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栖鄭 椎(すてい しい)
年齢:
35
性別:
非公開
誕生日:
1983/06/25
職業:
契約社員
趣味:
ビルバク
自己紹介:
 24歳、独身。人形のルリと二人暮し。契約社員で素人作家。どうしてもっと人の心を動かすものを俺は書けないんだろう。いつも悩んでいる……ただの筋少ファン。



副管理人 阿井幸作(あい こうさく)

 28歳、独身。北京に在住している、怪談とラヴクラフトが好きな元留学生・現社会人。中国で面白い小説(特に推理と怪奇)がないかと探しているが難航中。

 Mail: yominuku★gmail.com
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このブログは、友達なんかは作らずに変な本ばかり読んでいた二人による文芸的なブログです。      

なんか知らないけどTwitterで妙に反響があった中国SF小説。実際、中国でもそこそこ有名になりつつあるのだが、日本のこの反響を作者が知ったらさて喜ぶかそれとも


 





天空を翔ける飛行船「夸父農場」の船長・程成は、人工知能(AI)と人間が合体して進化した「合成人」勢力との戦争で核爆弾を使用して勝利を収めた「純種人」側の軍人だった。彼は都市ほどの大きさがある飛行船で数多くの受刑者たちが栽培する農作物を管理し、夜は遠く離れた場所で暮らす妻と会話し、いつか家族と一緒に生活できる日を夢見ていた。しかしある日、軍本部に連れて行かれた乗組員の丁琳が残したデータがきっかけで、彼は自分の生活が嘘で塗り固められた偽りの世界であることに気付く。過去の戦争で「純種人」側は敗北し、世界はAIと「合成人」に支配されており、程成自身は実際結婚すらしておらず、そもそも彼は戦争の英雄・程成ではなくその息子の程複であり、「合成人」に逆らった父親の「罪」を償うためにAIによって記憶を捏造されて、他の受刑者と共に服役する奴隷だったのだ。虚構に気付いて捕まった程複は「祖国」から助けにやって来たという妹の程雪や父親の戦友であった受刑者らと共に飛行船を脱出し、人類を救う旅に出る。





 


 


序盤、程複が自分は程成ではないと気付いてから、捕まって人体培養庫で臓器の増殖手術を受けるシーンまでがSFホラーとして傑作。1日ずつ徐々にお腹が大きくなっていき、開腹手術を受けると腎臓が14個摘出されるシーンは恐怖の映像が想像できたほどだ(臓器は移植の他に合成人たちの食料となる。生まれたての赤ん坊も同様)。そして船を降りてからは一転、冒険譚が始まり、妹の程雪と一緒に「祖国」を目指しながら核戦争後の世界を渡り歩き、食人クローンの集落、「合成人」の国、文明を持つネズミと世界から見捨てられた被爆者たちが戦争する草原などで、程複は絶望的な光景を目にする。


 


程複は勇敢で善良で正義感が強く、悪く言えばお人好しのヒューマニストであり、絶望的な世界の中で他人のために生きようとする彼の目を通して、この世界の異常性が見えてくる。AI政府は読者の目からも程複の目から見てももちろんおかしいが、「純種人」である程雪が目指す「祖国」も決してユートピアではなく、「純種人」至上主義者の集まりであるので、行く先々で程複に協力してくれる「合成人」すらも程雪は人間だと見なさない。何が正義か分からない曖昧な世界を程複は生きていかなければいけないのだが、人間性が軽視される世界では人間すらも信じられない。例えば、程雪が本当に妹なのかという疑問、敵であるのに程複を助ける者、何度も捏造されている自分の記憶などがますます程複を悩ませる。


 


出てくるキャラクターや設定も秀逸だ。人間に奉仕するように造られ娼婦として働くことに疑いを持たない「セックスロボット」の桜子、人体や臓器どころか人間の人格すらも売買できる市場、生産性のない人間を殺そうとするAI政府、人権やプライバシーというものが存在しない社会、日本人を含む外国人が多数登場するある意味国境のない構造、これらの世界観が今後この作品にどのような厚みを持たせるのだろうか。


 


こういう面白い本が1冊で終わるはずはなく、案の定シリーズものになっていて、巻末予告を読むと2巻目には科学技術で甦った孔子やアインシュタインが仲間になるらしい。そう言えば、中国SFの代表作『三体』でもバーチャル世界に歴史上の偉人たちがやたら登場した。1巻では戦闘や冒険シーンが多かったが、2巻目では哲学的な長いお話が中心になるかもしれない。


 


 


『三体』の和訳が2019年に出版されるということが決まり、今後更に中国SFに関心が向けられるはずなので、こういった若い作品がもっと日本人に知られてほしい。SFに詳しい人間が本作を読んだら色んなオマージュを発見できるかも知れないし、そこから現代中国人のSF観が発見できるかも知れないからだ。


