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栖鄭 椎(すてい しい)
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34
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非公開
誕生日:
1983/06/25
職業:
契約社員
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ビルバク
自己紹介:
 24歳、独身。人形のルリと二人暮し。契約社員で素人作家。どうしてもっと人の心を動かすものを俺は書けないんだろう。いつも悩んでいる……ただの筋少ファン。



副管理人 阿井幸作(あい こうさく)

 28歳、独身。北京に在住している、怪談とラヴクラフトが好きな元留学生・現社会人。中国で面白い小説(特に推理と怪奇)がないかと探しているが難航中。

 Mail: yominuku★gmail.com
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このブログは、友達なんかは作らずに変な本ばかり読んでいた二人による文芸的なブログです。      

『氷血:零下30℃的刑偵現場』著:薩蘇

 

 

 

著者の薩蘇は日本在住の軍事史学者で専門は当然日中戦争(抗日戦争)時代。中国では小説家としてより歴史家として有名だそうで、知人の中国人も小説は初めて読むが専門書は大学で読んだと言っていた。

 

8月某日の新刊トークショーで薩蘇「私にとって歴史を書くのも推理を書くのも一緒」と言っていたが、本書を読むと果たしてこれも「推理小説」のジャンルに入れて良いのか疑問が湧いた。

 

本書は短編集だがここに掲載されている事件すべて中国で実際に起こった事件であり、実際の事件をモデルにした創作でもない。著者は、日中戦争従軍者で戦後は公安として主に中国東北部で起きた数多くの事件を担当した老丁という老人から聞いた話を小説仕立てで書いている。

表題作「氷血:零下30℃的刑偵現場(凍れる血:マイナス30℃の捜査現場)」19862月に吉林省で起きた実際の列車爆破事件を扱っており、老丁らをはじめとする捜査関係者の活躍や当時の捜査方法や事件背景などをつぶさに描写している。おそらくそこには多少の誇張はあれども虚偽はないだろう。

 

老丁が語る近代の事件簿は非常に面白い。「西辛荘的『邪門』殺人案(西辛荘の『異常な』殺人事件)」は検視の結果明らかに他殺であるにも関わらず被害者の父親が「事故だ」と主張し、そればかりか他の住民まで「事故だ」と言い張り、ついには被害者の父親が出頭するという有様で、村単位で何かを隠している様子に薄気味悪さを感じさせる。

また「吊死鬼島血案(首吊り島殺人事件)」では冒頭で作者と老丁がテレビを見ていると、日本兵役を演じる日本人俳優が「監督から雪原の中で強姦シーンを演じろと言われたが、あんな寒いところでケツを出してそんなことするヤツいないだろう」という愚痴から物語が始まる。この日本人俳優とはおそらく渋谷天馬のことを言っているだろう。

 抗日ドラマで悪辣な日本兵演じた日本人俳優

ちなみにこの「吊死鬼島」とは敗戦時に日本兵が集団自決した場所らしい。

このように舞台が中国東北部であることから、老丁の語る話には日本軍そのものこそ出てこないが、あちこちに戦争の残滓を感じさせる。

 

 

ただ本書後半部分に掲載されている194050年代の国共内戦による国民党の匪賊との戦いは冗長で読むのに疲れた。これを後半に置いているから恐らく作者が本当に書きたいドキュメントはこっちなのだと思うが、パターンとしては「悪しき国民党の暴徒が勇猛果敢で正義感溢れる共産党に敗れる」しかないのだから、私のような非共産党員にとっては本の中で如何に銃撃戦や知略戦を繰り広げようとも退屈でしかない。

 

中国では195060年代ぐらいに国共内戦を題材にしたミステリ小説ばかり生まれたが、その大半がミステリ小説とは名ばかりの「反特務(反スパイ)小説」ばかりだった。

本当にあった事件を小説化したドキュメンタリーが果たしてミステリ小説なのか。それはただのドキュメンタリーなんじゃないのかと思うが、中国のミステリ小説史を見ると公安や警察や共産党の活躍を描く作品もミステリ小説としてカウントしても良いのかもしれない。

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『鴉雀無声:双生鎮殺人事件』 著:段一

 

 

