見えるのですが、この絵柄がそれを言う隙を与えません。

 

 

 

私が留学していた大学の寮にはゴミ拾いのお爺さんがいました。毎日、大きな袋を持って寮の前に座り、留学生からペットボトルをもらうと必ず「謝謝」と返事する愛嬌のある老人でした。私も他の留学生と同様にこの老人に飲み終わったペットボトル(主にミネラルウォーター)を渡していたわけですが、毎日一本ずつ渡すのも億劫だし、また大量に上げたほうがお爺さんも喜ぶだろうと思い、ゴミ袋いっぱいにつめたものを渡していました。しかしある日、自分にとってゴミでしかないペットボトルをまるでエサを上げるかのようにお爺さんに渡すのは果たして良いことなのか、と考えてしまい、それからは気まずさを感じながら渡していました。

 

この本はそんな私に対して数年越しに一つの答えをくれましたね。賤業だがそのことをあまり気にしていない当人に対して一体どういう風に対応すべきか。結局のところ、相手が喜ぶことをすればいいんです。

  

CP2日間でだいたい600元(10,000円)ほど使った。以下に購入したものを載せていく

 

 

儞不知道的COMIKE』(あなたの知らないコミケ)(左)

『宮水酒誌01(右)

 

 

 

表紙はエロ同人だが、中身は全部文章。日本のコミケにも多数参加した作者が書いたコミケに関する評論文。日本のコミケを紹介し、CPなど中国のイベントを分析しようとしている。

わざと表紙をエロくして買いづらくしている点がポイント高い。

 

『地霊殿十周年合同誌 地底開放記念日』

 

 

 

日台作家合同の東方二次創作漫画。しかし作家一覧を見てもどれが台湾のサークルなのかわからない。

 

『東方水墨巻』 紅魔篇 妖々夢

 

 

 

個人的に一番のヒットの東方の水墨画風イラスト集。これに限らず、CPには二次元キャラを水墨画風に描いたグッズやイラスト集がいろいろ出ていた。

 

『ろけます!』

 

 

 

日本の同人誌で中身も日本語だが、本の中には中国語の内容説明書が挟まれていた。

ブースにはこの本の作者もおり、少しだけ会話ができた。その時、アイマスの新作ゲームか何かの発表動画がスマホから流れて、来場者がそれを見に集まって場が大いに盛り上がったのが印象的だった。

この他、東方関連のCD販売ブースにも日本から来た日本人作曲者がいて、購入者に時折サインをせがまれていた。

 

 

JAPARI RAINBOW(左)

『社保動物園』(右)

 

 

 

台湾のサークルのけものフレンズイラスト集。『JAPARI RAINBOW』はともかく、『社保動物園』は「これどうやって審査通ったんだ?」と驚くほど18禁の内容だった。本番行為を描いていなければ局部を出していても問題ないのだろうか?

 

『海色の襟』

 

 

 

日本兵の擬人化イラスト集かと思って購入したが、艦これのキャラクターが日本兵の服装を着ているという設定なんだろうか?

漢字が台湾繁体字表記だったので真っ白な制服(艦これの艦長のコスプレ?)を着ている売り子の男性に「台湾から来たの?」と聞いたが彼は大陸の人間であった。繁体字にしているのは台湾での販売を見込んでとのことだった。

 

『太華 妖怪誌』

 

 

 

妖怪関連のイラスト及び漫画。フルカラーだ。

 

 

『山海奇談 番外編』

 

 

 

妖怪関連漫画『山海奇談』をネットにアップしているサークルなのだが、ポストカードとかしか売っておらず漫画はなかった。私好みの絵なので今度は是非とも紙媒体になった漫画を読んでみたい。写真はこのサークルをSNSで宣伝することでもらえる無料の冊子。

 

異録』

 

 

 

これもまた妖怪関連のイラスト集。

この細長いサイズの紙ってなんていうんだろうか?

 

 

『魔都地下鉄少女』と交通カード

 

 

 

上海の地下鉄擬人化イラスト集

このブースでは他にも中国の高速鉄道の擬人化イラスト集も多数揃っていた。

中国で擬人化が流行ったのはいつからだろうか。CPにも未だに『ヘタリア』島があったし、今回は中華料理や中国の都市、更に二十四節気の擬人化イラスト集も見かけた。

 右はこのサークルが販売していた上海の交通機関で本当に使えるカード。これで次に上海に来たときも、駅でいちいち地下鉄切符を購入しなくて済む。ただし残金は0元なのでチャージが必要。

 


 

私が購入したのは漫画本ばかりだ。しかも東方とかけもフレとか日本のコンテンツの同人誌が多いので、せっかく中国の同人イベントに来たのに中国らしさが薄いような気がする。

