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HN:
栖鄭 椎(すてい しい)
年齢:
34
性別:
非公開
誕生日:
1983/06/25
職業:
契約社員
趣味:
ビルバク
自己紹介:
 24歳、独身。人形のルリと二人暮し。契約社員で素人作家。どうしてもっと人の心を動かすものを俺は書けないんだろう。いつも悩んでいる……ただの筋少ファン。



副管理人 阿井幸作(あい こうさく)

 28歳、独身。北京に在住している、怪談とラヴクラフトが好きな元留学生・現社会人。中国で面白い小説(特に推理と怪奇)がないかと探しているが難航中。

 Mail: yominuku★gmail.com
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このブログは、友達なんかは作らずに変な本ばかり読んでいた二人による文芸的なブログです。      

 

本書は香港人SF作家 譚剣が送るSFミステリで、2012年に香港で出版された本の簡体字版です(簡体字版の出版年月日は201411月)。後ろの推薦コメントには島田荘司推理小説賞の第一回受賞者 寵物先生(Mr.ペッツ)と第二回受賞者 陳浩基が寄稿しています。

譚剣と言えば『人形軟件』シリーズが有名で特に一作目の出来には私も感動させられました。 

 未来形小説 人形軟件 著:譚剣

 


孤島で光子ゲート転送の実験をする科学チームを率いる張学然は物体の転送、動物実験を経て最後である人体実験の段階に来ていた。その実験体になることを志願した売れない小説家の陳志偉が機械に入り最終実験が始まる。何も問題なく成功すると思われた実験だったが結果は失敗し、転送された陳志偉は首と体が分離された死体となった。張学然は古い知り合いである名探偵・巫真とその助手の林菁菁を島に呼び、この失敗が単なる事故なのかそれとも誰かに仕組まれた事件なのかの調査を頼む。事件の可能性が色濃くなる中、孤島では日本刀による密室殺人事件が発生し実験は更に暗礁に乗り上げる。


 

 

本作で出てくる光子ゲートとは例えば『ハイペリオン』にも登場した星から星へ物質やら人間やらを一瞬で移動させることが物質転送装置のことです。

 

本当なら生きた状態のまま転移先に送られるはずだった被験体の陳志偉が首と胴体が真っ二つになって「出現」したものだから、リーダーの張学然は実験妨害と見て旧友であり有名な探偵巫真に捜査を依頼します。しかし、ただの探偵の巫真に専門的な科学知識などあるはずありません。ですが張学然は彼にそんなこと知らなくても捜査はできると言い光子ゲートについて詳しい説明はしません。この辺りはちゃんとミステリ畑の読者を対象にしていて、本書にはSF小説によくある長々とした技術の説明もありませんし、もちろん読者に専門的なSF知識は必要としません。

 

犯人の目星もつかないし動機もわからない、システムも誰かに侵入されたかどうかすらわからない中で推理は徐々に光子ゲートの存在を認めるという話になります。光子ゲート自体は完成していて物質転送ができるのですが、じゃあ光子を利用したゲートがあれば転送以外に何ができるのだろうと考えて、名探偵巫真はSF小説さながら、しかし極めて現実的な推理を披露します。結局SF小説的展開はなかったのですが、作者の譚剣にはそれを否定して物語をミステリ小説に寄せるのではなく、その結果を受け入れたSF小説を書いて欲しかったです。

突飛な推理が披露された時には「アレ?これバカミスじゃない?と興味を引きつけられましたが、ミステリとしてはともかく物語として非常によくできたオチになってしまった結果、この本にSFミステリとしての魅力がなくなってしまいました。

 

あと、本書には被害者の陳志偉の他にその妻の陳子慧、第二の被害者の陳好道、そして警察官の陳永仁という4名の『陳』さんが登場するのですが特に意味はなさそうなので何故読者が間違えやすい命名をしたのかが気になります。

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SF、サスペンス、武侠、ホラー、ミステリなど各ジャンルを網羅する複合的雑誌『超好看』が去年2014年に主催した第1『這篇小説超好看』(この小説が超面白い)の新人賞を受賞したのが本作である。

 

http://www.motie.com/huodong/chaohaokan

選考委員に何故か日本人の今村友紀氏がいる。しかも授賞式では対談まで行ったらしい。

 

作者林戈声はSFや武侠小説、サスペンスまで何でもこなすまさに『超好看』にふさわしい作家である。本作のタイトルが水滸伝から取られていることからもわかるように、本書は作家自身の専門知識を複合的に組み合わさった逸品である。

 

だが私には本書の魅力というか面白さというものが理解できず、ちょっと今回は紹介するかどうか迷った。

 