双子ばかりが生まれる資産家一族の住む鎮(村みたいなもの)で連続殺人事件が発生し、外からやって来た探偵が事件を解決するという、横溝正史的な因習や血縁の深いドロドロとした狭い世界を見せてくれるのかと思いきや、非常にライトな新本格へ着陸している。

 


周家の当主・周岳生の義理の弟・葉国立がパーティの最中何者かに殺された。事件当時、周家の家族は全員揃っていたことから外部の人間の犯行が疑われ、またグチャグチャに潰された死体の顔に怨恨の可能性を見る。一向に進展を見せない警察の捜査に業を煮やした周岳生に呼ばれた探偵の段一は周家の双子にまつわる奇怪な伝説を見聞きする。周家では百年以上前から双子ばかり生まれ、双子以外が生まれたら必ず災いが起きるという言い伝えがあったのだ。では今回の事件もその言い伝えと関係があると言うのか。


 

 

言い伝えの他に、敷地内の塔に住んで俗世と隔てた生活をする美少年の周宝文と周宝武や、周岳生の娘・周隽麗の双子の姉で1年前に自殺し存在がタブー視されている周紫英、当主のイトコで不可思議な言動を繰り返す中年双子など明らかに怪しい要素がてんこ盛りで、これからどんな血塗られた過去が明かされるのかとワクワクする。更に「私」というホームレスが登場し、「私」視点で殺人現場を目撃するという展開も待っており、犯人の正体と同じぐらい「私」の正体にも注目が集まる。

 

 

しかし本作には横溝正史や江戸川乱歩的なオカルト要素はなく、古くから続く因習が醸し出す不気味さも全くない。美少年の周宝文と周宝武兄弟は単なる良い子だし、周紫英の自殺はその原因こそ悲惨だが下劣な犯罪に遭った彼女の存在が本作をますます古臭い伝説から遠ざけている。

 

タイトルにまで「双生鎮(双子村)」にしているのだから、ここまで双子三昧にして双子を利用したトリックを書かないのはウソである。その期待に応えて作者はきちんと「双子」を使った入れ替わりトリックを披露している。これは一般的な双子トリックの進化とも派生とも言えるもので、このトリックのために舞台装置が存在している。

 

 

 

ところで中国では小説に「殺人事件」というタイトルを使ってはいけないという不文律があったようだが、この本ではバッチリ使っている。規制が緩くなったのか、それともみんな「不文律」という言葉に怯えていただけでもともと存在しなかったのか。

私の予想では、この本を出版した百花洲文出版社内部のチェックが甘く、また上の検閲も厳しくなかったため「殺人事件」というタイトルが通ったのだと推測する。

 

826日(土曜日)、今年も北京国際図書博覧会(北京ブックフェア)に一般参加してきました。

 

2016年:2016年 第23回北京ブックフェア

2015年:2015年の北京ブックフェア.

2014年:3年ぶりに北京ブックフェアに行った話

2011年:北京ブックフェアに行って参りまして

 

今回は、ブースを出展している中国の出版社に勤める友人のガイドがありました。もう何年間も来ているので今更案内など必要ないのですが、出展側の話が聞けて楽しかったです。

 

 

日本ブース

 

去年の安野モヨコ展に続き、今回は手塚治虫展が目玉になっていて多くの参加者が写真を撮っていました。

 

 

講談社ブースはいつも通り日本ブースで一番大きな規模でした。

 

 

 

 

 

そしてその他の出版社ブース及び展示されている本の数々。これらは展示しているだけで読むことしかできません。平日の企業商談日は世界各国の出版社がこれらの版権を売買します。友人の話では展示している本全てに「版権売却済み」シールを貼っていた日本企業もあったみたいで、日本書籍の人気ぶりが伺えました。

 

 

師走の翁の『JKプロレスイラストレーションズ技画』。

 

日本ブースでは毎年必ず中国大陸では到底出版できなさそうな本が展示されている。てっきり日本の出版社の悪ふざけかと思っていたのですが、おそらく台湾や香港などの出版社へ向けた展示なのでしょうね。

 

 

 

 

 

ドイツブース

 

マレーシアブース

 

 

 

韓国ブース

韓国ブースはいつもより小さかったかなという印象を受けました。一般参加日になると撤収するのは相変わらずでほとんどの出版社はいなくなっていました。

 

 

例年通り漫画を推す韓国の出版社。

 

 

北朝鮮ブース

エラい隅っこに出展していた。

 

