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プロフィール
HN:
栖鄭 椎(すてい しい)
年齢:
35
性別:
非公開
誕生日:
1983/06/25
職業:
契約社員
趣味:
ビルバク
自己紹介:
 24歳、独身。人形のルリと二人暮し。契約社員で素人作家。どうしてもっと人の心を動かすものを俺は書けないんだろう。いつも悩んでいる……ただの筋少ファン。



副管理人 阿井幸作(あい こうさく)

 28歳、独身。北京に在住している、怪談とラヴクラフトが好きな元留学生・現社会人。中国で面白い小説(特に推理と怪奇)がないかと探しているが難航中。

 Mail: yominuku★gmail.com
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このブログは、友達なんかは作らずに変な本ばかり読んでいた二人による文芸的なブログです。      

 


中国北宋末期を舞台にしたミステリー小説。池上遼一風の表紙が目印だ。


 




政治が腐敗し、犯罪が多発した北宋末期に「青衣奇盗」と呼ばれる盗賊が暗躍していた。名前の通り、青い服を着た盗賊で、3年間で14回も犯行を行い、かつては400人の兵士が捜査に充られたことがあったが、捕まったことは一度もなかった。そして、どのような警備も掻い潜って盗みを働くわりに、盗む代物が指ぬきとか鼎とかそれほど高価な骨董品ではないということが不思議がられていた。そして、青衣奇盗の次なる犯行予告が届き、揚州の庸城に保管されているサイの角製のお箸が狙われていることが分かる。事件解決の命を受けた易者の易厢泉(表紙で白い服の男)と、事件に興味を持った豪農夏家の放蕩息子の夏乾(表紙で青い服の男)は青衣奇盗の対策を練る。





 


表紙には3ページ読んだらハマる!」と書いてあるが、中盤までかなり冗長な展開で読んでいて飽きた。何しろ、ターゲットとされているお箸は作中でも言われている通り大した価値がないのだ。一応、サイの角製で、細工が施されていて、長年砂糖水に漬け込んでいたため舐めると甘い味がするという伝説があるが、それでも秘宝珍宝の類とは程遠いそうだ。だから、盗まれるかどうかというのは実際はメンツの問題に過ぎないので、読者にはその危機感がいまいち伝わらない。


更に、易厢泉が立てた対策というのが、そのお箸とそっくりのお箸を何百膳も用意するっていうまさかの物量作戦。それに対する青衣奇盗の行動も、大量のアリを使って甘いお箸を探させるとかだから、まるで児童向けのミステリー小説のようだ。このアリを使ったお箸の判別はすぐにフェイクということが明らかにされ、混乱に乗じるのが真の目的だったことが分かるが、一連の流れは単なる子供だましにしか見えない。


 


終盤、青衣奇盗が価値のない骨董品ばかり盗む理由が明かされるが、結局お箸は盗まれていないので青衣奇盗の真の目的は達成されない。犯人側に驚くべき狙いがあるのなら、その狙いを途中で主人公らに知らせることで、読者も彼らの奮闘ぶりを楽しみ、いくらかの満足感を得られるだろう。終盤で「犯人には実はこんな目的があったんだけど、未然に防いでいたぜ」と言われたところで、読者は肩透かしを食らうだけだ。


 


本作はネット小説で、すでに2巻が刊行されている。2巻は童謡の内容に見立てて殺人事件が起きるらしい。出版社から送ってもらったんでとりあえず読もうか。


 

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中国唐代に実在した政治家の狄仁傑(ディー判事)を主人公にした歴史ミステリー小説。


 





朝廷から使者として甘州(現在の甘粛省)の張掖に派遣された狄仁傑とその部下たちは手厚い歓迎を受けるが数々の殺人事件とも遭遇する。毒殺された豪商の李天峰、宝相寺で焼死体となって発見された15人の楽団員、首を締められ刺し殺された楽団長の羅什などなど。事件の背後には木巫女という謎の女性の影が見え隠れする。事件の捜査を進める狄仁傑は、数々の事件の背後に、甘州と朝廷を揺るがす陰謀が隠されていることを知る。





