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栖鄭 椎(すてい しい)
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34
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非公開
誕生日:
1983/06/25
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契約社員
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ビルバク
自己紹介:
 24歳、独身。人形のルリと二人暮し。契約社員で素人作家。どうしてもっと人の心を動かすものを俺は書けないんだろう。いつも悩んでいる……ただの筋少ファン。



副管理人 阿井幸作(あい こうさく)

 28歳、独身。北京に在住している、怪談とラヴクラフトが好きな元留学生・現社会人。中国で面白い小説(特に推理と怪奇)がないかと探しているが難航中。

 Mail: yominuku★gmail.com
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このブログは、友達なんかは作らずに変な本ばかり読んでいた二人による文芸的なブログです。      

CP2日間でだいたい600元(10,000円)ほど使った。以下に購入したものを載せていく

 

 

儞不知道的COMIKE』(あなたの知らないコミケ)(左)

『宮水酒誌01(右)

 

 

 

表紙はエロ同人だが、中身は全部文章。日本のコミケにも多数参加した作者が書いたコミケに関する評論文。日本のコミケを紹介し、CPなど中国のイベントを分析しようとしている。

わざと表紙をエロくして買いづらくしている点がポイント高い。

 

『地霊殿十周年合同誌 地底開放記念日』

 

 

 

日台作家合同の東方二次創作漫画。しかし作家一覧を見てもどれが台湾のサークルなのかわからない。

 

『東方水墨巻』 紅魔篇 妖々夢

 

 

 

個人的に一番のヒットの東方の水墨画風イラスト集。これに限らず、CPには二次元キャラを水墨画風に描いたグッズやイラスト集がいろいろ出ていた。

 

『ろけます!』

 

 

 

日本の同人誌で中身も日本語だが、本の中には中国語の内容説明書が挟まれていた。

ブースにはこの本の作者もおり、少しだけ会話ができた。その時、アイマスの新作ゲームか何かの発表動画がスマホから流れて、来場者がそれを見に集まって場が大いに盛り上がったのが印象的だった。

この他、東方関連のCD販売ブースにも日本から来た日本人作曲者がいて、購入者に時折サインをせがまれていた。

 

 

JAPARI RAINBOW(左)

『社保動物園』(右)

 

 

 

台湾のサークルのけものフレンズイラスト集。『JAPARI RAINBOW』はともかく、『社保動物園』は「これどうやって審査通ったんだ?」と驚くほど18禁の内容だった。本番行為を描いていなければ局部を出していても問題ないのだろうか?

 

『海色の襟』

 

 

 

日本兵の擬人化イラスト集かと思って購入したが、艦これのキャラクターが日本兵の服装を着ているという設定なんだろうか?

漢字が台湾繁体字表記だったので真っ白な制服(艦これの艦長のコスプレ?)を着ている売り子の男性に「台湾から来たの?」と聞いたが彼は大陸の人間であった。繁体字にしているのは台湾での販売を見込んでとのことだった。

 

『太華 妖怪誌』

 

 

 

妖怪関連のイラスト及び漫画。フルカラーだ。

 

 

『山海奇談 番外編』

 

 

 

妖怪関連漫画『山海奇談』をネットにアップしているサークルなのだが、ポストカードとかしか売っておらず漫画はなかった。私好みの絵なので今度は是非とも紙媒体になった漫画を読んでみたい。写真はこのサークルをSNSで宣伝することでもらえる無料の冊子。

 

異録』

 

 

 

これもまた妖怪関連のイラスト集。

この細長いサイズの紙ってなんていうんだろうか?

 

 

『魔都地下鉄少女』と交通カード

 

 

 

上海の地下鉄擬人化イラスト集

このブースでは他にも中国の高速鉄道の擬人化イラスト集も多数揃っていた。

中国で擬人化が流行ったのはいつからだろうか。CPにも未だに『ヘタリア』島があったし、今回は中華料理や中国の都市、更に二十四節気の擬人化イラスト集も見かけた。

 右はこのサークルが販売していた上海の交通機関で本当に使えるカード。これで次に上海に来たときも、駅でいちいち地下鉄切符を購入しなくて済む。ただし残金は0元なのでチャージが必要。

 


 

