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HN:
栖鄭 椎(すてい しい)
年齢:
37
性別:
非公開
誕生日:
1983/06/25
職業:
契約社員
趣味:
ビルバク
自己紹介:
 24歳、独身。人形のルリと二人暮し。契約社員で素人作家。どうしてもっと人の心を動かすものを俺は書けないんだろう。いつも悩んでいる……ただの筋少ファン。



副管理人 阿井幸作(あい こうさく)

 28歳、独身。北京に在住している、怪談とラヴクラフトが好きな元留学生・現社会人。中国で面白い小説(特に推理と怪奇)がないかと探しているが難航中。

 Mail: yominuku★gmail.com
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このブログは、友達なんかは作らずに変な本ばかり読んでいた二人による文芸的なブログです。      

 


 


 


晩点五十八小時(58時間遅れ)」というタイトルの本書は、実際の20081月末に中国の南部で発生した豪雪により立ち往生となった列車が、58時間遅れで次の駅に着く間に車内で発生した殺人事件の解決までが描かれている。列車という密室のさらに個室で発生した「二重密室」の謎に、機械工学出身の理系女子が挑む。


 


 




旧正月に広東の実家に列車で帰るはずだった葉青は、車内で偶然、山海大学の後輩の郭江南に再会する。聞けば、指導教官の文克己含む実験チーム一同、香港で開催されるフォーラムに参加するために列車に乗っているのだという。だがその夜、一人だけ個室を取っていた文克己が室内で死んでいるのが見つかる。死体には中毒死の症状が見られ、首には蛇に噛まれたらしい傷跡があったことから、毒蛇が死因だと疑われたが、飛行機と同様に手荷物検査が厳しい列車に毒蛇を持ち込むことは不可能だった。列車に乗り合わせていた葉青の叔父の鉄道公安官・李大鵬は、実験チームのメンバーを疑い一人ずつ話を聞くと、出発前、チームはとある「チップ」に関する取引を何者かに持ち掛けられていたことが分かった。そして大雪により停車してしまった列車のトイレで、今度は郭江南の死体が見つかる。首にはまたもや蛇が噛んだような傷跡があった。葉青は李大鵬らと共に車内を調べ、他の乗客に聞き込みをし、徐々に真相に近付いていくも、3人目の被害者が出てしまう……


 





 


実験チームに寄せられた、とあるチップの取引に関する手紙は冒頭で登場したので、てっきり事件の中核はこれを巡るものになるかと思いきや実はあまり関係ないので、殺害方法もそうだが動機すらも不明のまま物語の後半に突入するので、そう簡単に謎を明かさないぞという作者の自信が感じられた。


 


本書の最大のポイントは、20081月末に中国の南部で実際に発生した雪害を背景にしているところだろう。架空の土地や時間を創ったほうが楽だと思われるのに、敢えて10年以上前の現実を物語の舞台にしたことは、単にスマホ等のツールを出したかったわけではない。本作は(中で語られる設定が真実とするなら)、この時代のこの列車でなければ実現不可能なトリックを発表するために書かれたものであると言っていい。もう一つ、実現できるかどうかはさておき、強度のある釣り糸の使い方にも感心したし、その犯行を目撃したのが精神障害者で、証言の信憑性が低く、彼自身詳しく説明しようとしないという犯行の見せ方は上手いと思った。


  


そして最後に明かされる動機は現在でも十分殺人の動機足り得る内容であり、過去を舞台としていながらも、それに甘えることなく現代でも通じる問題を提起する余韻の残し方は見事だった。作者の歩錸にとって本書が初の長編ミステリーらしい。今まで新星出版社のミステリー畑以外の作家による作品は、どれも定石を外しすぎていて評価が低かったが、本書は次作も期待できる内容だった。


 


 

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「智商」とは中国語で知能指数という意味で、一般的には頭脳を駆使して警察を翻弄する知脳犯を「高智商犯罪」と言う。以前自分が翻訳した同作家のデビュー作『知能犯之罠』(原著タイトルは設局)は、防犯カメラのスキを突いて警察の捜査を出し抜く犯人が登場し、まさに高智商犯罪を描いた作品であり、本書は内容や登場人物がそれとは対になっている。


 


 





