歳月・推理8月号
・目次・
【短編】
U的悲劇/ 華夢陽
(Uの悲劇)
【第1回華文推理グランプリ 10号入選作】
塞班悲歌 /鄭蕓
(サイパン哀歌)
意外/ 黎家小妹
(意外)
越過毀滅之地/ Spring
(壊滅した地を越えて)
【第1回華文推理グランプリ 11号入選作】
灰姑娘/ 反重力
(シンデレラ)
空房間/ ジョン・ディクスン・カー
(空部屋)
白色醜聞/ 西村京太郎
(白いスキャンダル)
【推理之窓】
黄金謎題源流篇-卡尓
(黄金時代ミステリの源流-カー)
耆老納税王!西村京太郎!
(老納税王!西村京太郎!)
世界怪奇実話之食女人肉的男人/ 牧逸馬
(世界怪奇実話・切り裂きジャック-女体を料理する男/牧逸馬)
【推理倶楽部】
定時死亡【解答編】
(死亡確定時刻)
互動空間(Mystery Space)
(作家や編集者が紙面を使って世間話をするコーナー)
というわけでにも書いた第2回【島田荘司推理小説賞】の入賞作品が先日発表されました。
最後まで残った3作品は以下の通りです。公式サイトの文章を勝手に翻訳して転載していますが、翻訳の精度については信頼しないでください。
入選した3作品のうち《設計殺人》(台湾人作家・陳嘉振の作品)について審査員の景翔(映画評論家)は、「読み始めるとミステリに符合していたし、特に設計のルールを駆使して小見出しの組み合わせを作っていたことは内容にも呼応していた。細心の注意を払っており十分に堪能できた」と語る。
冷言(台湾人作家)の《反向演化》については審査員全員が面白いという評価で一致。景翔は「テーマを娯楽性も高く、冒険活劇と恋愛とファンタジーが存在していた」とコメント。玉田誠は今のスタイルは冒険小説にミステリ要素を取り入れたもので非常に面白かったと評価。
香港の作家・陳浩基の《遺忘・刑警》は、3名の審査員が1次予選を通過した9作品の中から真っ先に最終候補に取り上げた作品である。
3作品はそれぞれ日本語に翻訳され、『日本ミステリの巨匠』島田荘司により大賞作品が選ばれる。最終候補に残った3作品は台湾と中国で出版され、大賞作品は外国語版となり日本、タイ、イタリア、マレーシアなどで出版されることになる。
4作もエントリーされていた大陸勢が全滅。そして第1回では『氷鏡荘殺人事件』が最終候補作品に選ばれた林斯諺(台湾人作家)も、まさかの2次予選落ちです。
大陸ミステリの夜明けは当分先と言うことなのでしょうか。
入賞作3作品の中から大賞受賞作品が島田荘司の手により選ばれるのは2ヶ月先の9月9日です。
予想を立てるなら、真っ先に入賞が決まった陳浩基の《遺忘・刑警》が本命といったところでしょうか。
考えてもどうすることもできないので、とりあえず運命の日が来るまで黙って正座です。
そしてKINBRICKS NOWに転載してもらったことにより、より多くの方々の眼に触れることとなりました。
普段ならこれで終わってしまうのですが、この記事がTwitter で広がったことにより思いがけない人物の目に留まることになります。以下はKINBRICKS NOWに転載された記事につけられたコメントからの抜粋です。
@michioshusuke 道尾秀介
まったく憶えのない僕のコメントが新刊の装丁に印刷されている…!どうして僕が、見ず知らずの人の出版を大喜びしなきゃならんのだ。すごいなあ中国。なんかもう、カッコいいとさえ思えてしまう。
褚盟さんが本を出版したと聞いて、自分の本が受賞したと知ったときより嬉しくなった。
2011年直木賞受賞者 道尾秀介
これと似たケースをボクは見たことがあります。
それは以前、新星出版社から出た『脳髄地獄』ことドグラマグラを書店で見つけたときのこと。帯文を見るとそこにはなんと宮崎駿の言葉が!
「私にとって日本の芸術品は3つしかない。大阪の太閤の城、黒澤明の羅生門、夢野久作の『ドグラ・マグラ』だ。私の『もののけ姫』と『千と千尋の神隠し』はそれには遠く及ばない」
まさか宮崎駿がこんな発言を残しているなんて。そして夢野久作の愛読者を自称するボクが知らないなんて!
感動と悔しさのあまり、本の購入に踏み切りました。
しっかしその後いくら調べても、肝心のソースが出てきません。
結局この帯文はボクの中で限りなく黒に近い灰色ということで処理することになりました。
誰か真実を教えていただけないでしょうか。
さて、では今回の推薦コメントの真偽はどうでしょうか。
・注意・
該当書籍『謀殺的魅影』は新星出版社の編集者・褚盟氏の手によって書かれた世界ミステリー史ですが、新星出版社から出た書籍ではありません。
蘇州にある古呉軒出版社というところから出ています。
前回の記事では皆様に誤解を与えたかと思います。ご容赦ください。
翻訳ものを数多く取り扱う出版社で、とりわけ推理小説に関しては比類がないほどの量を出している。世界中の名作を時代の新旧関わらず出版し、日本人作家では島田荘司、東野圭吾らビッグネームを、最近では米澤穂信の作品などを世に出している。
この本の著者褚盟は新星出版社に勤める80後(1980年代生まれ)の編集者だ。
彼がこれまで手掛けた海外ミステリ作品は数え切れない。エラリー・クイーン、ローレンス・ブルック、ヴァン・ダイン、松本清張、島田荘司、東野圭吾、二階堂黎人、麻耶雄嵩らの著作など、彼が扱った小説は100部を超える。
島田荘司の《占星術殺人事件》が中国で正式に翻訳出版されたのも彼の功績である。
本の表紙裏には彼が手掛けた日本人作家たちの推薦文が載っている。
ここにその推薦文を訳したものを拙訳ながら転載したい。
日本語を中国語に訳した文章を再び日本語に戻しているので、発言者の意志を必ずしも完全に再現できてはいないだろうが、雰囲気ぐらいは表せていると思う。
褚盟さんが本を出版したと聞いて、自分の本が受賞したと知ったときよりも嬉しくなった。
2011年直木賞受賞者 道尾秀介
この本からは推理小説に関する豊富な知識を学ぶことができる
西澤保彦
褚盟さんは中国で最高の推理編集者だ。きっと読者に受けるだろう。
二階堂黎人
世界推理文学通史として、この本は前例のないものになるだろう
米澤穂信
褚盟さんは私が出会ったなかで最もマニアックな推理小説編集者だ。
山口雅也
推理小説の読者として褚盟さんの本は是非読んでみたい。
有栖川有栖
さて、日本の著名小説家たちの覚えめでたき褚盟の本はいったいどのような出来に仕上がっているのか。