英語版及び中国語版の対外宣伝雑誌や金一族の偉業を伝える書籍などが置かれていた。

 

毎年出展しているが本を買えることに気付き、せっかくなので雑誌2冊と、動物園に関する本、そして金正恩と子どもたちのエピソードが書かれた本を購入。全部で50元(800円ぐらい)だった。

 

台湾ブース

去年より小さかったような印象を受けた。写真撮ったと思ったがなかった。

 

香港ブース

 

 

この東方の本、今年の上海の同人誌即売会『COMICUP』でも売られていた気がするが、同人誌まで売っているのか

 

 

 

香港の推理小説家・林斯の小説。

 

大陸の推理小説家・王稼駿の小説の繁体字版。

 

今回のブックフェアの一番の収穫品は『神探福邇,字摩斯』(名探偵ホーム、あざ名はモス)[要するにシャーロック・ホームズのパロディ]だった。清朝末期に活躍したという辮髪の探偵「福邇」が遭遇した様々な事件を、その助手の「華笙」(中国語でワトソンは華生という)が記録したという体裁の推理小説。ミステリや武侠小説要素も含まれているという。作者の莫理斯は女優・莫文(カレン・モク)の兄らしい。

 

中国大陸出版社館

 

北京ブックフェアはおそらく東館と西館で分かれていて、それぞれ海外館と大陸館となっている。

 

中国大陸側の出版社ブースでは参観者が購入できる本も売っているので来る側としては楽しい。

 

 

 

 

今年は子供向けのイベントが用意されており、児童書の販売や子供たちができる体験コーナー、そしてプロ?が描いたと思われるイラストが展示されていた。

 

 

中国の地域ごとに集められた出版社。

 

 

 

 

安徽省ブースでは12000元(約20万円)もする超大型サイズの各種「紙」を収めた本が展示されていた。

 

 

会場では連日トークショーなども催されていて、中国外文局が丁丁という絵本作家のトークショーを開いていた。

 

 

この後用事があったので満足に見て回れなかったですが、中国の出版事業はまだまだ元気があるみたいでした。今後はますます中国国外へ向けた事業を展開するでしょう。

 

 

 

 



 中国歴が長い人間はジャージ(校服)にこそ萌える。

 

本書『昨日青空』(2015年)は2012年に出版された同名タイトルの新装版です。2018年にアニメ映画の上映が決定していて、中国のとあるニュースサイトで「中国版『君の名は』」だと紹介されていました。とは言え、「中国の○○」とはどのジャンルにも見られる常套句で、私は今まで何度「中国の東野圭吾」作品を読んだかわかりません。

 

そして中身を読んでみると……

 

 

自分の好きな女の子が

 

 

クラスの不良に恋していて

 

 

……

 

 

おいコレ、同じ新海誠作品でも『秒速5センチメートル』寄りの作品じゃねぇか。


 おそらくアニメのこと全く知らない記者が中国でも流行った『君の名は』の名前を借りて記事を書いたんでしょうが、わかって書いていたとするならばだいぶ性格悪いですね。

 


1990年代末の中国南部の浙江省南汐(浙江省南渓がモデル)で高校3年生の屠小意はクラス全体が受験に向かっている中でも漫画家になりたいと言う夢を持ち、進学に興味を持っていなかった。教師から同じクラスの女子・姚哲恬と共に黒板係に任命された小意は漫画という共通の趣味の話に花を咲かせ、彼女に心惹かれていく。しかし哲恬は、教育局局長の父親を持つが問題児で1年留年している同じクラスの斎景軒のことが好きだった。ある日、景軒に告白して振られる恬を見た小意は世界から光が消えたようになり、将来の目標を失う。だが友達の花生とゲームセンターで不良に絡まれていたところを景軒に助けられ、3人で野宿をしたことで、小意は景軒の真意を知り、彼と親しくなる。


 

 

この漫画、あらすじを書きづらい内容で、一言で言えばよくある青春漫画なのですが、水彩画的なタッチで描き込まれた背景によってストーリーに丁寧さが増していて、更に作者の口袋巧克力が青春時代を過ごしたであろう90年代の中国の様子が見事に再現されていて、絵から伝わる情報量が豊富です。町並みや家屋の様子などが中国人の郷愁を引き起こすものであるばかりか、小意が読んでいる漫画が「ドラゴンボール」であったり、ゲーセンで不良相手に「キング・オブ・ファイターズ」で連勝したりしていて、1ページごとの情報量が多く、毎ページ隅々まで目を通す価値があります。

