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栖鄭 椎(すてい しい)
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非公開
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1983/06/25
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自己紹介:
 24歳、独身。人形のルリと二人暮し。契約社員で素人作家。どうしてもっと人の心を動かすものを俺は書けないんだろう。いつも悩んでいる……ただの筋少ファン。



副管理人 阿井幸作(あい こうさく)

 28歳、独身。北京に在住している、怪談とラヴクラフトが好きな元留学生・現社会人。中国で面白い小説(特に推理と怪奇)がないかと探しているが難航中。

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4151800 中国伝媒大学の教室

在十字路口的国産推理

(十字路に立つ中国ミステリ)

 

語り手:ミステリ小説家・呼延雲

 

 

陸秋槎のトークショーの翌日にミステリ小説家の呼延雲のトークショーが中国伝媒大学ミステリ研究会の主催で行われました。残念ながら来場者は30人程度でしたが、ミス研主催ということで伝媒大学の他に多くのミス研メンバーが参加していたようでトークショー後の質疑応答タイムでは10人以上の学生が呼延雲に質問をぶつけていました。

 

実は前日の陸秋槎トークショーに呼延雲が来ていました。私も、明日お邪魔させていただくので挨拶をしたところ、呼延雲も私のことを覚えていてくれて「明日のトークショーは『敏感』なことを話すぜ!」と言ってくれました。

『敏感』とは政治的にデリケートな内容を指す中国語です。以前、小説で警察が関与する臓器売買事件を書いて上から注意された呼延雲ならではのセールストークです。

 

しかし今回聞いてみると、その内容は私にとって『敏感』というよりも『深刻』で、中国ミステリを読み続ける者としていろいろなことを考えさせられました。

 

陸秋槎呼延雲という順番でトークを聞けて非常に良かったと思います。

陸秋槎がミステリマニアから小説家になったという実体験をもとに、これから小説家になろうとしている若者を鼓舞していたのに対し、呼延雲は商業を重視する小説家としてデビューしたあとの困難を現在の中国ミステリ業界全体の苦境と合わせて話してくれました。

 

 

 

 

呼延雲はまず2016年度に中国で出版された本格ミステリが15作品以下というデータを示し、更にそれらの発行部数が少ないということを指摘しました。(これはあくまでも呼延雲独自の統計である)


 それから
2000年から2017年までを一つの中国ミステリ史と見て、初期の作家に水天一色や言桄、午曄、普璞とかの名前を挙げ、中期の流行期の作家に周浩暉や紫金陳らの名前を挙げました。

 

中国ミステリを読んだことのある人ならわかりますが、呼延雲が挙げた初期と中期の作家に関連性はありません。初期は中国ミステリインターネットサイト『推理之門』、または中国ミステリ専門誌『歳月推理』出身の作家でありますが、中期でメジャーになったのは初期に活躍したのとは異なる作家であり、彼らは天涯社区などに作品を投稿して頭角を現しました。

 そして、彼ら中期の作家は本土化(中国に適した)した作品を書いたため、一般の読者から受け入れられたということであり、周浩暉に至っては『中国の東野圭吾』というベストセラー作家の称号を得ました。

 

 

しかし、果たして周浩暉ら「売れている」作家は本当に売れているミステリ作家なのでしょうか。呼延雲は中国SF小説の超有名作家・劉慈欣(今年映画にもなる『三体』の作者)の名前を出し、「中国ミステリには劉慈欣はいるのか?」と問いかけます。

 

しかし中国SFも決して順風満帆ではないと呼延雲は指摘し、「果たして中国SF業界は盛り上がっているのか?」と疑問を提示し、中国SFは劉慈欣一人勝ちの状態で他の作家や業界全体はそれほどメジャーにはなっていないと踏み込んだ発言をします。

 

私もこの意見には共感できます。確かに中国SF関係の授賞式の規模や賞金額の大きさに感心させられることはありましたが、じゃあホントに売れているのかと考えた時、その人気を反映するような状況を見たことがないという事実に思い至ります。もちろん、中国産SFはたくさん出版されていて、郝景芳の『折りたたみ北京』は2016年度第74回ヒューゴー賞短編賞を受賞しました。

 

 

終盤、呼延雲は小説を書く際に注意している4つの点を上げました。

 

1.動きのあるストーリー
 2.斬新なネタ
 3.古代の要素を取り入れる
 4.ジャンルはあっても形はない

 

上記の点が反映されているのが『黄帝的呪語』や『烏盆記』です。現代を舞台にしていながらも古代中国の要素を取り入れて、売れるように工夫をしていることがわかります。

 

 

そして、中国ミステリ業界の現状を以下のようにまとめました。

 

作品が『本格』的であるほど、成功する難しさは増す

作品が『本土』(中国)的であるほど、成功確率は高くなる

大衆は欧米ミステリを欲し、一部のマニアは日本ミステリを欲する

 

 

 

呼延雲の意見は、現代の中国では日本の本格や新本格のようなトリック重視の作品は商業向きではないということで、売れたいのであればサスペンスやストーリー重視で、中国要素を入れた欧米ミステリ的な小説を書け、ということです。

 

 

この主張自体、中国ミステリでは全く新しいものではありません。以前から中国ミステリの『本土化』(中国化)は叫ばれていましたし、だから作家はもっと知識を取り入れなければいけないと言われていました。しかし、商業的な立場から日本ミステリ風の中国ミステリは中国では売れないと主張しているのは呼延雲ぐらいじゃないでしょうか。

 

 

トークショーの最後に呼延雲は『中国ミステリの黄金時代は始まっている最中なのか?それともすでに過ぎてしまったのか?』と問いかけました。

 

この問いは中国ミステリ作者と読者にとって切実です。今後、新しい作品が生まれたとしても、一部で受けただけで終わってしまえば作家は生活が続けられません。

以前、もと新星出版社編集者の褚盟は「中国ミステリは欧米や日本と比べて遅れており、大成するまでまだ30年ぐらい時間がかかる」というようなことを言っていました。しかし呼延雲の問いかけによって、30年という時間も希望に過ぎず、そもそもすでに終わっているという可能性もあり、更に暗い未来が見えてきました。

 

 

呼延雲は中国ミステリを商業的に成功させる方法を語ってくれましたが、本格ミステリを中国で売るためにどうすれば良いのかという問いに対して答えを述べませんでした。ただ、トークで呼延雲が「今の中国ミステリの状況でまだ『国産ミステリを読んだことがない』と言う読者はかなり偏見を持っている」と指摘した通り、作家がより良い作品を書くということはもちろんですが、それによって読者や出版社の意識を変えていき、「国産ミステリなんか読んだことない」という中国人読者の『中国ミステリ=つまらない』という偏見を減らしていくしかないのでしょう。

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