 


狄仁傑は実際の権力を持つ探偵であり、彼の捜査には障害というものがほとんどない。会おうと思えばどんな有力者にも会えるし、彼らを容疑者として扱うことも可能だし、尋問された相手は狄仁傑の威光にビビってしまって口を閉じ続けることが不可能になる。常に水戸黄門の印籠をかざしているような捜査は本当にお手軽で、煩雑な手続きを省いて一種のスピード感が出ているおかげで、殺人事件や集団失踪事件があっという間に国家の存亡がかかった事件にまで進展することができる。そして、舞台は古代とは言え、書き手は現代の人間だから、狄仁傑らが科学的捜査を軽んじることはないし、迷信の類を証拠として採用することもない。木巫女という神秘的な女性も、薬物毒物の知識を持ち、占いを行って商売をする人間ではあるが、本作では狄仁傑と同等の知識や理性を持つ人間として物語の裏で活躍する。


 


しかし、唐とか宋とか古代王朝を舞台にしたミステリー小説には国家転覆や朝廷滅亡の危機がよく描かれるのはなぜだろう。異民族の驚異があった時代を舞台にし、朝廷の中枢近くで生きていた人間を主役に据える以上、侵略の心配を描かなければ逆に不自然ということだろうか。例えば、「清明上河図」という絵巻に描かれている800人以上の人物全てに名前とストーリーを与えて、大河ミステリー小説として完成されようとしている『清明上河図密碼(コード)なんかは、舞台が北宋末期だから物語の端々から不穏な空気がにじみ出ている。ここに登場する大勢の人間が皆一様に「滅亡」の道を歩いているのだと理解できるのは、後世に生きる人間の特権的贅沢なんだろうか。


 


宋代を舞台にした『清明上河図密や、唐代を舞台にした『大唐懸疑録』など、古代王朝を舞台にしたミステリー作品はだいたいシリーズ物で1冊が分厚くて読むのに根気を要する。それらに比べると本作はだいぶ気楽に読めるので、中国の歴史ミステリーの入門書に良いかもしれない。

 


 


中国のネット小説サイト「火星小説」に連載されている、中華民国時代の江寧(南京)を舞台にした探偵小説。ちなみに著者の江寧婆婆は、「婆婆(お婆さん)」という名前を付けているが男性で、実は江蘇省南京市公安局江寧分局のインターネットセキュリティ大隊の副大隊長というれっきとした警察官だ。中国のSNS「微博」では「江寧公安オンライン」というアカウントを運営しており、彼自身の「百度百科」(ウィキペディアみたいなもの)もあり、「史上最愛売萌的警察叔叔(史上最も可愛い警察のオジサン)」として有名人らしい。


中国では、サスペンス小説家が公安関係者ということは珍しくなく、例えば「法医(監察医)秦明」シリーズで有名な作家の秦明は自身が監察医である。だが、インターネットが専門であるはずの江寧婆婆は、作品の舞台を現代ではなく民国時代にし、懐古風の探偵冒険小説を書いた。専門より趣味に走って作品を書く公安関係者は珍しいのではないだろうか。


 


 




民国17年、江寧の「李英雄探偵事務所」で働く探偵の王江寧は、ある事件の捜査で大量のアヘンを発見したことで、「鴟吻」(しふん。シャチホコのような姿をした空想上の動物)の入れ墨を持つメンバーが所属する「保皇党」という謎の組織の存在を知る。警察の捜査に協力する金陵大学教授の梅檀、王江寧の行く先々で出会う道士の呂冲元らとともに、清朝再興をもくろむ「保皇党」の陰謀を阻止するため、彼らは時には山賊の住処へ、時には数百年間外界と隔絶された隠れ里へ行き、数々の事件を解決する。





 


 


 


本書の特徴は各キャラクターのイラストがついている他、ページの要所要所に挿絵がある点だろう。本自体は一般の単行本サイズだが、形態としてはライトノベルだ。イラストがあるのでキャラクターの性格を掴みやすい。


 


 


 