 

 

この漫画、上の画像のようにセリフよりも小意の独白が圧倒的に多いのが特徴で、自分の描いた絵にセリフの吹き出しで空白を作りたくないから文字だけを入力しているのかなとも思えます。そう考えてしまうぐらい絵が素晴らしいので、中国語がわからなくても漫画を読めと言いたいです。

 

ストーリーだけを見れば決して厚いとは言えないこの漫画がどう映画化されるのか気になるところです。絵は大変素晴らしかったので、アニメ化してそのクオリティが下がることはないようにしてもらいたいです。

 

 

・新装版だけの(?)特典

 

この本は上下巻と言いながらも下巻の半分は別の短編漫画が収録されています。



 『明月清風』は、スポーツの得意な少女・邱望舒と母親の拘束が厳しい夏軽風が高校の女子寮の同じ部屋に暮らし、互いの立場を理解しながら仲良くなっていくという、ジャンルとしては百合に入る漫画です。中国の学校の寮は1つの部屋を大抵4人以上で使うのが一般的で、この漫画も本来は2人の他にまだルームメイトがいたのですが事情によって一室をたった2人で共有することになります。

 

 

そして上巻には旧版出版時に読者から送られた、ジャージを着た学生たちの写真をイラスト化して収録しています。



 またフランス語版の出版を記念して行われたフランスでのサイン会の様子なども載っており、作者の国際的な活躍を読むことができます。

 

 

 

・ジャージ礼賛

 

作者の口袋巧克力は読者の「なぜキャラクターに日本の高校生のような制服を着させず敢えてダサいジャージにしたのか」という問いにこのように答えています。

 

この物語は1990年代の江南の小さな町を舞台にしているので、そこに日本風の制服を着た学生が登場したらギャグにしかなりません。でも中国の一般的なジャージ(校服)を着せたキャラクターをどう魅力的に描けばいいのかにだいぶ悩みました。

 

 

アニメ『快把我哥帯走(兄に付ける薬はない!)』の日本語版タイトルが企画段階では『中国ジャージ兄妹』だったことからも分かる通り、中国の学園生活にジャージは欠かせないのです。


 
 確かに中国の一部の学校も日本のような制服の着用を指定していますが、大半はジャージ(校服)です。本国でもダサいとか醜いと言われがちなジャージですが、それもまた中国文化の一つとして数えて、今後も漫画やアニメなどに積極的に取り入れられてほしいですね。

 

SCAVENGER 老馬/左手韓

 

中国ではどこでも見かけるゴミ拾い(SCAVENGER)を相手に、一般高校生が差別や偏見を取り払って一人の人間として対峙する社会派漫画。

 

  本作は第十回日本国際漫画賞銀賞および中日漫画「悟空杯」グランプリに輝いた大作であり、おそらく今後なんらかの形で日本語訳が出版されることになるでしょう。だからネタバレは避けます。

 

 


 

 

眼鏡をかけた男性(教師)に「この成績じゃ『老馬』みたいになっちまうぞ」と注意を受けたジャージ姿の少年が本作の主人公・韓巍。

 

老馬とは韓巍の学校を中心にした地域一帯のゴミ箱を漁り、ペットボトルの空き瓶や空き缶など回収し、それをお金に替えている女性で、学校の教師や生徒たちから「老馬(馬オバサン)」の名前で親しまれているが、決して年長者として敬われてはおらず、むしろ見下されている。

 

 

もう20年間ゴミ漁りをしている老馬には夢があった。それは北京の天安門広場に行って、そこで国歌を歌うことである。だがそれは学生たちにとって世迷い言にしか聞こえなかった。

 

 

ある日、韓巍は先生に注意されて机の中のゴミをまとめてゴミ箱に捨てたが、その中にあった祖母の薬の処方箋まで捨てたことに気が付いた。老馬より早くゴミ捨て場に行かなくては、彼女にゴミを荒らされて処方箋がますます見つけづらくなる。

 

だが、老馬は処方箋を見つけても無視せず、なくした人間がきっと困っているだろうと、学校の警備員や教師の制止を振り切り、生徒たちに気持ち悪がられるのを一向に気にせずに持ち主を探していた。