省公安庁副庁長の高棟は、同じく省公安庁副庁長で出世のライバルでもある周衛東とそのおいの周栄に関する密告を受ける。周衛東のために裏で散々悪事を働いてきた周栄を捕まえられれば、周衛東を出世レースから蹴落とせるばかりか、自分が次の庁長の座に就くことができる。そして高棟は腹心の部下である張一昴を、周栄が縄張りとしている三江口という土地の刑偵局副局長として派遣することを決める。だが高棟には一つ懸念があった。それは、張一昴がこれまで「直感」だけを頼りに捜査を乗り切っていたことだ。三江口に派遣された張一昴は早速難題にぶち当たる。刑事の葉剣が何者かに殺されており、しかも現場には張一昴の名前がダイイングメッセージとして残されていたのだ。張一昴が着任早々最初にしなければならないことは、自身の潔白の証明だった。一方その頃、2人組の強盗が三江口を次の狩場に選んで向かっている途中に偶然起こしてしまった殺人事件のせいで、三江口の警察や裏社会はさらなる混乱に巻き込まれる。張一昴たちはこの局面を乗り越え、犯罪者たちを一網打尽にすることはできるのだろうか。





 


 


『知能犯之罠』では市公安局の所長だった高棟が順調に出世を重ねて省公安庁の副庁長にまで上り詰めている。そしてその時は彼の忠実な部下だった張一昴が、それを買われて三江口という県級市の副局長に抜擢された。『知能犯之罠』同様に本書でも、事件の解決が出世レースに利用され、正義とか倫理とかいう作品の雰囲気を湿らせるものは排除されている。その代わり本書全体にあるのは自分の進退をかけた人間たちの必死さであり、周衛東派閥の警察官らが張一昴に三江口で手柄を立てさせまいと工作に出れば、上層部では高棟が現場の捜査に口出しする周衛東を論破したりと、現場以外での「場外乱闘」も見どころの一つだ。


 


 


本書のタイトルは『低智商犯罪』だが、もっと分かりやすく言えば、いきあたりばったりとか浅はかな犯罪と言っていいだろう。本書には『知能犯之罠』で警察を手玉に取った徐策のような知能犯もいなければ、理詰めで事件の真相に近付いて行く高棟のような警察もおらず、これまでの紫金陳の作品とは真逆の方向性だ。警察側も犯人側も目先のことしか考えず、目の前にある問題の解決を第一に考えるので、長期的なビジョンを持った人間が一人もいないため事件がどんどん複雑になっていく。もともと周栄の犯罪の証拠を探すだけだった任務が、各人の思惑が重なった結果、強盗、汚職官僚、密売人、殺し屋など三江口に裏社会の関係者が揃い、みんながみんな誰かが起こした事態に振り回されるという展開になる。ミステリーとして一級品であるのはもちろん、コメディ小説としても大変優れている作品だ。


 


登場人物もみな一癖も二癖もある造型で、一筋縄ではいかない人間ばかりだ。高棟に実力を心配されている張一昴も部下に指導できるぐらいの経験や知識は持っているのだが、「あの」高棟の部下ということでだいぶ買いかぶられており、彼が運に任せて事件を解決するほど部下がますます心酔するという構図になっている。また彼自身も苦労人で、部下に手を焼いているという人間味があるのも良い。


 


その困った部下の一人の李茜は、おじが公安部のお偉いさんという新人女性警官で、はれもの扱いされるのを嫌い、正義感を発揮した単独行動もしょっちゅうだ。恐ろしいのは彼女が自分の立場をきちんと分かっているところで、張一昴たちの捜査の邪魔をする上司がいれば、その目の前でおじに電話をかけて脅迫するというお嬢様ぶりを発揮。正義感があり、ワガママで狡猾という、敵にしても味方にしても厄介な存在だ。


 


他にも、清廉潔白で慎ましい生活をしているという役人がおり、彼の懐柔をすべく周栄が接触した所、実は今までずっと高価な骨董品や文化財を賄賂代わりに受け取っていた正真正銘の汚職官僚だったことが分かり、彼へのプレゼントを用意するために周栄は自ら問題を招くことになる。


 


周栄自身も悪人だがゲスというわけではない仲間思いな人間で、今回の結末は彼自身の弱さや甘さが引き起こしたものといえるかもしれない。このように登場人物の属性はありきたりかもしれないが、どのキャラも個性的で同ジャンルの他作品と比べても埋没しない魅力がある。


 


こういう喜劇系ミステリーは、とんでもない言動のバカや自分勝手な奴が散々場を引っ掻き回して最後には自分も予想していなかった漁夫の利を得るという結末になり、要所で読者を不快にさせる描写が目立つ。しかし本作は全員が必死に動き、欲を出して行動したために状況をますます悪くさせながら、勧善懲悪の結末に収束する。ドタバタ劇の結末後の「その後」の話でも放置していた謎をきちんと回収し、全力疾走後のクールダウンも見事に決めるベテランの筆さばきを見せてくれる。