私が購入したのは漫画本ばかりだ。しかも東方とかけもフレとか日本のコンテンツの同人誌が多いので、せっかく中国の同人イベントに来たのに中国らしさが薄いような気がする。

 

そこで、私の日本人の友人が購入した同人誌のラインナップも紹介する。

 

『子夜鬼譚』(イラスト集)

『中華古都』(中国都市擬人化)

『驚春』(二十四節気擬人化)

『白露朝夕』(絵本)

CAT48(猫擬人化)

『若風之声』(漫画)

『茨の道』(漫画)

『鬼僧談』(漫画)

『飼魔』(漫画&小説、BL)

『雲華誌』(茶葉擬人化)

『等你仰望』(小説、BL)

『入妄』(小説、BL)

『男科悍医』(小説、BL)

『華夏』(イラスト集)

 

BL小説と擬人化イラスト集が多くて友人のもまた偏っている感じだが、CPは私のようないわば日本と地続きの趣味を持つ者も、友人のような中国色の強い趣味を持つ者も同様に楽しめる良いイベントだった。ただし、漫画本が少なかったことは友人と共通の不満点である。


 ちなみに友人は
2日間で1000元(16,000円)ほど散財したらしい。


 今回のCP20は私も友人も満足しており、すでに「今度はVIPチケットを購入して早く会場に行こう」とか喋っている。また、5月21日に北京で行われる同人イベントにも参加するつもりである。

 

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COMICUPCP)はN1(同人誌)、N2(コスプレ)、N3(企業)の3エリアに分かれ、N3から各エリアを通過していく構造をしている。だから、N1に行くにはN3N2を通らなきゃいけない。各エリアはそれで完結しており、日本のコミケの西館東館のような区分けはされておらず、同人誌を買うために別のエリアや別の場所に行く必要はない。

 

私はN3の企業エリアなど目もくれずN1へ向かった。N3には中国で人気のあるアニメ・漫画・ゲームの企業ブースがあり、『戦艦少女』や『戦車少女』『陰陽師』などの販売ブースや、新作アニメ・ゲームの宣伝ブース、非売品のフィギュアの展示ブースなど多数の企業が出展していた。日本の角川も中国語版の漫画やライトノベルなどを売っていた。

 
(行列が並ぶ角川ブース)

 

(写真はCP2日目に企業ブースの『戦艦少女』グッズ購入のために屋外にまで並ぶ中国の若者たち)

 

 

N2はコスプレエリア兼ゴスロリエリアであり、中国のゴスロリショップが出店し服やら装飾品を売っており、やはりゴスロリを着た少女たちが列を作っていた。まさか中国でこんなにゴスロリ愛好者がいるとは思わなかった。

 

 (ゴスロリエリアの様子)

さて本命のN1である。

 

島が最も大きいはやはり『陰陽師』である。『東方Project』『ユーリ!!!』『FATE』も大きく、その他に『耽美原創』(オリジナル耽美系)という島もある。配置図を見るとわかるが、AからHまでほとんどが女の子向けのブースである。

 

各ブースはテーブル一つ椅子三つで一単位と言ったところだ。大きなサークルはブースもデカイ。人気のあるサークルや有名な作家(?)が来ているサークルには列ができており、行列の一番後ろには『隊尾』(最後尾の意味。何故か台湾繁体字)と書かれたプラカードを持つ人がいる。人だかりができるサークルは壁際が多いので、中国でも「壁サークル=人気」という認識で良いのだろうか。並んでいるのはやはり女の子が多い気がする。


(作者のサインを求める女性ら)

 

 (最後尾札を持つ女性)

 (人気サークルにできる女性の列)

各サークルを回っている子たちは手に購入リストを持っており、時々それにチェックを付けている。日本のコミケでも見た風景だ。また、人気サークルにはファンから差し入れが贈られる。


 

完売の札を出しているブースの子たちはスケブにイラストを描いていた。出展者同士の交流もあるんだろうか。

 

 

 

耽美系や一部男性向けサークルには肌色の多い出品物がたまに見られたのが気になった。

 

CP参加のサークルは事前に審査を受けるわけだが、中にはこんなもんがよく中国で審査通ったなと思える内容もちらほらあった。とは言え、日本のコミケで見かけるエロ同人漫画はほとんどなく、露出の多いイラスト集ばかりだったが、耽美系は絡みのシーンも描かれていた。男同士なら規制が緩いのだろうか。


