(4月30日のCP20の様子)
COMICUP(略称CP)とは毎年夏と冬の2回にわたって上海で開催される同人誌即売会である。今年で10年目を数える歴史あるイベントと言えるが、私は今年までこのイベントの存在すら全く知らなかった。
公式?サイト:http://www.allcpp.cn/allcpp/event/event.do?event=220
北京在住の私にとって中国で開催されるアニメ・漫画関係のイベントとは日本のコミックマーケットのような内容を意味しない。大抵のイベントがコスプレイベントであり、ステージでレイヤーが踊り、歌い、演劇をし、販売ブースでは海賊版を主とする様々なアニメグッズが売られている。そこには同人誌という創作物は存在しない。
なので、私は中国で同人誌はもう買えないものだと思い込んでいた。「もう」と言うには訳があり、私は10年ほど前の2007年か08年に留学先の中国人民大学の学生サークルが校内で開催した小さなイベントで東方のメーサク同人誌を購入したことがある。それが健全な内容であったことは特筆する必要もないだろう。
また、今年の5月21日には北京で二次創作物イベントが開かれる。だから、私の知らないところでも同人誌即売会が北京で行われていたのだろうが、北京の大型コスプレイベントである『I DO』や『COSPACE』や『MYC』などでは同人誌は販売されていないので、私がそう思い込むのも仕方ないだろう。
しかし、同人誌文化は魔都上海に根付いていたのである。そこで私は、サークルを運営しているわけでも、取材を命じられたわけでも、他に上海に用事があるわけでもなく、ただ中国の同人誌が欲しいという理由だけで、4月29日から5月1日のメーデー三連休を利用して上海へ行った。
CPのチケットは一般チケットとVIPチケットに分かれ、それぞれに電子チケットがあったが私は2日間つづりの一般チケットを予約購入した。4月30日と5月1日の2日分で80元だ。VIPチケットの特典は入場時刻の繰り上げ、これだけである。CPは10時開催なのだが、VIPチケット購入者はそれより30分前に入り、人気のサークルにいち早く行き、望みの品を購入することができる。
しかし、一般チケット購入者が入場すればもうVIPの特典はなくなる。だから遊園地のVIPチケットみたいに行列を無視できるというわけではないので、その繰り上げ30分の前にVIPチケットを購入するかどうかは、自分がどのジャンルのどのサークルを目当てにしているのかによる。私もお目当てのサークルはあったが、中国で人気の『陰陽師』とか新作アニメには興味なかったので、VIPチケットの購入は不要と判断した。
4月30日当日、私は大きなリュックを背負って上海の上海新国際博覧センターへ向かった。開場時刻は10時だったが早く着いた方が会場の外で並ぶ必要もないだろうと考えて早めに出たのだがこれが全く甘い見通しであったことをすぐに教えられる。
なんだかんだあって9時頃に会場に着いたのだが、地下鉄駅から続く人の流れの大きさに「アレ?」と思いながらすでにバッチリコスプレしている彼らと共に進んでいくと、当日券売り場に長蛇の列ができているのに面食らう。
(写真左の列が当日券を求める人々。チケット所持者は右側を歩いている)
前日、CP公式サイトの掲示板にチケット1枚100元で買う、とか、VIPなら200元で売るみたいな転売発言が多く書き込まれていたが、上海の炎天下に並ぶ手間を考えたら、多少高くてもチケットを事前購入した方がたしかに良い。
しかし、チケットを持っている私も行列に苦しめられた。入口前にも3列に分かれた行列ができていたのである。日差しが厳しく、傘を用意している参加者を羨ましく思った。みんなと並んでいると周囲の声が耳に入ってくる。私の隣りにいた女の子グループは「私はこことこことここ行くから、そっちは頼むね」みたいな役割を確認していた。また、会場時刻の変更が噂され「VIPは8時半にはもう入っている。一般チケットは9時半には入れる」という話が飛び交っていた。
(一般参加者ゲートの入口前)
しかしその噂は真実であり、9時半に列が動いた。館内に入ってもまず荷物検査があり、それから館内を3分ほど歩き、ようやくチケット確認所へ着く。ここで面白いことが起きていた。チケット確認所は実体チケット(要するに実際持っている紙のチケット)とよくわからない種類のチケットと電子チケットのだいたい3つに分かれていたのだが、電子チケット購入者が多いのか、それとも何か不便が起きているのか、電子チケットに行列ができているのだ。
(手前が電子チケットの列)
実体チケットを持つ私は並ぶことなく入場することができた。電子チケットとは並ぶ手間とかチケットを切る手間を省く便利な物だと思っていたのだが、電子チケットに速さを求めるのがおかしく、送料不要でスマホに何かが起きない限り絶対持ち忘れることがないという利点しかないのかもしれない。
何はともあれ、私は10時ぐらいに会場に入ることができた。
次回の同人誌エリア感想に続く