 

そこで、私の日本人の友人が購入した同人誌のラインナップも紹介する。

 

『子夜鬼譚』(イラスト集)

『中華古都』(中国都市擬人化)

『驚春』(二十四節気擬人化)

『白露朝夕』(絵本)

CAT48(猫擬人化)

『若風之声』(漫画)

『茨の道』(漫画)

『鬼僧談』(漫画)

『飼魔』(漫画&小説、BL)

『雲華誌』(茶葉擬人化)

『等你仰望』(小説、BL)

『入妄』(小説、BL)

『男科悍医』(小説、BL)

『華夏』(イラスト集)

 

BL小説と擬人化イラスト集が多くて友人のもまた偏っている感じだが、CPは私のようないわば日本と地続きの趣味を持つ者も、友人のような中国色の強い趣味を持つ者も同様に楽しめる良いイベントだった。ただし、漫画本が少なかったことは友人と共通の不満点である。


 ちなみに友人は
2日間で1000元(16,000円)ほど散財したらしい。


 今回のCP20は私も友人も満足しており、すでに「今度はVIPチケットを購入して早く会場に行こう」とか喋っている。また、5月21日に北京で行われる同人イベントにも参加するつもりである。

 

 


COMICUPCP)はN1(同人誌)、N2(コスプレ)、N3(企業)の3エリアに分かれ、N3から各エリアを通過していく構造をしている。だから、N1に行くにはN3N2を通らなきゃいけない。各エリアはそれで完結しており、日本のコミケの西館東館のような区分けはされておらず、同人誌を買うために別のエリアや別の場所に行く必要はない。

 

私はN3の企業エリアなど目もくれずN1へ向かった。N3には中国で人気のあるアニメ・漫画・ゲームの企業ブースがあり、『戦艦少女』や『戦車少女』『陰陽師』などの販売ブースや、新作アニメ・ゲームの宣伝ブース、非売品のフィギュアの展示ブースなど多数の企業が出展していた。日本の角川も中国語版の漫画やライトノベルなどを売っていた。

 
(行列が並ぶ角川ブース)

 

(写真はCP2日目に企業ブースの『戦艦少女』グッズ購入のために屋外にまで並ぶ中国の若者たち)

 

 

N2はコスプレエリア兼ゴスロリエリアであり、中国のゴスロリショップが出店し服やら装飾品を売っており、やはりゴスロリを着た少女たちが列を作っていた。まさか中国でこんなにゴスロリ愛好者がいるとは思わなかった。

 

 (ゴスロリエリアの様子)

さて本命のN1である。

 

島が最も大きいはやはり『陰陽師』である。『東方Project』『ユーリ!!!』『FATE』も大きく、その他に『耽美原創』(オリジナル耽美系)という島もある。配置図を見るとわかるが、AからHまでほとんどが女の子向けのブースである。

 

各ブースはテーブル一つ椅子三つで一単位と言ったところだ。大きなサークルはブースもデカイ。人気のあるサークルや有名な作家(?)が来ているサークルには列ができており、行列の一番後ろには『隊尾』(最後尾の意味。何故か台湾繁体字)と書かれたプラカードを持つ人がいる。人だかりができるサークルは壁際が多いので、中国でも「壁サークル=人気」という認識で良いのだろうか。並んでいるのはやはり女の子が多い気がする。


(作者のサインを求める女性ら)

 

 (最後尾札を持つ女性)

 (人気サークルにできる女性の列)

各サークルを回っている子たちは手に購入リストを持っており、時々それにチェックを付けている。日本のコミケでも見た風景だ。また、人気サークルにはファンから差し入れが贈られる。


 

完売の札を出しているブースの子たちはスケブにイラストを描いていた。出展者同士の交流もあるんだろうか。

 

 

 

耽美系や一部男性向けサークルには肌色の多い出品物がたまに見られたのが気になった。

 

CP参加のサークルは事前に審査を受けるわけだが、中にはこんなもんがよく中国で審査通ったなと思える内容もちらほらあった。とは言え、日本のコミケで見かけるエロ同人漫画はほとんどなく、露出の多いイラスト集ばかりだったが、耽美系は絡みのシーンも描かれていた。男同士なら規制が緩いのだろうか。


 (小林さんちのメイドラゴンのエロポスターを貼るサークル。ヤバイ箇所にポスターを上貼りしている。出品物はエロイラスト集だった)


日本の同人誌の中国語版(台湾繁体字が多い。多分作者の許可を取ったものだろう)や日本語の同人誌を売っているブースも多かった。中国語版はともかく、日本語の同人誌は成人向けっぽいのもチラホラあったが大丈夫なんだろうかと思った。