王江寧


TIGER & BUNNY』の虎徹みたいな外見。性格も虎徹っぽく、正義感にあふれ、喧嘩っ早い性格だが、優れた洞察力を持つ優秀な探偵で、作中のほとんどの事件を解決している。


 


 


梅檀


本に毒舌教授と書かれており、王江寧にのみちょっと辛辣なことを言う。知的メガネ、クール系、毒舌、スーツという「要素」を詰め込んだキャラ。


 


 


呂冲元


本には「正太(ショタ)道士」として書かれているが、せいぜい178歳ぐらいにしか見えない。日本から中国に渡ったオタク用語が中国で独自発展を遂げるケースは多く、この「正太」もそれに当てはまるだろう。


 


 


本書の構成は、お店の小籠包の調味料として使用する漢方薬の中に毒薬が仕込まれる事件から始まり、明代の鄭和の子孫を称する人々が住む閉鎖された村で人間を生贄とする儀式を防ぐまでになり、事件がどんどんスケールアップする。徐々に冒険活劇の様相を呈しながらも、作品世界には清代から民国時代という現実の歴史の流れが根底にあり、アヘンや清朝復興を目論む謎の組織、時々登場する日本の存在などが作品に緊張感を与えている。


 


中華民国時代を背景にしているとは言え、文章は現代的でとても読みやすい。しかし、1400ページ以上と長く、また本書は第1部に過ぎず、今後いったいどれほど続くのか不明だ。日本人キャラが登場するのなら続刊も買おうかなぁと思う。


 

暗恋者的救贖 著:何超傑


 


 


 


著者何超傑氏からのいただきもの。タイトル『暗恋者的救贖』の仮訳は『片思いの救済』であり、タイトルから分かる通り東野圭吾のフォロワーであるわけだが、本作では他人のために自らを犠牲にする献身者が、自身の想い人を守ったことを当人に気付かれないまま本当に命を失っており、その悲惨さはオリジナルよりも強い。


 


 





兪笑は永盛グループ幹部の朱鶴に自社のプランを売り込むため、朱鶴のことを理解しようと彼のSNSなども読み込み、徐々に彼自身に惹かれていく。ある日、彼がSNSに一瞬投稿してすぐに削除したコメントを見た彼女は、偶然を装いその住所に行ってみると殺人事件を目撃してしまう。容疑者は兪笑のかつての同級生で前科者の王大宇。しかし王大宇は、事件現場から立ち去った白衣の人間を目撃しており、そいつが犯人だと証言する。警察官の宋誠は、同じく目撃者である兪笑に詳細を聞くが、兪笑はきっと王大宇が犯人だろうと考え、その白衣の人間について触れず、結局王大宇は自分の罪を認め、死刑になる。


事件以降、兪笑の人生は一変し、朱鶴から大型プロジェクトの注文を受けたばかりか、彼と結婚し、社長夫人という地位まで手に入れる。しかしあの事件から4年後、偶然王大宇の過去を聞いた兪笑は、事件の犯人は王大宇ではないという思いを強め、独自に調査を進める。





 


本書は主に兪笑を巡る恋愛譚であり、彼女のことを思う男たちがたくさん出てくる。その中で彼女の心を射止めたのが、会社社長の朱鶴だ。会社員としても人間としても非の打ち所がない人物だが、ミステリアスな部分を持ち、本来兪笑のことを全然重要視していなかった彼は、王大宇の事件以降途端に彼女に接近する。一体それはなぜか。過去に人助けを行ったという善行の過去を隠す理由はなにか。


 


対する王大宇は死後にどんどん株を上げていき、彼が過去に犯した罪が実は兪笑のためであることが分かり、殺人事件で自白したのも兪笑のためだったという、片思いの相手に命懸けの献身を行っていたことが分かる。


 


真実が明らかになるにつれ、朱鶴と王大宇、会社社長と死刑囚の二人の立場が逆転する。本当に兪笑を愛していたのはどちらなのかというのも本書のテーマの訳だが、仮に兪笑が生前の王大宇の行為を知っていたとしても、彼を結婚相手に選ばなかったであろうということが片思いの悲しい点だ。


 


