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プロフィール
HN:
栖鄭 椎(すてい しい)
年齢:
33
性別:
非公開
誕生日:
1983/06/25
職業:
契約社員
趣味:
ビルバク
自己紹介:
 24歳、独身。人形のルリと二人暮し。契約社員で素人作家。どうしてもっと人の心を動かすものを俺は書けないんだろう。いつも悩んでいる……ただの筋少ファン。



副管理人 阿井幸作(あい こうさく)

 28歳、独身。北京に在住している、怪談とラヴクラフトが好きな元留学生・現社会人。中国で面白い小説(特に推理と怪奇)がないかと探しているが難航中。

 Mail: yominuku★gmail.com
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このブログは、友達なんかは作らずに変な本ばかり読んでいた二人による文芸的なブログです。      

 軒弦といえば神出鬼没の名探偵・慕容思炫シリーズが有名だが本作では女と見紛うほど美しい美少年・葉泫然が活躍する。いわば軒弦の新しいシリーズなのだが時代が10年以上前の2000年代に設定されているし、ライバルのような天才犯罪者も1話しか登場しなくて消化不良だし、何故今更こんな本が出版されたのかわからず、謎が拭いきれない一冊だった。



 収録作品は三つ。孤島を舞台にした『天極島謀殺檔案』、山荘の復讐劇『李氏山荘謀殺檔案』、学生恋愛から発展する殺人事件『QQ亡霊謀殺檔案』、そのどれにも密室殺人が使われている。よくもまぁ密室殺人の手法がポンポン浮かぶなと感心するが、あまりに多くの作品を書いているため粗製濫造の感が否めない。

 特に3つ目の『QQ亡霊謀殺檔案』にはその感覚を強く抱いた。これは、自殺した彼女と毎晩QQ(中国版メッセンジャー)でチャットをするというホラー小説的な切り口から人間関係が極端に発展して密室殺人事件に至るという話なのだが、この死んだ彼女からQQで連絡が来るという点はまさに20166月に出版された『神探慕容思炫・審判』にある『QQ神秘事件』とそっくりなのである。その理由こそ異なっていたが短期間で同じネタを使った作品を読んでしまうと読者としては芸がないなと思ってしまうのも無理はない。ただし軒弦は多作過ぎて、例え新刊であってもその収録作品が以前書いてようやく単行本として出たというパターンが多いから、二作の執筆時期は離れているかもしれない。

 注:作者軒弦によると本書に収録されている作品はみな2004年に書いたものらしい。中国の本って初出書いてないからなぁ…



 また、本作の時代設定も何故わざわざ過去に設定しているのか意味がわからなかった。各話の冒頭にわざわざ「200229日」など日時を書いているのだからきっと意味があるのだろうが、それは本書を読む限りわからない。誰もが少女と見間違える美少年・葉泫然も2016年現在は30歳過ぎの中年という事実をもって作者は何を伝えたいのだろうか。


 あと、軒弦は慕容思炫シリーズの中で怪盗やら天才犯罪者やら多くのキャラを生み出し、本作でも遊一悔という『金田一少年の事件簿』で言う高遠遙一キャラが出てくるのだが今現在どういう状況になっているのかわからないので、一度年表及び人物相関図を作ってまとめてほしい。

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 大学入試を控えた高校の教員寮で教師が殺されるという学園モノなのかよくわからないジャンルのミステリ。表紙にデカデカと描かれている『2』はタイトルに含まないらしい。


 


高校の教員寮で物理教師の徐玉階が首無し死体で発見される。この高校の卒業生である若手刑事の寧微君は恩師である魏書平にかけられた嫌疑を晴らそうと躍起になるが、現場主義のロートル刑事・胡宏斌に水を差されたり窘められたりで活躍できない。事件当時の夜に校内にいたミステリ小説好きの女子生徒・易雨晨、捜査に首を突っ込んでくる探偵ぶった男子生徒の林昱が事件にどう絡んでくるのか。それは徐玉階の本性を知ったあとに明らかになってくる。





 中国ミステリでもキザで自信満々な探偵と常識人の助手、突飛な行動を取る探偵とそれに振り回される刑事など探偵が優勢の組み合わせはいくらでもあるが、経験豊富で頑固な老刑事と若さとやる気と知識だけはあるミステリ小説好きの若手刑事という本書のような組み合わせは新鮮だった。

 
 読み始めたときは胡宏斌がずいぶん横暴な中年に見えたが、読み進めていくと上司に減らず口を叩き、上司をおじさん(大叔)と呼び、捜査に私情を挟み若さ故の暴走をする寧微君の方がよっぽど厄介者に思えてくる。そして同類であるミステリ小説好きの林昱を寧微君が煙たがり、高校生の名推理を前にして自身が胡宏斌から言われた「現実と小説は違う」というセリフを吐くのは本当に面白い。