 (小林さんちのメイドラゴンのエロポスターを貼るサークル。ヤバイ箇所にポスターを上貼りしている。出品物はエロイラスト集だった)


日本の同人誌の中国語版(台湾繁体字が多い。多分作者の許可を取ったものだろう)や日本語の同人誌を売っているブースも多かった。中国語版はともかく、日本語の同人誌は成人向けっぽいのもチラホラあったが大丈夫なんだろうかと思った。


(上が中国語版、下が日本語版の同人誌)



(同人ソフト『永遠消失の幻想郷』の中国語版を販売するブース。2日目には売り切れていた)

 

北京のコスプレイベントで見るようなおそらく海賊版のTシャツも少ないながら売られてはいた。また、明らかにアニメとか漫画とかに興味を持っていなさそうな中年男性・女性がいるブースもあったが、多分海賊版の業者なんだろう。

 

『原創』(オリジナル)島にあるのに『陰陽師』やその他の二次創作ものを置くブースが多くて戸惑った。オリジナルの作品を一つでも置いていれば『原創』ブースを設営することができ、あとは二次創作でも何でも置いてもいいんだろうか。

 

 

『無料』の札を貼った小物を並べるブースも多かった。写真を撮っていないのが本当に残念だ。

中国語で「タダ」「無料」を表す言葉は一般的に『免費』と書く。この『無料』は「ご自由にお取りください」ではなく、何かを購入した場合のプレゼント、またはマイクロブログなどのSNSでそのサークルを宣伝した場合のお礼などの意味合いが強いようだ。もちろん、勝手に持って行っても良いと言うサークルもある。

 

ちなみに、中国語では「つまらない」「退屈」を意味する言葉に『無聊』がある。この『無聊』も上記の『無料』もピン音表記が同じ「wuliao」であるので、上の写真に込められた意味合いとは、このグッズは『無聊』(つまらない)ものなので、『無料』(タダ)でお取りくださいではないかと私は思うのだが、いかがだろうか。

 

 

1日目は閉館時間16時までねばってその後はどこに遊びに行く元気もなくホテルに帰宅した。同人誌にいくら使ったかざっと計算したところ500元(約8000円)は使っていた。一緒に参加した友人は小説ばかり買い、700元以上使ったらしい。


 

(1日目の戦利品)

 

51日 CP2日目


この日はのんびりしようと9時半ごろ会場に着いた。1日目とは打って変わってチケット売り場の長蛇の列がなくなっており、会場入り口前の行列もなくなっていて全く並ぶことなくスムーズに、10時前にはN3(同人誌エリア)へ行けた。

 

会場の外では昨日の賑わいぶりを嗅ぎつけたのかダフ屋のオッサンが「チケットがあれば並ばなくていいよ!」と叫びながらチケットをさばこうとしていたが、実際はなくても並ぶ必要なんかないので赤字にになったに違いない。

 

(赤い矢印のついた、人の流れに逆らいずっと突っ立っているオッサンがダフ屋である)

CP公式サイトに書かれている開場時刻は10時だが、私は9時半には入場できたので、この日は9時には開いていたかもしれない。ということはVIPチケット購入者は何時から入ったんだろうか。というか、前日に運営から「明日は○時に会場に入れます」みたいなアナウンスをVIPチケット購入者はもらっているのだろうか。2日目のVIPチケットの存在に疑問を持った。


 (1日目は3列以上に分かれていたのに、この日は1列しかなかった)

公式サイトによると、2日目は1日目よりも若干参加サークルが減っている。だから空っぽになったブースも目立った。それは人気サークルも同様で、この日も列ができているブースは多かったが、一部のグッズはすでに売り切れだった。


(サークルが撤収し空になったブース)


(ポスターに『売り切れ』札を貼るサークル)

しかし、空になったブースに、昨日売り子たちが食べていたスイカの皮だけが残されている光景には笑った。何で写真を撮らなかったんだろうか。

 