笑えるミステリー小説とはこういうものだなということを教えてくれる作品だった。

 

 日本では時代遅れのものに対して「令和の時代に?!」ってツッコむことがあるが、それでは中国ではなんて言うのだろうかと考えた。「小康社会の全面的完成が実現する今年に?!」だろうか。そのぐらい新鮮味がない内容だった。



 嵐の夜、欣欣と羽羽の双子姉妹は観光バスに乗り遅れたという林芸を車に乗せ、少数民族の村に雨宿りする。村には他にも、民俗学者だという白澤、陳と葉の男女のカップルが避難しており、意図せず来客となってしまった6人は歓待を受ける。その夜、陳が行方不明になり、村で禁断の地扱いされている広場で男性のバラバラ死体が見つかる。だがそれは村の医者薩克のものだった。雨により外界と隔絶された村で、旧習を利用した事件が起きる。
 ありふれた設定にもかかわらず、別に何かの方面に関してこだわり抜いたわけでもなく、全然コテコテじゃないので肩透かしを食らう。少数民族の村には一応村人全員が守る禁忌があり、それを利用したトリックが登場するのだが、今の時代にタブーとか言われても人を殺すような人種はそんなの気にしないだろう。



 登場人物もその個性が物語を面白くする役割を果たしていない。一応主人公?の欣欣と羽羽が双子である意味がよく分からず、本作では探偵役の民俗学者の白澤が他人に不快感をもたらす女好きという、読者から好かれない設定にしたのかも理解できない。冒頭で唐突に登場する林芸が重要人物じゃなかったらどうしようかと心配していたので、きちんと事件に関与していて安堵したぐらいだ。

 さらに6人の客をもてなす村の長老は中国で一般的に話されている「普通語」が分からず、高齢のためいつも家にいるという設定なのだが、この人物が実は自由自在に動いて犯行を行っていたり、何らかの形で事件に関わっていたりするのかと思いきや、結局、閉鎖的な村と招かねざる客の対立関係を緩和させる装置に過ぎなかったのも拍子抜けだった。




 過去の名作から舞台や設定などをつまみ食いしたように見えるが、実際は一つ一つの掘り下げがとても浅く、どれもこれも受けるポイントを外しまくっている。だから、読んでいる途中までは、前近代的なミステリー小説の体裁を借りた、全く新しい実験的な展開になるのではとワクワクし、その期待は残りのページ数が決定的に薄くなる後半まで続いた。『匿身』というタイトルから、何かの秘密が事件の核心となっているのだろうという当たりはつけられ、それが少数民族の風習と結び付いていることが明らかになるが、過去の名作に備わっていた湿っぽさや陰惨さが全然感じられず、結末を読んでも驚きはない。



 本当になんで今さらこんな作品を書いたんだろうか。ページ数を2倍ぐらい増やして、各キャラや村の歴史の掘り下げを徹底的にやれば、昔の長編探偵小説のオマージュにはなっただろうか。

 

 2010年にネットで連載を開始し、2014年に出版された同名小説を、番外編を加えて2019年に再出版したのが本書。新装版は表紙で耽美色を強調している。




 桐花中路にある私立協済医院へ歯の治療に来た孫正(表紙右側)は、そこで大学時代の友人・路遐(表紙左側)と偶然再会する。この病院の院長が路遐の叔父だと聞き、世間話をしていたところ突然停電が起き、病院内にいた他の患者も看護師の姿も消えてしまう。路遐によれば、都市には拭い去ることのできない罪と呪いが渦巻いており、それらが集まる場所が「穴」となり、自分たちはその「穴」に落ちてしまったのだという。2人がいる場所は過去の病院で、各病室や部屋では以前起きた怪異が再現される。2人は無人の院内を探索しながら、過去に関係者が残したファイルなどを手掛かりに怪異の原因を解き明かし、行方不明になった路遐の兄たちの足跡を追い、病院から抜け出そうとする。




 物語が始まって4ページでいきなり事件に巻き込まれるというスピード感はもちろん、特殊な能力に頼らず、手掛かりを集めて怪異の正体やそれが起きる原因を調べ上げ、そしてまた新たな怪異に遭遇するという展開は、まるでフリーホラーゲームの小説を読んでいるかのように感じた。


 関係者が残した書類には、当時の状況が会話さえも詳細に記録されており、なんで書類が小説形式になってるんだよというツッコミもあるし、路遐の兄が残した数々のテープの会話内容もまたご都合主義的だなと思うが、それでも孫正と路遐のたった2人だけで全編が進むところは評価したい。