 途中で林昱が寧微君に犯人が首無し死体を作った謎に対し8つの説を唱えるが、これが読者に事件を整理させる良い中間地点になっている。何故犯人は調べたらすぐに身元がわかる状態の死体からわざわざ頭を持ち去ったのかという謎に対し、本当の死亡理由を隠すためだという林昱の答えは納得できるものだが、本書を最後まで読むとそれが単なる読者サービスではないことに気付かされる。


 タイトルに『悪意』とあるように本書には徐玉階を始めとする人間の生理的嫌悪感に基づく気持ち悪さが描かれている。特に作者はきっと意図していないだろうが易雨晨の父親なんかには山本英夫の『新・のぞき屋』の父親を思わせる独善的なおぞましさすら覚えた。



 作者の胡正欣は昔は「Kenshin」や「寧夜」というペンネームで活動していたそうだが、昔作品を読んだことがあるだろうか。本書が初の長編作品だと聞くが、初めてでトリックも人間模様もこれほどのものを書いているのであれば次作もきっと面白いだろう。できれば胡宏斌と寧微君のような一筋縄ではいかないコンビを再び出して欲しい。



 帯に島田荘司監修の『本格ミステリー・ワールド』における中国大陸唯一の寄稿者というキャッチコピーがついていて島田荘司のネームバリューの強さを実感させられる。しかし、『中国大陸在住』という括りなら自分もその寄稿者であるということを主張したい。

 あと、現物が手元にないのだが『本格ミステリー・ワールド2010』には中国の書評家・天蠍小猪が『中国ミステリー事情』を書いたとある。(参考:https://book.douban.com/subject/4143147/)。ちなみに河狸は2014年版に寄稿している。

 



 正義感は強いがそれ以外は普通の女性である高梅儀は暴漢に襲われているところを何者かに助けられるという不運な事態が続いた。子どもの頃に死んだ『姉』が助けてくれたことをぼんやりと覚えていたが、ポケットに血塗れのハサミが入っていたことで映画『ファイトクラブ』のように自分の中に『姉』というもう一つの人格がいて、それが暴漢を退治したのではと疑う。そして突如部屋に現れた『姉』は正真正銘子供の頃に死に別れた姉である高梅思の成長した姿だった。その『姉』から自分が多重人格者であることを告げられた高梅儀は『姉』の師事のもと、アメコミヒーローのバットマン(蝙蝠侠)やスパイダーマン(蜘蛛侠)のように剪刀侠として街を守ることを定められる。





 剪刀侠は英語にすると「シザーマン」となり、日本語にすると「ハサミ男」となるわけだがどっちにしろ既存の有名作品のイメージが強いのでここでは原文の剪刀侠のままとする。


 あらすじで「映画ファイトクラブのように」と書いてしまっているがこれは本作でも平然とネタバレしているので許して欲しい。でも主人公の高梅儀は推理小説が好きという設定だと言うのに、二重人格で剪刀侠という名前を与えられた身でありながら殊能将之の『ハサミ男』(中国語タイトル:剪刀男)について作品内で全く言及していないのは不思議だ。作者なりに推理小説家としての仁義を通しているというわけだろうか。


 本書は8作の短編からなる。剪刀侠は日夜街の悪人を退治するわけだが第1話で連続殺人鬼を捕まえて、『姉』の正体が判明してからは世間に認知された剪刀侠が連続殺人事件を解決するという探偵的な役割を負い、警察からも友好的に接されて共闘関係を持つ。


 「犯人が実は××でした」という叙述トリックが2つもあるのがちょっとくどかったが、それより『姉』の正体を第1話でバラすのがとても勿体無いと思った。しかし、もともとは雑誌『推理世界』で掲載されていた作品であるので読者にインパクトを与えるために仕方のない展開だったのだろう。最初から書き下ろしの長編だったらまた違っていたのかもしれないが、『姉』の正体を見るにかなり無理な構成になりそうだ。


 いろいろ突っ込みたいところがあったが世間に知られる正義の味方であり、その功績によって警察からも活動が黙認されるという新しい探偵像を生み出したところは評価したい。


 だが日経ビジネス1028日分の『中国・キタムラリポート』に取り上げられた横暴な権力者を殺害した男の死刑は止められるかを読むとヒーローが倒すべき相手は街ではなく別の場所にいて、公的機関に認められたヒーローなど単なる警察の犬だなと虚しい気持ちに陥ってしまった。

 先日レビューした『H.A.虚擬戦争』と同じく第4KAVALAN島田荘司推理小説賞の最終候補作の一つ。アメリカ、ロシア、日本など様々な国籍の人間が混じる宇宙ステーションを舞台にした密室殺人事件の謎を宇宙と地球の二つの場面で追うという星野之宣の漫画のようなミステリだ。