この日は、昨日ホテルでカタログをチェックして気になった『月刊少女野崎くん』の同人誌と『魔神英雄伝ワタル』のポストカードを買いに行こうと思ったが、前者はすでに売り切れで、後者はけっこうな人気サークルで女の子がいっぱい並んでおり、恥ずかしくなってためらっているうちになくなってしまった(後者のブースはいくつかのサークルと合同だったようでワタル以外にいろいろな、おそらく中国オリジナルの漫画やゲームの同人グッズもあった)。

 

2日目だけ参加したサークルっていたのだろうか。全然代わり映えしないどころか、ブースの数が減っているし、売り切れも続出しているしで、個人的に1日目に同人誌エリアを十分楽しんだら2日目も同人誌エリアに行く必要はないと思った。1日目は同人誌エリアで、2日目は企業エリアみたいな回り方が正しいのかもしれない。N3には1日目とは全く異なる弛緩した空気がエリアには漂っていて、一瞬北京のコスプレイベントにいるみたいな気持ちになった。


 それで気分が覚めてしまったというのもあり、また16時の高鉄で北京に帰らなければいけなかったので、2日目はそんな金を使うことなく13時半に会場を出た。

次回、戦利品

 

 


(4月30日のCP20の様子)


COMICUP(略称CP)とは毎年夏と冬の2回にわたって上海で開催される同人誌即売会である。今年で10年目を数える歴史あるイベントと言えるが、私は今年までこのイベントの存在すら全く知らなかった。

 


公式?サイト:http://www.allcpp.cn/allcpp/event/event.do?event=220
 

北京在住の私にとって中国で開催されるアニメ・漫画関係のイベントとは日本のコミックマーケットのような内容を意味しない。大抵のイベントがコスプレイベントであり、ステージでレイヤーが踊り、歌い、演劇をし、販売ブースでは海賊版を主とする様々なアニメグッズが売られている。そこには同人誌という創作物は存在しない。

 

なので、私は中国で同人誌はもう買えないものだと思い込んでいた。「もう」と言うには訳があり、私は10年ほど前の2007年か08年に留学先の中国人民大学の学生サークルが校内で開催した小さなイベントで東方のメーサク同人誌を購入したことがある。それが健全な内容であったことは特筆する必要もないだろう。

 

また、今年の521日には北京で二次創作物イベントが開かれる。だから、私の知らないところでも同人誌即売会が北京で行われていたのだろうが、北京の大型コスプレイベントである『I DO』や『COSPACE』や『MYC』などでは同人誌は販売されていないので、私がそう思い込むのも仕方ないだろう。

 

しかし、同人誌文化は魔都上海に根付いていたのである。そこで私は、サークルを運営しているわけでも、取材を命じられたわけでも、他に上海に用事があるわけでもなく、ただ中国の同人誌が欲しいという理由だけで、429日から51日のメーデー三連休を利用して上海へ行った。

 

CPのチケットは一般チケットとVIPチケットに分かれ、それぞれに電子チケットがあったが私は2日間つづりの一般チケットを予約購入した。430日と51日の2日分で80元だ。VIPチケットの特典は入場時刻の繰り上げ、これだけである。CP10時開催なのだが、VIPチケット購入者はそれより30分前に入り、人気のサークルにいち早く行き、望みの品を購入することができる。

しかし、一般チケット購入者が入場すればもうVIPの特典はなくなる。だから遊園地のVIPチケットみたいに行列を無視できるというわけではないので、その繰り上げ30分の前にVIPチケットを購入するかどうかは、自分がどのジャンルのどのサークルを目当てにしているのかによる。私もお目当てのサークルはあったが、中国で人気の『陰陽師』とか新作アニメには興味なかったので、VIPチケットの購入は不要と判断した。

 

430日当日、私は大きなリュックを背負って上海の上海新国際博覧センターへ向かった。開場時刻は10時だったが早く着いた方が会場の外で並ぶ必要もないだろうと考えて早めに出たのだがこれが全く甘い見通しであったことをすぐに教えられる。


なんだかんだあって9時頃に会場に着いたのだが、地下鉄駅から続く人の流れの大きさに「アレ?」と思いながらすでにバッチリコスプレしている彼らと共に進んでいくと、当日券売り場に長蛇の列ができているのに面食らう。

 
(写真左の列が当日券を求める人々。チケット所持者は右側を歩いている)