 


さて、この本の簡単なあらすじをTwitterに紹介したところ、「まるで今の中国を書いているみたいだ」と言う声がちらほら聞こえて驚いた。あらすじを書いた時にはそんなこと全く考えなかったからだ。本作に出てくるディストピア要素はSFにはよくあるものであり、中国人作家だから書けた作品というわけじゃないんじゃないだろうか。実際、作者に「中国批判の作品ですか?」と聞いたところで、もし本当だったとしても素直に「イエス」と言ってくれないだろう。


 


中国の小説をずっと読んで来ていて思うのは、日本人が関心を寄せるポイントが、その本は中国批判を書いているかどうか、中国の検閲や表現の自由の規制と戦っているかばかりなのが、とても残念だということだ。文学ならともかく、普通の小説であるならそういうのを二の次にして、面白いかどうかの判断で興味を持ったり手に取って読んでもらいたい。中国の小説の存在価値はそればかりではないはずだから。


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沈黙基因 著:黄序


 


日本では『沈黙の遺伝子』(翻訳:望月 暢子)というタイトルで翻訳・出版されているSFミステリーの原作『沈黙基因-戦魔希特勒基因去向之謎(沈黙の遺伝子-戦争の悪魔ヒトラーの遺伝子の行方)』を読んだ。


 


さて、表紙およびサブタイトル強烈なネタバレをしてしまっているので言ってしまっても構わないと思うが、本作はヒトラーの遺伝子をめぐる物語だ。とは言え、中盤ぐらいまでは「遺伝子」なんて言葉全く出てこないので、一体どうやって絡めるのかと気になったが、中盤まで引っ張ったネタをまるでロケットのブースターのように切り離して、物語をますます加速させるとは思わなかった。


 


アメリカのコロンビア大学に留学中の中国人学生・江夏は人間の夢を録画する「写夢計画」の被験者となる。そして映像に映し出された夢には、彼が今まで会ったことのない人物や建物の姿があった。夢の映像を細かく分析していく江夏と友人の葉広庭は、江夏が最近3年間の記憶を失っていることを知る。関係者の口から語られる全く知らない自分の言動を追うため、江夏は自分の夢や他人の記憶を探り、アメリカと中国そして時間すらも股にかけた世界的な陰謀に挑戦することになる。


 


本書の中で「夢」とは筒井康隆の『パプリカ』のように荒唐無稽で極彩色の情景でもないし、現実世界の生活を予知するような「占い」的ツールでもない。人間が実際に目撃した、しかし覚えていなかったり、「見た」と認識していなかったりした視認物を意識に浮かび上がらせるものが本書で言う「夢」である。


 


そこで江夏らは自分の夢が信頼に値する証拠として過去の自分の行動を調査したり、夢に隠された真実を解き明かしに危険を冒したりするので、そういう意味ではやはりミステリー小説のジャンルにも入るかもしれない。


 


この本、前半と後半でキーとなる科学技術が全く異なる。前半は夢を映像として残す器材が登場し、後半は更に先進的で、他人の脳細胞を被験者に移植して見せたい記憶を見させるどころか、その脳細胞の保持者の行動を追体験させるということまでできる技術が登場する。そして、後半になると夢を見るという技術は不要になり、もう十分だという風に今まで「夢」を中心として進行していた流れを切り離して「現代アメリカ編」を終わらせ、「脳細胞」を中心とした過去と現代がリンクする「ヒトラー編」が始まり、物語はより荒唐無稽になってくる。だが、前半で既に夢を録画する機械という現実より進んだ科学技術が登場するので、クローンとか脳細胞移植とか言われてもそこまで抵抗なく読める。また、おそらく作者が考えたオリジナル要素だと思うが、ヒトラーに大胆な新設定を加えてスケールをより大きくさせている。


 


江夏は自分に移植された数十年前の科学者の脳細胞に残る記憶を見ることにより、その科学者の体で当時の状況を体験する。その様子はまるで江夏自身が数十年前に戻ったかのようだが、過去の人物に「乗り移っている」ようなものなので過去に干渉できるわけではない。彼は探偵かつ当事者として事件を実際に体験するのであり、聞き込み調査とかいう伝統的な方法を取らず、「夢」や「脳細胞」を利用して自分や他人の記憶に直接アクセスし、真相に迫る。


 


 