 2010年の宇宙ステーションにてロシア人のイゴールは天使のように光り輝く宇宙人のような何かを目撃する。しかし更に驚くべきことに船内では行方不明になっていたアメリカ人のブライアンの他殺体が見つかり、イゴールは死体とともに地球へ帰ろうとするがその船は爆発し、宇宙人も殺人事件の謎も有耶無耶になる。
 それから7年後の2017年にイゴールの息子ビクターは父親が死の間際に遺した暗号を解明するために当時の搭乗者などの関係者から情報を集めていた。そして翌年の2018年、新たに宇宙ステーションに向かった宇宙船の中には当時の事件の謎も興味を持つカナダのファーストネーションズであり『微笑薬師』のあだ名を持つアハヌが乗っていた。だが船内では8年前の密室事件が再現されてしまう。




 地球ではビクターが足を使った情報集めに励み、宇宙ではアハヌが事件を解決する役割を担う。船内では8年前と同一の事件が発生するものの、現場(宇宙)にいる面々は2010年のときとは異なるので犯人の正体には非常に興味が惹かれ、宇宙といういわば究極の密室を前にした読者は犯人はまさか船内に隠れていたのか?とか宇宙人の仕業か?という期待すら抱いてしまう。


 どうやって殺したのか?が最大の焦点である本作は宇宙開発にはつきものである宇宙競争と国家の陰謀が原因となっていて、そのあたりも含めてだいぶ読みやすい作品なのですが、作品の最大の盛り上がりがトリックが明らかになるところでも犯人が明らかになるところでもなく、事件の背後に陰謀が隠されていたことなのはエンターテインメントとしては申し分ないが本格ミステリとしては力の入れるところが違うかもしれない。



 先日1019日に有人宇宙船『神舟11号』が打ち上げられ、宇宙実験室『天宮2号』とのドッキングに成功したというニュースが流れたが、今作には中国の影が全く見当たらない。登場する国もアメリカ、ロシア、日本、そしてカナダ(作者の提子墨はカナダの華僑である)などで中国も中国人も物語に加わらない。本書が発表された2015年は言うに及ばず中国の宇宙進出は10年以上前から有名であるのに中国を登場させず、アメリカとロシアという典型的な登場人物を中心として物語を進め、ファーストネーションズであり宇宙飛行士ではない単なる富豪の観光客にすぎないカナダ人が探偵役として陰謀を暴くという展開にはカナダ国籍の華僑である作者の中国から一歩引いた冷静な態度が見える。


 これは私の100%の妄想なのだがもし探偵役のアハヌが富豪の中国人だとしたら犯人に対する探偵の言説がアメリカの宇宙進出に対する中国の警告を描き、せっかくの作品に不純物が混じることになるから中国要素を排除したのかと思ってしまった。こんな見当ハズレの邪推は作者にとって迷惑以外の何物でもないだろう。

 島田荘司推理小説賞常連入選作家・王稼駿による『第4KAVALAN 島田荘司推理小説賞』の入選作。ようするに今回も駄目だったよということだが、4回やって一度も最終候補作に選ばれていないの原因は単なる実力不足なのだろうか。


 


 他人の大脳の中に侵入して、現実と変わらない大脳の中の世界を動き、被験者から情報を得ることができる『阿爾法的世界(アルファの世界)』というバーチャル空間がある近未来(?)で、科学者である童平は連続少年失踪事件の重要参考人・莫多の大脳に潜入する。
 莫多の大脳の中で少年の姿となり犯人に近づきピンチを迎える童平。アルファの世界で致命傷を負うことは現実世界での死を意味するが、実験は正規の手続きを経ずに中断される。命の危険に晒された童平は実験に協力している同僚に疑惑の目を向けるが、その同僚からは童平の妻こそ怪しい点があると言われて揉めている帰り道に人を跳ねる。そして口封じに同僚を殺した彼は同僚の大脳の中に潜入し、ついにアルファの世界の中でも殺人に手を染めることになる





 岡嶋二人の『クラインの壺』のように現実と仮想の境目が徐々にわからなくなってくるという定番の話ではあるが、本作の物語は展開が急で交通事故で人を跳ねたと思ったら今度は同僚を殺し、ついに妻に手をかけたら部屋に全くの新キャラである泥棒が侵入してくるというメチャクチャぶりである。

 王稼駿は腹に一物隠している人間同士の関係を描くことが多いが、ひとつの物語の中に一見全く関係のなさそうな話を挿入してくるのも作風のひとつである。作品によっては小さな話と本筋の繋ぎ方が牽強付会に見えるものもあるが、本作ではその驚かされこそすれ、意味不明な繋げ方という印象は受けなかった。




 さて、『第4KAVALAN 島田荘司推理小説賞』の受賞作品が発表されて、中国大陸では第1回以来となる受賞作品及び入賞作品の出版が決行された。先日レビューした『H.A.虚擬戦争』と同じく最終候補作の『熱層之密室』が百花文芸出版社から出ており、2冊とも後書きには島田荘司によるコメント及び落選の理由が書かれている。
 島田荘司が目を通すのは最終候補3作のみであるので本作が何故落ちたのか、その理由は多分どこにも出ていない。まぁ作者の元には審査員のコメントが届いているのかもしれないが

 ここらへんが明らかになれば中国大陸における本格ミステリ研究が進みそうなのだが


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