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プロフィール
HN:
栖鄭 椎(すてい しい)
年齢:
40
性別:
非公開
誕生日:
1983/06/25
職業:
契約社員
趣味:
ビルバク
自己紹介:
 24歳、独身。人形のルリと二人暮し。契約社員で素人作家。どうしてもっと人の心を動かすものを俺は書けないんだろう。いつも悩んでいる……ただの筋少ファン。



副管理人 阿井幸作(あい こうさく)

 28歳、独身。北京に在住している、怪談とラヴクラフトが好きな元留学生・現社会人。中国で面白い小説(特に推理と怪奇)がないかと探しているが難航中。

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本書は左灯という1990年代生まれの女性が、うつ病になって20179月に精神病院に入院してから経験したあまりに個人的な出来事とあけすけな気持ちを書いた入院日記だ。もともとはリアルタイムでネットにアップしていたブログであり、ブログと本書を読み比べると収録されていない内容もある。本書に彼女の具体的な年齢は書かれていないが、2019年で27歳だったそうだから、入院時は25歳か。


 


自分は中国どころか日本の精神病院のことも知らないので日中の事情を比較することもできないが、それにしたって本書で記されている中国の精神病院内の様子には色々とカルチャーショックを受けた。スマホ持ち込み可(ただし充電は看護師の許可が必要)という自由があるのも驚いたが、患者の家族も付添で入院可能という体制には、よくトラブルが起きないなと感心した。また患者同士の距離感がとても近く、おしゃべりなオバサンとの会話に付き合うという日常の延長のようなアクシデントもあれば、娯楽に飢えている患者たちに恋愛模様を野次馬されるという中学校のような恥ずかしい場面もある。しかもそれは著者と他の入院患者の家族なのだ。他にも、入院した精神病院の治療法が書かれているが、漢方薬入りの足湯や耳つぼといった効果不明な中国らしいものから、磁気、ダンス、そして電気ショックという直接的なものまで揃っている。特に電気ショック(日本では電気けいれん療法というらしいが)は日にちや家族まで忘れてしまうというデメリットがあるが、嫌なことが忘れられるため彼女はこれにハマってしまったのだという。


 


突然精神病院に入院し、手元にスマホがあった左灯には、精神病に対する偏見をなくす、精神病院の問題点を改善するなどの意識はなく、入院中あった出来事を赤裸々に書いていくだけだ。患者仲間との日常会話や、患者の同伴家族男性との恋、隠れてタバコを吸ったことなど、入院しているということを除けば、比較的自由な院内環境が彼女の文章から見えてくる。だがそもそも入院したくてしているわけではないので、文章の端々からは不安や怒り、そして誰に対しても自分の意見を押し通そうとする強いエゴが感じられる。



抗うつ剤が1錠50元(約800円)と高額で、毎回人民元を飲んでいるようだという感想からも分かる通り、彼女が正直すぎる日常を書いている。日記形式なので自分本位なのは当然なのかもしれないが、医者の悪口を書くばかりか、自分の家庭環境の問題も包み隠さず公開しているのは心配してしまう。


 


彼女の両親は娘のことは大切なようだが、精神病に対する理解や知識は、彼女の目から通してみると乏しい。父親は入院に同伴するほど優しいが正直言って過保護であり、娘を子ども扱いしている。母親の方は娘の病気を真剣に考えていないようで、退院後まだ不安定な娘を連れて正月の親戚参りをする。しかもその理由が、顔を見せないと何かあったと疑われるからだという。そしてこの家族最大の問題は養子で、彼女にとっては義理の兄に当たるこの男が前科持ちの正真正銘のクズ。彼女は縁を切りたいと思っているのに、この兄はそれに応じず、父親も息子をかばうという、彼女にとっては四面楚歌の状態だ。退院後の彼女は無職なので実家に戻っているのだが、家に自分の味方をしてくれない家族がいるのなら家を出たほうが良いと思う。とは言え彼女のうつ病は仕事が原因なので、家族の問題は関係ないかもしれないが。


 


本書を出版した2019年時点で彼女はまだ完治していないが、自分の病ときちんと向き合っているようで、その方法も個性的だ。自身のうつ病に「マリオ」という名前をつけ、そうすることで病と仲良くなろうとしている。だが表紙の黒い犬こそマリオであり、裏表紙にはその首を引っ張る真っ黒で小さな女性が描かれており、まだまだ飼いならせていないどころか、うつ病をますます大きくさせてしまっているように見える。



自分のことだけではなく家族についてまで遠慮なく書く彼女の姿勢に思わず永田ガビを連想してしまい、左灯の今後が心配になった。彼女がもし2作目、3作目を出すことになったら、それは歓迎すべきだろうか。

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