疑問に思うところやご都合主義的な展開も目立ったが、全体としては非常に読みやすく、300ページ以上あったがだいたい2日で読み終えた。この本、日本語版にする上でかなりの加筆修正が入ったらしい。確かにどの文章が不要だったかと具体的に指摘することはできないが、読み飛ばしても大丈夫な箇所が多かったと思う。表紙裏に掲載されている有名人コメントの中で有名音楽家の高暁松が「ハリウッドに売り込めるストーリー」と評しているが、確かにその通りかもしれないが悪く言えば「大味」ということではないだろうか。いつかは日本語版も読んで比較したいものだ。

三体 著:劉慈欣


 


中国現代SFの金字塔『三体』(初版は2008年)を今更読む。


 


この本、おそらく2009年か2010年頃に中関村の新華書店でシリーズ2冊目とともに購入し、一回読んだは良いが当時の自分の中国語力ではいまいち理解できずそのまま放ってしまったものです。


 


 


『三体』の映画化、そしてアマゾンによるドラマ化の製作という話を聞き、ようやく読み返してみることにしました。


 


本を開くと、約10年前の自分の中国語力の未熟さを知れる足跡が多々残っており、単語にピンインを書いていたり、日本語訳を書いていたりして、当時はこういう人気作を読むのもかなり苦労していたんだなぁと感じ入りました。


 


ナノテクノロジー科学者・汪淼は突如横暴な警察官・史強らに呼び出される。連れて行かれた先には中国人の将校の他にアメリカCIAもおり、淼は彼らから「科学辺界」という科学者組織に潜入して動向を探るよう頼まれる。彼らが恐れているのは高度な科学力を持つ「三体」という地球外文明だった。


人類と三体の関係は文化大革命にまで遡る。文革によって家族と人生をめちゃくちゃにされた科学者の葉文潔はレーダー技術研究所「紅岸基地」で偶然宇宙人とコンタクトを取り、地球の文明を滅ぼすよう依頼する。そして現在、葉文潔を指導者とする「地球三体反乱軍」が450年後に攻め込んでくる三体を迎えるための準備をしていたのだ。


 


この物語で嫌でも注目してしまうのは、中国人科学者が文革のせいで人生がめちゃくちゃになって宇宙人に地球侵略を依頼するという人類滅亡のきっかけだろう。しかしそればかり強調するのは間違っていると思うし、この本は文革のみを否定しているのではなく、文革の熱狂のさなか大勢の中国人が同胞を責め、痛ぶり、相互不信に陥らせた人間の愚かさや悲しみを笑っているわけだ。


本書は全3巻で、残りの2巻はまだ読んでいないが、おそらく文革を反省するという展開はないだろう。そもそもこの作品に登場するのは科学者や軍人ばかりで政治家はいないし、反省したところで三体が地球侵略を諦めてくれるわけでもない。


 


ところで調べてみると、三体の映画は2016年夏には公開予定だったようだが、いつの間にかもう2年も過ぎている。百度百科を見ると、映画会社の方に人事異動があったことで上映が延期しているらしいが、2年ともなると別の原因、文革要素が原因なんじゃないかと勘ぐってしまう。


 

 

2016年度第74回ヒューゴー賞短編賞を受賞した『北京折畳(折りたたみ北京)』が収録されている短編集。劉慈欣の『三体』に続く中国人作家のヒューゴー賞受賞作品ということでTwitterなどで既に話題になった作品をようやく読むことが出来ました。




人口の増加と土地の減少の問題を解決するために北京は500万人の上流階級が住む『第一空間』、2,500万人の中流階級が住む『第二空間』、そして5,000万人の下流階級が住む『第三空間』の三つの世界に分けられた。空間は時間帯によって入れ替わり、時間が来ると土地が建物ごと折りたたまれて仕舞われて新たな空間が現れる。第一空間の住人は朝6時から翌日の朝6時までの24時間を享受することができるが、第二空間の住人は朝6時から夜10時までの16時間しか使えず、第三空間の住人に至っては夜10時から朝6時までの8時間しか時間が貰えない。主人公の老刀は第三空間で生まれそこで2,000万人が従事しているゴミ処理場の職員として働いている。ある日、第二空間の学生から第一空間まで手紙を送るように頼まれた老刀は娘を良い幼稚園に入れるお金を稼ぐために決死の思いで『密入国』をする。



統計によると2016年現在の北京の総人口は2,000万人ほどだと言われていますが、実際には3,000万人以上いるという指摘もあります。この作品ではおよそ8,000万人の人間が北京に暮らしていますが、ここでは空間どころか時間でも住民を明確に区別しています。



第三世界に住んでいる住人は罪を犯したわけでも罰としてそこに入れられているわけでもありません。老刀の場合は彼の父親もここでゴミ処理場で働いており、この境遇が悲惨であるとも思わず怒りも覚えておりません。そして恐らく第一空間の住人も同様に、第一空間で生まれた子どもは生涯そこで過ごすことができるのでしょう。