前日、CP公式サイトの掲示板にチケット1100元で買う、とか、VIPなら200元で売るみたいな転売発言が多く書き込まれていたが、上海の炎天下に並ぶ手間を考えたら、多少高くてもチケットを事前購入した方がたしかに良い。

 

しかし、チケットを持っている私も行列に苦しめられた。入口前にも3列に分かれた行列ができていたのである。日差しが厳しく、傘を用意している参加者を羨ましく思った。みんなと並んでいると周囲の声が耳に入ってくる。私の隣りにいた女の子グループは「私はこことこことここ行くから、そっちは頼むね」みたいな役割を確認していた。また、会場時刻の変更が噂されVIP8時半にはもう入っている。一般チケットは9時半には入れる」という話が飛び交っていた。


(一般参加者ゲートの入口前)

しかしその噂は真実であり、9時半に列が動いた。館内に入ってもまず荷物検査があり、それから館内を3分ほど歩き、ようやくチケット確認所へ着く。ここで面白いことが起きていた。チケット確認所は実体チケット(要するに実際持っている紙のチケット)とよくわからない種類のチケットと電子チケットのだいたい3つに分かれていたのだが、電子チケット購入者が多いのか、それとも何か不便が起きているのか、電子チケットに行列ができているのだ。

 
(手前が電子チケットの列)

実体チケットを持つ私は並ぶことなく入場することができた。電子チケットとは並ぶ手間とかチケットを切る手間を省く便利な物だと思っていたのだが、電子チケットに速さを求めるのがおかしく、送料不要でスマホに何かが起きない限り絶対持ち忘れることがないという利点しかないのかもしれない。

 

何はともあれ、私は10時ぐらいに会場に入ることができた。

 

次回の同人誌エリア感想に続く

4151800 中国伝媒大学の教室

在十字路口的国産推理

(十字路に立つ中国ミステリ)

 

語り手:ミステリ小説家・呼延雲

 

 

陸秋槎のトークショーの翌日にミステリ小説家の呼延雲のトークショーが中国伝媒大学ミステリ研究会の主催で行われました。残念ながら来場者は30人程度でしたが、ミス研主催ということで伝媒大学の他に多くのミス研メンバーが参加していたようでトークショー後の質疑応答タイムでは10人以上の学生が呼延雲に質問をぶつけていました。

 

実は前日の陸秋槎トークショーに呼延雲が来ていました。私も、明日お邪魔させていただくので挨拶をしたところ、呼延雲も私のことを覚えていてくれて「明日のトークショーは『敏感』なことを話すぜ!」と言ってくれました。

『敏感』とは政治的にデリケートな内容を指す中国語です。以前、小説で警察が関与する臓器売買事件を書いて上から注意された呼延雲ならではのセールストークです。

 

しかし今回聞いてみると、その内容は私にとって『敏感』というよりも『深刻』で、中国ミステリを読み続ける者としていろいろなことを考えさせられました。

 

陸秋槎呼延雲という順番でトークを聞けて非常に良かったと思います。

陸秋槎がミステリマニアから小説家になったという実体験をもとに、これから小説家になろうとしている若者を鼓舞していたのに対し、呼延雲は商業を重視する小説家としてデビューしたあとの困難を現在の中国ミステリ業界全体の苦境と合わせて話してくれました。

 

 

 

 

呼延雲はまず2016年度に中国で出版された本格ミステリが15作品以下というデータを示し、更にそれらの発行部数が少ないということを指摘しました。(これはあくまでも呼延雲独自の統計である)


 それから
2000年から2017年までを一つの中国ミステリ史と見て、初期の作家に水天一色や言桄、午曄、普璞とかの名前を挙げ、中期の流行期の作家に周浩暉や紫金陳らの名前を挙げました。

 

中国ミステリを読んだことのある人ならわかりますが、呼延雲が挙げた初期と中期の作家に関連性はありません。初期は中国ミステリインターネットサイト『推理之門』、または中国ミステリ専門誌『歳月推理』出身の作家でありますが、中期でメジャーになったのは初期に活躍したのとは異なる作家であり、彼らは天涯社区などに作品を投稿して頭角を現しました。

 そして、彼ら中期の作家は本土化(中国に適した)した作品を書いたため、一般の読者から受け入れられたということであり、周浩暉に至っては『中国の東野圭吾』というベストセラー作家の称号を得ました。

 