 中盤に以前病院にいた関係者によって「穴」から呼び出されたこの世のものではない存在「它(それ)」が出てきて、これが怪異の中心となって2人を脅かす。この「它(それ)」とはおそらく、あの有名ホラー映画『IT/イット』のオマージュだろう。


 表紙からも感じるが、本書は中国で腐向けホラーとして人気を集めたようだ。確かに孫正と路遐は久々に会ったにしては単なる友人とは思えない近い距離感で、スキンシップも多い。だが、特に直接的な描写はないので、そこまで耽美か?という印象を受ける。想像の余地が多いのかもしれないが、男同士なら腐向けとして扱われるのがちょっと悲しくもある。


  


最近は武侠小説『水滸人』書いている作者の久々のミステリー小説。今までの作品の総集編であるとともに新たなスタートを切る内容だったのだが、読み進めるほど最初に感じた面白さがなくなっていくという作品だった。出てくる「密室」に謎も魅力も全然感じないし、時晨どうした?と心配になった。


 




数年前に中国を震撼させた天才密室殺人犯「密室ピエロ」。警察に逮捕された彼は精神病院に入院させられるも、名前も正体も不明のままその病院からこつぜんと消えてしまい、今では伝説の存在になっていた。そして現代、密室ピエロの復活を思わせる密室殺人事件が発生。被害者は麻薬の売人で、密室となった部屋には赤い水が撒かれていた。事件を担当する唐薇はこの事件が模倣犯の仕業と主張し、長年密室ピエロを追ってきたベテラン刑事・潘成鋼の反感を招き、事件の謎を解かなければならなくなる。そこで知り合いの探偵(数学者)の陳爝と助手(小説家)の韓晋に相談すると、海外にいた陳爝は電話越しに事件を解決しただけではなく、犯人が赤い水を撒いたのは警察に対する挑戦であることも見抜く。ガムテープで閉じられた部屋、警察内部の留置所で発生する人体発火事件など密室にこだわる犯人の目的とは?




  


本作というかこのシリーズの今後の重要人物となる密室ピエロは作品ではっきりと、「『バットマン』のジョーカーと一緒」と書かれているので外見や言動が想像しやすい。実は過去作『鏡獄島事件』ですでに名前だけは出ていたので、構想自体は昔からあったのだろう。また、彼が入った孤島の精神病院は『バットマン』のアサイラムのような施設であることも、作者のアメコミ好きを感じさせる。冒頭にアメコミ要素を持ってきたのには興奮させられたが、面白かったのはそこまでで、密室の謎を含む肝心の内容は話が進むにつれてどんどん面白くなくなった。


 


唐薇の指摘通り、今回の「密室ピエロ」は実際に模倣犯であり、麻薬で親友を亡くした余命幾ばくもない男が「密室ピエロ」と思われる人物の自宅から様々な密室殺人方法が書かれたノートを拾い、それを参考にして麻薬密売組織の関係者を次々に殺していくという内容だ。しかしメインである密室の謎にはどれも魅力を感じなかった。おそらくそれは、自分が考える密室殺人とは、「捜査の手が及ばないようにするために犯人が頭を絞って作る」ものであるのに対し、本書に登場する密室にはいずれも教科書があり、「密室ピエロが殺人を行った証明」としか使われていないからだ。要するに、模倣犯が犯行を「密室ピエロ」に押し付ける以外でわざわざ密室をつくって被害者を殺す必要がなく、「どんな形であっても密室になっていれば良い」と読めてしまった。


 


本書の密室のテーマは「温度差」なのだろうし、作中で述べられる科学的な手法が現実での再現性があるものなのかは興味がない。だが、科学的知識が必要となる犯行であればあるほど理解を放棄してしまう。また、糸を使った密室も登場するのだが、日本のミステリー読者の悪い癖で「今どき糸か」としょげてしまった。「密室ピエロ」という存在を読者に印象付けようとする余り密室にこだわりすぎ、どの密室にも迫力を感じなかったのが残念だ。


 


本作にはシリーズの主人公陳爝と韓晋コンビがほとんど登場しない代わり、これまで本シリーズに出てきた数々のキャラが再登場し、一見すると最終作のような印象を受けるが実はセカンドシーズンの始まりであることが分かる。だから本作が詰め込み過ぎに感じるのも当然かもしれない。正直期待はずれだったので、次作があるなら早く出してこの評価を覆してほしい。


 


 


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