実際、本書の犯人は読んでいてすぐに分かるようになっているが、犯人の過去や行為がおかしいにもかかわらずなかなか尻尾を掴ませない知能犯ぶりや、周囲の人間には全く正常に見える点など、犯人は犯罪者というよりも人間の形をした化物に思える。本書はサスペンスと言うよりサイコスリラーに近く、犯人はとっくに目星がついているというのに、犯人の内面描写を全くしないことで不気味さを出している。


 

 


「中国ユーモアミステリの王」として知られる?陸燁華の新作。今作でも、突拍子もない推理の連続で、ミステリーにはノリと勢いが重要だということを伝えている。


 





文化工作室(版権を取り扱い、出版社と協力して本を発行する会社)社長の梅寄塵は浪費家の妻李逐星と離婚し、部屋を売り払って毎月の慰謝料に追われる日々を過ごしていた。ある日の朝、道端で周天明という男が部屋で殺されたという噂を聞く。梅寄塵と周天明は、2年前にある事件で行動を共にしていた「旧友」だった。推理小説好きの梅寄塵は現場を捜査していた警察官に、周天明の「友達」という体裁で捜査情報を見せてもらう。奇怪なことに周天明は室内で、3階以上の場所から「墜落」したとしか思えない死に方をしていた。そして死体の写真を見せてもらった梅寄塵は、その死体が周天明ではなく、2年前に周天明と一緒に「強盗」した喫茶店で居合わせた、客の小李であることに気付く。本当の周天明はどこにいるのか。彼は、同じく2年前の現場に居合わせた元恋人の顧思義と共に周天明の行方を探すが、彼女と別れた後、顧思義が何者かに殺されたという知らせを受ける。





 


室内で墜落死という大変魅力的な謎はひとまず置いといて、作者の陸燁華は2年前のコントチックな喫茶店強盗事件の顛末に筆を割く。


初対面の周天明から詳しいことを聞かないまま喫茶店で強盗することになった梅寄塵。主犯の周天明の目的が、金品でも食事でもなく、店内の人間の「時間」を強盗することなのも現実離れしているが、周天明の世間とのズレはこれに留まらない。彼は喫茶店の店長や客の反応から異常を察し、この場所で殺人が行われ、トイレに死体が隠されていると推理する。唖然とする一同のところに、今度は包帯で顔をグルグル巻きにした、文字通りの「覆面作家」が入店し、この喫茶店で乱交パーティが行われていたと断言する。


一応推理の体裁を取ったトンデモ推理を探偵に次々と披露させるのは陸燁華の得意技だ。常識外れの推理を先に見せることで、真相がどれほどおかしくても、さっきのよりはマシというクッション的作用を発揮する。この話でも、実はトイレの中には本当に人がおり、中に入っていた理由にも推理小説的な殺意が込められている。それが本書の最大の謎である室内での「墜落死」にまで結びつくのであり、バカミス要素をいくつも重ね合わせて長編小説を書けるのは、さすが「中国ユーモアミステリの王」(いつ誰が言ったのか)だ。


 


梅寄塵が泥沼にハマっていくのも見どころの一つだ。李逐星に払う慰謝料のために部屋を売って自分は会社に寝泊まりし、それでもとうとう立ち行かなくなって社員から金を徴収するまで追い詰められる。それにもかかわらず李逐星は慰謝料の増額を要求するのだが、彼女のことを心から愛している梅寄塵の気持ちが伝わってくるし、自分の欲望に忠実な彼女を嫌いになれないのだ。とんでもない女性の虜になってしまったという梅寄塵の心中の泣き顔が見えるようだった。


ところで、彼は毎月妻に8000元(約13万円)の慰謝料を妻に払っているが、これは一般的な中国人の給料よりちょっと低いぐらいで、普通の社会人ではかなり苦しいと思われる。と言いたいところだが、中国の「普通」とか「一般人」とは一体なんなのか。しかし、離婚しているのに、彼女に嫌われたくなく、このぐらいの慰謝料を払えなければ男として評価されないと考え込んでいる梅寄塵が哀れでならなかった。


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