(上が中国語版、下が日本語版の同人誌)



(同人ソフト『永遠消失の幻想郷』の中国語版を販売するブース。2日目には売り切れていた)

 

北京のコスプレイベントで見るようなおそらく海賊版のTシャツも少ないながら売られてはいた。また、明らかにアニメとか漫画とかに興味を持っていなさそうな中年男性・女性がいるブースもあったが、多分海賊版の業者なんだろう。

 

『原創』(オリジナル)島にあるのに『陰陽師』やその他の二次創作ものを置くブースが多くて戸惑った。オリジナルの作品を一つでも置いていれば『原創』ブースを設営することができ、あとは二次創作でも何でも置いてもいいんだろうか。

 

 

『無料』の札を貼った小物を並べるブースも多かった。写真を撮っていないのが本当に残念だ。

中国語で「タダ」「無料」を表す言葉は一般的に『免費』と書く。この『無料』は「ご自由にお取りください」ではなく、何かを購入した場合のプレゼント、またはマイクロブログなどのSNSでそのサークルを宣伝した場合のお礼などの意味合いが強いようだ。もちろん、勝手に持って行っても良いと言うサークルもある。

 

ちなみに、中国語では「つまらない」「退屈」を意味する言葉に『無聊』がある。この『無聊』も上記の『無料』もピン音表記が同じ「wuliao」であるので、上の写真に込められた意味合いとは、このグッズは『無聊』(つまらない)ものなので、『無料』(タダ)でお取りくださいではないかと私は思うのだが、いかがだろうか。

 

 

1日目は閉館時間16時までねばってその後はどこに遊びに行く元気もなくホテルに帰宅した。同人誌にいくら使ったかざっと計算したところ500元(約8000円)は使っていた。一緒に参加した友人は小説ばかり買い、700元以上使ったらしい。


 

(1日目の戦利品)

 

51日 CP2日目


この日はのんびりしようと9時半ごろ会場に着いた。1日目とは打って変わってチケット売り場の長蛇の列がなくなっており、会場入り口前の行列もなくなっていて全く並ぶことなくスムーズに、10時前にはN3(同人誌エリア)へ行けた。

 

会場の外では昨日の賑わいぶりを嗅ぎつけたのかダフ屋のオッサンが「チケットがあれば並ばなくていいよ!」と叫びながらチケットをさばこうとしていたが、実際はなくても並ぶ必要なんかないので赤字にになったに違いない。

 

(赤い矢印のついた、人の流れに逆らいずっと突っ立っているオッサンがダフ屋である)

CP公式サイトに書かれている開場時刻は10時だが、私は9時半には入場できたので、この日は9時には開いていたかもしれない。ということはVIPチケット購入者は何時から入ったんだろうか。というか、前日に運営から「明日は○時に会場に入れます」みたいなアナウンスをVIPチケット購入者はもらっているのだろうか。2日目のVIPチケットの存在に疑問を持った。


 (1日目は3列以上に分かれていたのに、この日は1列しかなかった)

公式サイトによると、2日目は1日目よりも若干参加サークルが減っている。だから空っぽになったブースも目立った。それは人気サークルも同様で、この日も列ができているブースは多かったが、一部のグッズはすでに売り切れだった。


(サークルが撤収し空になったブース)


(ポスターに『売り切れ』札を貼るサークル)

しかし、空になったブースに、昨日売り子たちが食べていたスイカの皮だけが残されている光景には笑った。何で写真を撮らなかったんだろうか。

 

この日は、昨日ホテルでカタログをチェックして気になった『月刊少女野崎くん』の同人誌と『魔神英雄伝ワタル』のポストカードを買いに行こうと思ったが、前者はすでに売り切れで、後者はけっこうな人気サークルで女の子がいっぱい並んでおり、恥ずかしくなってためらっているうちになくなってしまった(後者のブースはいくつかのサークルと合同だったようでワタル以外にいろいろな、おそらく中国オリジナルの漫画やゲームの同人グッズもあった)。

 

2日目だけ参加したサークルっていたのだろうか。全然代わり映えしないどころか、ブースの数が減っているし、売り切れも続出しているしで、個人的に1日目に同人誌エリアを十分楽しんだら2日目も同人誌エリアに行く必要はないと思った。1日目は同人誌エリアで、2日目は企業エリアみたいな回り方が正しいのかもしれない。N3には1日目とは全く異なる弛緩した空気がエリアには漂っていて、一瞬北京のコスプレイベントにいるみたいな気持ちになった。


 それで気分が覚めてしまったというのもあり、また16時の高鉄で北京に帰らなければいけなかったので、2日目はそんな金を使うことなく13時半に会場を出た。

次回、戦利品

 

 


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