 

しかし、果たして周浩暉ら「売れている」作家は本当に売れているミステリ作家なのでしょうか。呼延雲は中国SF小説の超有名作家・劉慈欣(今年映画にもなる『三体』の作者)の名前を出し、「中国ミステリには劉慈欣はいるのか?」と問いかけます。

 

しかし中国SFも決して順風満帆ではないと呼延雲は指摘し、「果たして中国SF業界は盛り上がっているのか?」と疑問を提示し、中国SFは劉慈欣一人勝ちの状態で他の作家や業界全体はそれほどメジャーにはなっていないと踏み込んだ発言をします。

 

私もこの意見には共感できます。確かに中国SF関係の授賞式の規模や賞金額の大きさに感心させられることはありましたが、じゃあホントに売れているのかと考えた時、その人気を反映するような状況を見たことがないという事実に思い至ります。もちろん、中国産SFはたくさん出版されていて、郝景芳の『折りたたみ北京』は2016年度第74回ヒューゴー賞短編賞を受賞しました。

 

 

終盤、呼延雲は小説を書く際に注意している4つの点を上げました。

 

1.動きのあるストーリー
 2.斬新なネタ
 3.古代の要素を取り入れる
 4.ジャンルはあっても形はない

 

上記の点が反映されているのが『黄帝的呪語』や『烏盆記』です。現代を舞台にしていながらも古代中国の要素を取り入れて、売れるように工夫をしていることがわかります。

 

 

そして、中国ミステリ業界の現状を以下のようにまとめました。

 

作品が『本格』的であるほど、成功する難しさは増す

作品が『本土』(中国)的であるほど、成功確率は高くなる

大衆は欧米ミステリを欲し、一部のマニアは日本ミステリを欲する

 

 

 

呼延雲の意見は、現代の中国では日本の本格や新本格のようなトリック重視の作品は商業向きではないということで、売れたいのであればサスペンスやストーリー重視で、中国要素を入れた欧米ミステリ的な小説を書け、ということです。

 

 

この主張自体、中国ミステリでは全く新しいものではありません。以前から中国ミステリの『本土化』(中国化)は叫ばれていましたし、だから作家はもっと知識を取り入れなければいけないと言われていました。しかし、商業的な立場から日本ミステリ風の中国ミステリは中国では売れないと主張しているのは呼延雲ぐらいじゃないでしょうか。

 

 

トークショーの最後に呼延雲は『中国ミステリの黄金時代は始まっている最中なのか?それともすでに過ぎてしまったのか?』と問いかけました。

 

この問いは中国ミステリ作者と読者にとって切実です。今後、新しい作品が生まれたとしても、一部で受けただけで終わってしまえば作家は生活が続けられません。

以前、もと新星出版社編集者の褚盟は「中国ミステリは欧米や日本と比べて遅れており、大成するまでまだ30年ぐらい時間がかかる」というようなことを言っていました。しかし呼延雲の問いかけによって、30年という時間も希望に過ぎず、そもそもすでに終わっているという可能性もあり、更に暗い未来が見えてきました。

 

 

呼延雲は中国ミステリを商業的に成功させる方法を語ってくれましたが、本格ミステリを中国で売るためにどうすれば良いのかという問いに対して答えを述べませんでした。ただ、トークで呼延雲が「今の中国ミステリの状況でまだ『国産ミステリを読んだことがない』と言う読者はかなり偏見を持っている」と指摘した通り、作家がより良い作品を書くということはもちろんですが、それによって読者や出版社の意識を変えていき、「国産ミステリなんか読んだことない」という中国人読者の『中国ミステリ=つまらない』という偏見を減らしていくしかないのでしょう。

 

2015414日から16日にかけて、日本在住の中国ミステリ小説家・陸秋と著名な中国ミステリ小説家・呼延雲のトークショーが北京で開かれました。この模様はおそらく今後、新星出版社や雲莱塢などから公式の文字起こしデータがアップされるでしょう。ここでは3日連続で出た私が備忘録としてその時の内容を書き起こします。

 

私の聞き間違いや理解ミスで作家の意図と違うことを書いていたらすいません。

 

 

4141830 北京市王府井付近 商務印書館内 涵芬楼書店2

トークテーマ 「推理迷的青春―『新本格』的初期風格」

(ミステリマニアの青春―『新本格』の初期の作風)