本書には2人の主人公がいる。新人刑事の趙銭孫と大学院生の柳公子である。趙銭孫側を表の世界とするならば、柳公子側は裏の世界であるが、2人がいったいどのような関係性にあるのか、そして2人の物語がどのように結びつくのかという謎は一向にわからず、読んでいて始終不安感に付きまとわれた。何故なら趙銭孫がいるのは確かに現実世界であるが、柳公子は外界から隔絶されたお廟で、本名や性別すらも分からない人間と不思議な空間を命がけで探検しているからだ。

注目すべきは本作の舞台が2030年の近未来に設定されているにも関わらず、未来的要素が全く見えないことだ。だが、西暦3000年の日本を舞台にした『リアル鬼ごっこ』ではあるまいし、何も考えなしに年代を未来に設定するわけがない。その期待は中盤辺りから叶い、物語には徐々にSF要素が顕著になっていく。更に柳公子がいる世界のおかしさも目立ち始めて、話が現実離れするほどに表と裏の世界の繋がりが明らかになるという構造には唸らされる。

世界観が掴めてからの中盤から、2つの世界がまさに表裏一体だったのだと明らかになる終盤までの流れは見事ではあるが、序盤の冗長な展開には全く辟易させられた。どうもこの作家は推理小説のメソッドには疎いんじゃないだろうか。

 

物語の冒頭で紹介される柳公子が迷い込んだお廟が外界と隔絶されていて、内部の人間としか連絡できない微信(ウィーチャット。中国のLINE)を使って顔の見えない他の生存者と情報をやりとりするという手段にクローズドサークルもの新たな可能性を感じたのだが、実はそれは全くの誤解で、やはり本作はミステリではなかったのではないかと思う。


はじめからSFとして読んでいれば、いったいこの本の何が面白いところなのだろうと悩みながら読み進めることもなかったんじゃないかと後悔している。

深夜将至,別喫罐頭 著:不帯剣

 

タイトルを直訳すると「夜更けに缶詰を食べるな」になるだろうか。たかが缶詰とは言え開ける際には封を解く高揚感とそこにできた空間を覗きこむ期待感が伴うが、この開けるという行為が今まで目に触れられなかったものを外に出すことだと思えば、その中身を見るという行為には「深淵を覗く者は…」という有名な一節が頭をよぎることだろう。

 

本書は16のショートショートで構成されており、裏表紙に『都市伝説』と書かれているように、まるで洒落怖(死ぬ程洒落にならない怖い話を集めてみない?)の中でも質の良い作品が収録されているようだった。

 

しかし、ほとんど表紙に惹かれて買っただけなので、作者が台湾人だとは中身を読むまで気が付かなかった。

道理で「マーガリン」に「人工バター」という注釈が付いていたり、建物面積を表す「坪」という単位にも注釈が付いていたりと、本筋とは関係のないものに注釈が付けられていたわけだ。確かに「マーガリン」を北京で見たことはないな。

 

本書の中で特に面白かった作品をいくつか紹介する。

 

 

『飢餓』は食べ物が消えた世界で奔走するタクシー運転手の話。飢えに耐えかね怪しい男から高額で古びた缶詰を買うと警察が家にやってきて捕まり、そこで彼は食事が法律で禁止されたという事実を知る。拷問を受けても彼の飢えは収まらず、釈放されて飢えと痛みでフラフラになった彼の目に映ったのは車に轢かれたばかりの犬の死体だった。

 

食事が何故犯罪になったのか、他の人間はどうやって生きているのか、古びた缶詰があるということは昔は食事が許されていたのか、それとも麻薬と同じ扱われ方なのか、などなど一切の掘り下げも説明もなく、ただこの現実を受け止めよとばかりに理不尽に展開する。

 

 

『生魚片』(刺身)は都市伝説的な話からきっちりとホラー小説に昇華させているが、それが逆に本作を凡作にさせてしまった。

旅行先の居酒屋で旨い刺身をおかわりすると店長に本当まだ食べるのかと聞かれる。不思議に思い厨房を覗くと、店長が自身の腹を切って肉片をお皿に載せているところだった。驚いて店を出た男の体に後日異変が起きる…

 

平山夢明の『東京伝説』にこんな話あったなぁと思い出しながら読んだ。

 

 

『租屋』(借家)は借りた部屋に次々と怪異が起きるという王道パターンを踏襲しているが後半から粘液質の化物が出て、最後は都市伝説的な終わり方で締める。家自体が化物で家と一体化するという話は小林泰三の『肉食屋敷』にも似ている。

 

 

