ネット巡回してたら気になる話が。乱歩の『芋虫』って発行当時は内容が反戦的という理由で伏せ字だらけの掲載になってしまい、その状態のままの小説がずっと出版されていた。しかし最近出た新潮文庫版は伏せ字部分が見事に訂正されて、乱歩が書いたままの文章が読めるらしい。
この『芋虫』をたまたまググったら、大学時代ゼミでこの伏せ字を自分なりに埋めるって言う授業をやったことがあるって日記を見つけた。
こういう授業、ボクもやったことがある。中学時代の国語の授業でのことだ。という話の続きを書けという内容だった。当時のボクは、なんて斬新な授業を考えるんだと先生を尊敬したものだ。一時限丸ごと使って原稿用紙3枚ほど話の続きを書き連ねた。レポートの提出はなかったので授業終わりに友人と見せ合いっこすると、地下組織やスパイが登場する冒険活劇になっていたのにはショックを受けた。
その後大学に進学し、札幌や小樽出身の奴らと話すうちにその授業はなんら特別じゃなく少なくとも全道各地で行われていたことを知る。(出身が違う友人と国語の教科書について喋る事って文系男子なら絶対やったことがあると思う)
芋虫の伏せ字当ては答えがあるし、当時の歴史背景や乱歩の嗜好を推理しながら解いていくとなかなか面白いだろう。
伏せ字と言えば西尾維新の傑作『戯言シリーズ』で、主人公が「××××」と言い放つシーンがあった。4文字なんで直感的に『キチガイ』って言ってるんだなとわかったが、こんなに簡単に連想させられたら伏せ字の意味なんかあるんだろうか疑問に思った。
いくら差別用語と糾弾されて字が消されても、その単語を知る人間がいる限り全てをなくすことは不可能だ。あと、差別用語って実は使って良いのだ。テレビで使っても『ピー音』入るし、出版物ならわざわざ伏せ字にしてくれるし。だからちょっと書き方を工夫すれば何文字黒く塗り潰しても全然痛くない。今の世の中何でも書いて良いんだ。
でも一番は他者の手が入っていないそのままの作品。小説読んでて不意に伏せられていないキチガイなどの単語を見かけるととても胸が熱くなる。