語り手:陸秋 

新作『当且当雪是白的(雪が白いかつそれのみ)のサイン会を兼ねたこのトークショーには40人ほどの若い読者(多分大学生)が陸秋のトークを聞きに来ていました。今回は主に日本の1980年代後半及び90年代前半の新本格ミステリについて紹介し、最後に現在の中国ミステリに生まれている『新本格』作品を取り上げました。実はこのトークショーは北京が初めてではなく、48日に上海ですでに行っています。その時は上海在住のミステリ小説家陸燁華と時晨もいたようです。

 

 

トークで陸秋紹介した日本の新本格ミステリは以下の6作品です。

 

綾辻行人『十角館の殺人』

我孫子武丸『8の殺人』

有栖川有栖『月光ゲーム Yの悲劇'88

歌野昌午『長い家の殺人』

法月綸太郎『密閉教室』

芦辺拓『殺人喜劇の13人』

 

これらのうち、後半3作品はおそらく中国で正式な翻訳版が出ていません。

中国では民間翻訳(ファンが勝手に作品を翻訳し掲示板やSNSサイトにアップする)が依然として盛んです。それは、今回のトークで陸秋が早坂吝の名前を出した時に、まだ一作も中国版が出ていない日本の作家に対して笑い声などの反応が起きたことからも読み取れます。

 

ですが、今から30年ほど前の上記6作品が果たして中国でどれほど知られているでしょうか。それに今回の聴講者はおそらく大学生ばかりです。しかしそれは1988年生まれの陸秋も同様なのですが、古く且つ未翻訳の作品を紹介できる日本在住という立場を持つ陸秋の強みが感じられます。

 

 

陸秋は上記6つの新本格ミステリが如何に現実と乖離し、また設定過剰であるのかを面白おかしく説明。聴講者たちはときに笑い、ときに感心しため息をもらしながらトークに耳を傾けていました。

 

そして後半は中国の新本格ミステリを簡単に紹介。

 

陸秋槎『当且当雪是白的

胡正欣『悪意的平方

騰騰馬『烏鴉社

陸秋槎『超能力偵探事務所

時晨『罪之断章』、『黒曜館事件』、『鏡獄島事件

呼延雲『嬗変

 

日本の新本格同様、これらの作品もキャラクターや世界観が現実離れしている、動機がおかしい、トリックのためだけに存在するギミックがあります。

 

自身ももともとミステリマニアだった陸秋槎は『票友』(京劇用語。京劇を見るだけだったが、趣味が講じて道楽で挟撃を演じるようになった素人役者を指す言葉。愛好家という意味)がプロ作家になり、少年少女を主人公として学校生活を舞台にする青春ミステリを書くようになったと説明。日本の新本格作家と同じような生まれ方をした中国の新本格作家ですが、日本の新本格作家が探偵を捨ててストーリー性の高い現実的な作品を書くようになったのと同様の事態が中国でも起きます。

 

例えば、時晨のように青春ミステリから脱却し大人の探偵が出る作品を書く作家や、呼延雲のように強力な力を持つ非現実的な少年少女探偵が出る一方で市場を考えた内容の作品を書き、青春要素と商業要素のせめぎあいをしている作家が中国でも登場します。

 

 

 

 

 

また、陸秋槎は416日も1400から北京市広渠門内大街 建投書局内の北京50+書店にて翻訳者の趙婧怡(東川篤哉や西澤保彦などの作品を翻訳)とトークショーを行いましたが内容は大体同じでした。(この日は50人ぐらいのやはり学生らしき若者が多かった)

 

ただ、趙婧怡が「なんでミステリの作者ってみんなオタクなの?」という切り口から、森江春策Pの名前でニコ動にアイマス動画を投稿している芦辺拓のエピソードを出すのは流石に笑いました。

 

陸秋槎はトークショーに来ているような若いミステリマニアが作家になった場合の日本と中国の共通点を語りました。この話が彼らの心にどう響いたのか。彼らの創作活動にきっと良い影響が出たことでしょう。

そして、中国のミステリマニアも作家になれば最終的に自分が愛した新本格を捨てることになるのでしょうか。これは陸秋槎自身の動向に注目です。

 

 


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