この画像は『バキ』(作・板垣恵介)というマンガの有名なある1ページです。
最強の格闘家と戦い敗北を知りたがっている右下のコマの死刑囚に、空手家が非情な事実を突き付けるシーンです。
「死んじまったぜ、二人とも」
「オリバは道歩いてたら隕石に当たり」
「ITEッ」
「烈は大地震に巻き込まれ地割れに落ちちまった」
「救命啊」
「不運にも程があるよな・・・・・・」
まぁこれは空手家のブラフなんですけど、当時この漫画を読んだ読者はみんな下のコマの死刑囚みたいな『はっ?何言ってんのこの火傷頭』って面を喰らい、『板垣頭おかしくなったのか?』って思いました。なんだよ、このアメリカンジョークはって。アメリカ人のオリバは隕石に当たったのに「ITE」で済ましているし、中国拳法家 烈海王は「救命啊」(助けての意味)って叫んでるし、嘘にも程があるだろうと。
でもこの『救命啊』ってセリフ、強烈すぎ。
確か、このときの僕はまだ中国語を習い始めてたばかりの浅い時期で、中国へ留学に行くなんてことは頭になかった。だけど教科書や教材の中国映画の中にこの単語が出るんじゃないかって恐怖が常に心の中にあった。
『いまこの言葉を見たら、絶対に吹く』
幸いなことにそういうことはなかったんですが・・・そもそも、『助けてくれ!』なんていう言葉が載ってる実戦的な教科書なんて大学でも採用されないよ。
しかし中国に来てみて、この単語に出くわさないという保証はない。明日もしも大事故や災害が起きたら必ず耳に入る言葉だ。
必死に『救命啊』って叫んでいる中国人を見たら、烈が地割れに飲み込まれている画像を思い出して吹き出してしまうだろう。
『うわっ、本当に言うんだ』って。嬉しくなって笑っちゃうかもしれない。
ギャグマンガのパロディはときとして現実に勝つから面白い。
逆にこういうこともありうる。
アニメ版『ひぐらしのなく頃に』で、学ランでリーゼントで喃語みたいな脅し言葉を吠えているっていういかにも典型な昭和の不良が登場しましたけど、アレで初めて日本の不良を知った外国人はそれが日本の不良の標準だって思ってしまうんじゃないかな。そして、もしも彼らが平成の世の日本に来てこういう不良を見たら、笑わずに当然のものとして受け入れるだろう。
本物を知らずにパロディから知ってしまったら変なものが面白くなって困る。