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栖鄭 椎(すてい しい)
年齢:
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性別:
非公開
誕生日:
1983/06/25
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契約社員
趣味:
ビルバク
自己紹介:
 24歳、独身。人形のルリと二人暮し。契約社員で素人作家。どうしてもっと人の心を動かすものを俺は書けないんだろう。いつも悩んでいる……ただの筋少ファン。



副管理人 阿井幸作(あい こうさく)

 28歳、独身。北京に在住している、怪談とラヴクラフトが好きな元留学生・現社会人。中国で面白い小説(特に推理と怪奇)がないかと探しているが難航中。

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出版社からもらったのに積ん読にしていた本。シリーズ物で、20204月に第1巻が出たばかりなのに、もう4巻まで出ているという。どういうペースなんだ。


 





中国富豪ランキングに入る大企業創業者の一人息子・侯大利は典型的な「富二代」(金持ちの子ども。多くは蔑称)だったが、幼馴染の少女・楊帆の溺死によって人生が一変する。彼女の死が事故だと信じない彼は、真相を明らかにするために、会社を継ぐのではなく刑事になることを決意。人が変わったように勉強に打ち込み、優秀な成績で大学を卒業して地元に刑事として配属され、研修期間中にもメキメキと頭角を現す。そして彼は、今まで市内で発生し未解決のままの殺人事件を再捜査する特別捜査チームに配属されることになる。





 


 


金持ち、それも並大抵の金持ちではない国内有数の大企業の一人息子が刑事になるという非現実的な展開と設定に、『富豪刑事』を思い出した。現に最初の楊帆捜索で侯大利は、金に糸目をつけずに人を雇って川さらいをさせ、富豪刑事的な側面を見せるのだが、予想に反して本書で描かれる侯大利の姿は非常に堅物かつ理想的な刑事で、悪名高い富二代らしいところなど欠片も見当たらない。だが悪く言えば没個性的で、どうしてエンターテイメント路線に行かなかったのか読みながら不満だった。


しかし徐々に、これは侯大利が幼馴染のかたきを討つ復讐譚であるとともに、一人前の刑事になって組織の仲間や家族から信頼を得る物語であるということが分かる。実際、侯大利の境遇はやや矛盾しており、刑事として真剣に働く一方で、同僚や上司からいつでも企業の跡継ぎになれる腰掛け刑事と見られており、その証拠のように父親からもらった数十万円の腕時計をしたり家族が所有する別荘に泊まったり、「富二代」と侮られても仕方がない。だから後半、父親から「刑事辞めないと絶縁」と暗に迫られた時の素直な告白によって、侯大利が一気に良いやつに見えてきた。


 


 


本書の要所は楊帆溺死の真相を明らかにすることにあるのだが、これには政治的な壁が存在する。まず、上からの命令で、市では殺人事件をできるだけ発生させず、発生したなら必ず解決するという方針があるため、数年前に事件として処理した案件を殺人事件として再捜査することができない。だから侯大利が事件に関わることは不可能なのだ。


 


しかし政治的要素が理由で侯大利に追い風が吹く。十数年前に市内で娘を殺された同市出身の大富豪が、市の開発と引き換えにその事件の犯人逮捕を要求したのだ。その開発では市に数百億元の融資が入り、数千人の雇用問題を解決できることになるので、市公安は絶対に解決させなければならなくなった。だが開発を誘致するためにその事件のみ再捜査するというのは世間から反発を食らうので、これまで迷宮入りだった他4件の事件を全て解決するという名目で特別捜査チームをつくる。厄介なのが、事故として処理されている楊帆溺死はその5件に含まれていないことだ。だから侯大利も必死で、その5件と楊帆溺死に関連性を見つけようとしたり、再捜査のために頑張りが認められるようにますます働いたりしなければならない。


組織を動かすのは一人の刑事の熱意や正義感、遺族の嘆きではなく、上層部の駆け引きというのは非常に生々しい。そしてこれは読者に、企業家となった侯大利が公安に楊帆溺死事件の再捜査の圧力をかけるという、「if」の未来を想像させる。


 


実は本書の時間設定は現在より10年以上前で、楊帆の溺死が起きたのは2001年、侯大利が刑事になったのは2008年だ。当然、シリーズ物の1巻で楊帆溺死事件が明らかになることはなく、これから少なくとも4巻までは真相が闇に包まれたままなのだろうが、作中では時間がきちんと進んでおり、4巻では2001年からすでに16年が経過しているらしい。侯大利も「富二代」という肩書が似合わないベテラン刑事になっているだろう。


 


リアルな捜査を追求する作者だから、何も物証がない未解決事件を簡単に解決させないのだろうが、たかだか少女一人の殺人事件で何巻も引っ張るのかと疑問に思う。途中で変な秘密組織とかシリアルキラーとかが出ないことを祈る。


 

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