この作品で衝撃を受けたのは北京が知育玩具のように折りたたまれて異なる様相を現すこと以外は特に現在と変わりがないというか現実の延長にある世界を抱いているところです。


実際に北京に住んでいる外国人として自分は第二世界には行けるのだろうかと不安を抱きますが、それすらも中国人から見ると非常に傲慢な考えで、外国人だからと言っても能力のない人間は第三世界にすら住めないかもしれません。実際いまは北京で発行される外国人ビザの条件がどんどん厳しくなっているので、自分としては北京が折りたたまれることより北京に住めなくなるんじゃないかという不安の方がよっぽど切実かつ現実的です。




 

本番の91119時から22時までが授賞式でした。3時間も何やるんだろうと疑問でしたが始まってみると賞の発表の連続に驚きました。


私が記録しただけでも今回はこのぐらいの賞がありました。


科幻電影創意賞

科幻探索賞

最佳原創図書

最佳引進図書

最佳青少年作品

最佳評論

最佳編輯

最佳美術作品

最佳短篇小説

最佳科幻社団

浩林杯最佳小児図書

年度新秀

最佳中篇小説

最佳長篇小説

特別貢献賞





編集者に授与される賞や小説の表紙を描いたデザイナーに対する賞もありえらい景気の良さを見せつけられた気がします。


6回の賞一覧を見てみると「最佳科幻迷賞(SFファン賞)」なんかもあったようで、賞の種類は毎年増減しているようです。しかも聞くところによると賞の数はまだまだ増える予定ですので、例えば私が今から中国SFに関するレビューを書き続けていけば第8回には『最佳海外科幻評論賞』なんかを作ってもらって受賞できるのではないでしょうかと妄想してしまいます。



授賞式の合間には寸劇というか出し物もあって見ていて飽きなかったです。



ライトセーバーを持ち、ジェダイやシスの格好をして出て来る審査員たち



手品。花束をステッキに変えるというベタベタなものから美女の空中浮揚までやっていた。この一連の手品、セットで売られていそう。



たちはらとうや、Cat Rambo、そして中国人作家(名前忘れた)の日米中三ヶ国語による老舍の『猫城記』の朗読会。

 

 





ミュージシャン(有名?)による『銀河之外』の生演奏。なかなか良い詩だった。






・総評


デカイイベント、国内外の著名人、数々の賞と賞金を見てやっぱお金があるところは良いなぁと思ったのが正直な感想。もしこれと同じ規模を中国推理のジャンルでやるとしたらまずスポンサーを呼ぶための目玉となる作家なり作品なりを用意する必要があり、当分の間は期待できません。



そして中国SFがメディアミックス、というより映像化に力を入れていることに興味を惹かれました。中国推理も同様にドラマ化を進めていますが、中国SFはそれより一段上の映画化を目指し、国外への進出を狙っています。あの『三体』が2017年にいよいよ劇場公開されるということですがそれがこの先駆けになるのでしょうか。まぁ絶対に成功させなきゃいけないプロジェクトでしょうし、我々外国人も成功を祈っています。最近のハリウッド映画で露骨な中国押しがありウンザリしている人が多いと聞いているので、だったら一から全部中国国内で製作してくれというのが世界の映画ファンの本心なのではないでしょうか。



ところで中国SFではタイムスリップや輪廻転生などが規制されているという話を聞きましたが、結局のところこの制約は有効なのか、そして作り手側は不利益を被っているのかが気になりました。


またこれは現場でとある中国人SF作家から聞いた話なのですが、日本ミステリ(海外ミステリ)を主に出版する新星出版社のような日本SF(海外SF)専門の出版社がないから中国には新しい海外SFがあまり入ってこないようです。「いちばん有名な日本人SF作家は?という私の質問にその作家は「星新一?と笑いながら答えてくれましたがちょっと冗談には聞こえませんでした。

 ただし伊藤計劃の『虐殺器官』と『ハーモニー』は簡体字訳されていますし、今回の最佳引進図書(最優秀海外図書)では『火星の人』が金賞を取りましたので、要するに本国で売れている作品ならば中国で売るつもりはあるということなのでしょう。ココらへんが日本ミステリ事情と異なっており、日本ミステリの場合はその作品単体が無名でも『日本ミステリ』という幅広いジャンルで一定数の売れ行きを見込んで出版しているのかと思います。




ただ、中国SFの発展具合を見るともう海外SFなんかいらないんじゃないかと思います。中国側もいまは中国SFを海外に宣伝することに焦点を絞っているようですので、今後は世界が中国SFを理解する側に回るのではないでしょうか。

 

 

終わり!!

 


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