『狗』は飼い犬の視点で展開する話で、そのあまりの人間的な独白に人間の魂が入った犬が主人公なのかと思わせられたが最後でまさかの正体が判明する叙述ホラー(こんな言葉あるのだろうか)。

 

 

表紙には『軽恐怖』(ライトホラー)と書いているけど、各作品にはどれもしっかりしたオチが用意されているので読み応えはある。中国ホラーとしてはちょっと洗練されすぎているのがやや不満なところではあるが…

 一ヶ月前の情報で既にご存じの方もいるかもしれないけど、中国のSF界で面白い催しをやっていたのでその動きでもさらっと紹介。
 
 中国のSNSサイト豆瓣の小説関係の情報が集まる豆瓣閲読にある同文館というコーナーでアメリカのSF作品文学賞『ネビュラ賞』2012年度受賞作の翻訳を募集しておりました。
 
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 SFの宴-2012年『ネビュラ賞』作品トライアル翻訳開放
 
豆瓣
 
 2013年5月に第48回『ネビュラ賞』大会で2012年度のネビュラ賞受賞作品リストが発表された。

 ネビュラ賞受賞作品発表ページ(英語)


 受賞後まもなく豆瓣閲読は中長編小説部門受賞者Nancy Kress(ナンシー・クレス)と短編小説部門受賞者Aliette de Bodard(アリエット・ドボダール)と、3作品が入賞した中国系作家劉宇昆の正式な許可を得て、受賞作品を独占的に公開するという栄誉を与えられた。
 

 劉慈欣(中国の有名なSF小説『三体』の作者)曰く「SF小説とは科学の美しさを方程式から解き放つ橋である。君が年季の入ったSFマニアだろうが、翻訳の愛好者だろうがこのトライアルの参加を求む。一緒に橋に上って風景を見よう。」とのこと。
 
 現在英語から中国語へのトライアル翻訳を募っている作品は以下のとおり。

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『Immersion』
作:Aliette de Bodard(アリエット・ドボダール) 
2012年ネビュラ賞短編小説部門受賞作
 
『On a Red Station,Drffting』
作:Aliette de Bodard(アリエット・ドボダール) 
2012年ネビュラ賞、ヒューゴー賞入選作品

『Fountain of Age』
作:Nancy Kress(ナンシー・クレス) 
2008年ネビュラ賞中長編小説部門受賞作

『The Erdmann Nexus』
作:Nancy Kress(ナンシー・クレス) 
2009年ヒューゴー賞中編小説部門受賞作

『Shiva in Shadow』
作:Nancy Kress(ナンシー・クレス)

『Scattered Along the River of Heaven』
作:Aliette de Bodard(アリエット・ドボダール)

『The Two Sisters in Exile』
作:Aliette de Bodard(アリエット・ドボダール)
 

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 アマゾンの説明文を読んで小説の内容を知った気になったり、本の表紙だけを見て作品の雰囲気をわかった気になったりする読者にとってこの小説は地雷である。

 アマゾンの編集者推薦文には『福島県』が作品の舞台と書いてあるが、正解は神奈川県だ。そして、表紙にはセーラー服を着た少女と学生服の少年が佇んでいるが、本書の主人公は二十歳はとうに過ぎている中国人である。

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 アマゾンURL:窒息-吾妻山霊異事件簿

 物語の冒頭でわざわざ静岡県に近い神奈川県の湘南地区と明記しているのに、何故よりによって編集者の推薦文で『福島県』と誤記されているのだろうか。

 それはおそらく作品で重要な役どころを担う『吾妻山』を編集者が福島県にある吾妻山と勘違いしたせいだ。
 

 アマゾンで本書を購入した読者は『吾妻山』つながりで作品の舞台がいつか福島県に移るのだろうかと無駄な勘繰りをさせられてしまう。しかも特典として本書に同封されている作者自身が撮影した吾妻山や江ノ島のポストカードにも『日本の福島で撮影した吾妻山』と書かれているので、ここまで来ると編集者のミスと言うよりも、編集者自身が福島の吾妻山に何か思い入れがあるんじゃないかという気がしないでもない。

 
 そして朝刊を読むのが好きで、タバコを吸い、そもそも中国からやってきた中国人と紹介されているのに表紙で何故か日本の学生服を着せられてしまっている主人公を見て学園モノを期待した読者は、ホラーとファンタジー色が強く日本の関東地方を次々移動する本作を読んで、いつ学園パートに移行するのか気が気でなくなるだろう。

 
 そのようなこともあり、編集者とイラストレーターに恵まれなかったなと同情するぐらい、中身は面白いジュブナイルものだった。
 


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