 

 

韓巍は老馬にお礼のお金(学生にとっては決して少なくないお金。おそらく財布にあった全財産)を上げようとするが断られる。

 

 

韓巍は「老馬」を呼び止め、「受け取ってよ」とお金を渡すも「私の仕事はもともと汚いけど、アンタからお金を受け取っちまったらもっと汚くなるよ」と言い、絶対にお礼を受け取ろうとはしない。

 

 

そこで韓巍は次に開けていないペットボトルを彼女に上げて、彼女に飲んでもらおうとする。しかし老馬が今度は校内までやってきて「ペットボトルはもらうが、水代は受け取れない」と言い、クシャクシャの1元札を韓巍に渡す。

 

 

決してブレない老馬の態度に教師や学生は彼女の見方を改めていくが、そんな中、彼女の地盤を狙う別の同業者によって彼女が怪我を負う。代わりにやってきたゴミ拾いによって学校のゴミ箱が汚く荒らされるようになり、韓巍たちは姿を見せなくなった老馬を心配する。

 


 

 

老馬はゴミ漁りという決して他人には自慢できない仕事をしていますが、自分の仕事にプライドを持っており、ゴミ以外はもらわないというポリシーがあります。漫画の中では韓巍に処方箋を渡していましたが、例えばゴミの中から大量のお金を見つけたとしても、彼女はそれを警察に届けるでしょうし、住所がわかれば持ち主まで自分で届けに行くでしょう。彼女は乞食でもホームレスでもなく、他の職業に就く人々と同様に「ゴミ拾い」という仕事を全うしているだけで、ゴミを漁り終えれば、ゴミをちゃんと分別して周囲を綺麗に片付けます。

 

実際、ゴミ拾いは老人がアルバイト感覚であまり抵抗なくできる仕事のようで、私は以前マンション付近にある果物屋のおじさんがペットボトル拾いをしていた姿を見たことがあります。

 

ですので、学校のように大きな収入を見込める地盤は争奪の対象になりますし、また彼らがいなければゴミが分別されることないまま捨てられてしまうことになり、ますますゴミが溢れることになります。

ゴミ拾いの話は北村豊さんの「キタムラレポート」に詳しく載っているのでそれを御覧ください。

 中国のくず拾い、600万人の夢と現実

 

 

本書は左手韓がサイン会を開いた時に余ったサイン本なのですが、120ページ程度の漫画に50元(800円ぐらい)という価格はサイン本ということを考慮してもまだ高いと思い、買うのをためらいました。しかし結局購入してしまったのは老馬らの迫力に押されたためです。

 

『ハッピーピープル』や『勇午』や『ろくでなしBLUES』のような写実的な画風は迫力ありすぎてちょっと不気味ですが、キャラクターのいろんな表情を描きたいという作者の気持ちが伝わってきます。

 

 

 

(チンピラの表情の三変化。3コマもいらんやろ)

 

 

おそらく作者はストーリーの中でキャラクターの顔をできるだけ多く変化させることに深くこだわっています。もちろんストーリーも面白いです。100ページ程度の作品で、敬遠されていた老馬が徐々に韓巍ら学校の仲間になるという少年漫画的な展開は、こうして書いてみると陳腐に見えるのですが、この絵柄がそれを言う隙を与えません。

 

 

 

私が留学していた大学の寮にはゴミ拾いのお爺さんがいました。毎日、大きな袋を持って寮の前に座り、留学生からペットボトルをもらうと必ず「謝謝」と返事する愛嬌のある老人でした。私も他の留学生と同様にこの老人に飲み終わったペットボトル(主にミネラルウォーター)を渡していたわけですが、毎日一本ずつ渡すのも億劫だし、また大量に上げたほうがお爺さんも喜ぶだろうと思い、ゴミ袋いっぱいにつめたものを渡していました。しかしある日、自分にとってゴミでしかないペットボトルをまるでエサを上げるかのようにお爺さんに渡すのは果たして良いことなのか、と考えてしまい、それからは気まずさを感じながら渡していました。

 

この本はそんな私に対して数年越しに一つの答えをくれましたね。賤業だがそのことをあまり気にしていない当人に対して一体どういう風に対応すべきか。結局のところ、相手が喜ぶことをすればいいんです。

  


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