忍者ブログ
カレンダー
06 2025/07 08
S M T W T F S
1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31
フリーエリア
最新コメント
[12/21 LenkaAdhes]
[09/26 MabelKarce]
[09/25 Rositaelego]
[08/19 Jessiehop]
[08/19 HaroldLab]
最新トラックバック
プロフィール
HN:
栖鄭 椎(すてい しい)
年齢:
42
性別:
非公開
誕生日:
1983/06/25
職業:
契約社員
趣味:
ビルバク
自己紹介:
 24歳、独身。人形のルリと二人暮し。契約社員で素人作家。どうしてもっと人の心を動かすものを俺は書けないんだろう。いつも悩んでいる……ただの筋少ファン。



副管理人 阿井幸作(あい こうさく)

 28歳、独身。北京に在住している、怪談とラヴクラフトが好きな元留学生・現社会人。中国で面白い小説(特に推理と怪奇)がないかと探しているが難航中。

 Mail: yominuku★gmail.com
     ★を@に変えてください
バーコード
ブログ内検索
カウンター
アクセス解析
* Admin * Write * Comment *

*忍者ブログ*[PR]
*
このブログは、友達なんかは作らずに変な本ばかり読んでいた二人による文芸的なブログです。      
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

 中国大陸にはミステリファンの集まるウェブサイト推理之門が2000年から今日に至るまで存在している。ファン同士の交流場所であり、創作小説の発表場所も兼ねたこのサイトは古くから中国推理を支え、業界の活性化に一役を買ってきた。
  推理之門公式サイト:http://www.tuili.com/2010/Index.asp
 
 
 ここからは多くの作家が輩出されている。百度百科によると現在も歳月推理で活躍している杜撰午曄、最推理で長編を連載する王稼駿らも推理之門出身であり、数年前に日本で作品が出版された水色一天もそれに当てはまる。
百度百科:推理之門 
 
 
 推理之門は言わば一読者が小説家に変身する中国大陸の推理小説家の登龍門と言っていいだろう。
 
 
 その推理之門で昨年12月から日本、欧米、そして中国の推理小説ベストテンを決める投票が始まった。投票対象作品は2011年1月から12月までに中国大陸で正式に出版された推理小説、またはミステリ関係の研究本である。
 
  推理之門:2011年度推理之門10大推理小説投票イベント
 
 ここに掲載されているリストを見ても対象作品の多さが伺える。単純に数えただけで国内外合わせて500冊以上のミステリ関係の作品が、2011年のうちに出版されたのだ。そのうち中国オリジナルの作品は190に上る。
 
 
 そして2月15日にそれぞれのベストテンが出揃った。その投票結果をここに転載してみたい。
 
 
 2011年度推理小説ベストテン(欧米篇)
 推理之門:2011年度10大推理小説 欧米篇
 
1位.ジョン・ディクスン・カー 《三つの棺》
2位.コナン・ドイル 《ホームズ全集(挿絵版)》
3位.エドワード・D・ホック 《サム・ホーソーンの事件簿 Ⅲ》
4位.アガサ・クリスティ 《ポアロ短篇集》
5位.アンソニー・ホロヴィッツ 《絹の家》
6位.エラリー・クイーン 《ダブル・ダブル》
7位.ジュリアン・シモンズ 《ブラッディ・マーダー 探偵小説から犯罪小説への歴史》
8位.エラリー・クイーン 《犯罪カレンダー》
9位.ポール・アルテ 《おぼろげな映像》
10位.ダシール・ハメット 《マルタの鷹》
 
PR
 
 小説を5冊ほどアマゾンで一気に買った時期があった。しかしアマゾンの評価を参考にして手当たり次第買ったは良いが、実際何が面白いのかわからない。
 そこで生の声を聞いてみたくなり微博でその5冊の画像を添付して『最初に何を読んだら良い?』って構ってちゃんみたいな質問をつぶやいたら、ある作家に『オレの本に決まってるじゃねぇか!!』って売り込みをかけられた。
 

 そんな読者との距離感ゼロな作家の書いた作品が【遺骨档案620】だ。
 
 yigudangan.jpg
 
 この本、表紙に凡一燕南飛の2名の名前があるとおり、2人の作家による共作である。私にリツイートしてくれたのは凡一の方だ。
 
 
 この小説、サスペンス小説としてのつかみが秀逸である。まるで欧米サスペンスドラマの出だし数分間のように続きを気にさせる見せ方を意識している。
 

 名探偵と謳われていた刑事の陸凡一は3年前に取調室で起きた容疑者の怪死のせいで警察を除籍させられ、その出来事がトラウマとなって悪夢を見続けるようになり精神病院に通院していた。しかし最近立て続けに起こる女性の顔を剥ぐという猟奇的な連続殺人事件がきっかけで復職することになる。持ち前の推理能力を発揮して瞬く間に事件の核心へ迫る彼だったが、その捜査チームで女ホームズと呼ばれているもう一人の名探偵欧陽嘉に実は陸凡一こそが真犯人なのではないかという疑いをかけられる。

 疑惑を一笑に付す陸凡一は反撃とばかりに欧陽嘉の怪しい点を挙げて今度は彼女を疑い始める。

 次々明らかになる事実は両者が犯人であるという仮説を補強していくことにしかならない。果たして陸凡一と欧陽嘉のどちらかが犯人なのだろうか。それとも全く別の真犯人がいるのだろうか。
 

 ・たまにしか書かない歳月推理のレビュー・
 

 姉妹誌の推理世界と一緒に毎月購入してひと通り目を通してはいるんだけど、短編の悲しさかめちゃくちゃ面白い!って作品には滅多にお目にかかれないため、わざわざレビューする気にはならないからだ。
 
  suiyuetuili2.jpg

 しかし2月号には久々に御手洗熊猫の作品が掲載されていたし、しかもこの作品が御手洗熊猫最後の純本格ミステリだと言うので、これはもう筆を取らないわけにはいかなかった。
 

 ・藩籬之鐘(垣根の時計)~あらすじ~・
 

 密室の王麻耶が鍵とテープで封じられた二重の密室で殺された。密室には矢の刺さった麻耶の死体の他に、彼が書いた原稿と大小様々な9つの置き時計。『あなた』と呼ばれる主人公は密室の王や関係者を『喚び出して』当時の状況を尋ねる。証言を集めた『あなた』はついに浮浪者じみた名探偵を『召喚』して事件の真相を知ることになる。
 
 
 関係者の証言のみで進む本作は、ガチガチの本格推理小説を書いていた御手洗熊猫の作品では異色の短編だ。
 

 
 偵探(探偵の意味)なんて言葉がタイトルに付いているからと言って一般的な推理小説を期待してはいけない。特に中国においては帯文や表紙の言葉を額面通りに受け取ると痛い目に見る。

 pingguozhentan

 中国アマゾン:苹果偵探社之詭秘案件

 ちなみに本書の表紙裏にはこう書かれている。
 
 
 1人は元刑事
 もう1人は大企業の董事長
 誰かが言った。彼らは中国のホームズとワトソンだ、と。
 


 出版社は探偵役と助手役がいる作品が全て古典を踏襲していると思わないでいただきたい。
 

 本書は6つの短編から成り立っている。
 
 主人公でワトソン役の李忠は大企業の董事長という大変偉い人物だったが、とある事件で敏腕刑事の林立に助けられてから彼を引き抜き、二人でアップル探偵社という会社を作ってしまう。
 

 1話目の【眩】はそのプロローグとも言うべき物語だ。
 

 ある晩李忠は奇妙な女を見かけた。蠱惑的な魅力を放つ女は高笑いを上げながら病院に入っていく。しかしそこは李忠の重病の父親が入院する病院だった。訝しむ李忠の目の前でその奇妙な女は父親の呼吸器を外し、彼を殺す。更に女は李忠を弄ぶように友人の子供、果ては見ず知らずの妊婦を残酷な手口で殺していく。そして凶行は李忠の妻にも及び…


 悪夢のような惨劇から一転して李忠は病院のベッドにいた。目の前には身に傷一つない妻と刑事の林立がいる。2人から父親が何者かに殺されたことを知らされた李忠はその奇妙な女のことを証言し他にも殺された者がいると訴えるが、父親の事件以外何も起こっていないと言われる。
 夢とも現実ともつかない惨たらしい殺人シーンを立て続けに見せられた挙句、警察に殺人事件の存在を否定された李忠を支える精神は徐々に崩壊していく。
 

 すんでのところで精神病院入りになる李忠が林立の名推理によって助けられる本作は、本書の方向性を読者に指し示す重要な一篇と言えるだろう。まさか李忠が見た惨劇の全ては幻覚剤マネキンによって作られていたとは、普通のミステリを読んでいると思っていた読者への不意打ちとなった。
 
 
 しかし2話目の【韋村怪事】はプロローグ以上の衝撃作だった。
 

 
 15979e5c.jpeg

 中国で最も売れているサスペンス小説家蔡駿が最新作【謀殺似水年華】で社会派サスペンスの分野に挑んだ。『中国社会派懸疑小説開山大作!』(中国社会派サスペンス小説の先駆け的作品!)と帯に書かれた本作で、人気若手作家蔡駿は現代中国の何を描き出したのだろうか。
 
 
 物語は2人の男女を中心に過去と現在を行き来する。
 

 1995年、テレビで『101回目のプロポーズ』が放映されていた頃、上海の街中で小さな売店を営んでいた女性が何者かに絞殺された。現場に残されていた凶器は売店の女主人には似つかわしくないほどの高級なマフラー。そして事件の唯一の目撃者は13歳になる被害者の一人息子秋収だけ。

 刑事田躍進は農村から出てきたばかりで身寄りを失った秋収を不憫に思い、数日の間家に連れて帰る。田の一人娘の小麦が秋収と同い年だから仲良くなってくれると信じていたからだ。
しかし少年も少女も一つ屋根の下にいながらお互いに無関心だった。
 

 2010年の現在、28歳になった小麦に凶報が届く。父親である田が殉職したのだ。そして父の遺品を整理する中で、小麦は父親がこれまでの事件についてまとめたノートを発見する。そこには15年前に起きた秋収の母親の事件も詳細に記録されていた。
 
 しかし小麦は自分が数日間とは言え秋収という少年と一緒に暮らしていたことなど全く覚えていなかった。それどころか子供の時代の思い出が頭からすっぽり抜け落ちている事実に愕然とする。
 
 小麦はその後、親友に紹介してもらった淘宝(中国のネットショッピングサイト)の欲しい物なら何でも手に入る店舗で、藁にもすがるような気持ちで『自分の記憶』を購入する。しかし店から送られてきたものは『101回目のプロポーズ』のDVD。それ自体は大量生産品だったが、まさに少女時代の小麦が見ていたドラマだった。そして小麦はそのドラマを夢中で見ていた少年が同じ家にいたことを思い出す。
 
 小麦が徐々に記憶を思い出していく最中、過去と現在の殺人事件が一つにつながっていく。
 
 
 この物語が『社会派サスペンス』と呼ばれる所以は、現代中国に歴然と存在する身分差別を取り扱っているからだ。
 


Copyright: 栖鄭 椎(すてい しい)。。All Rights Reserved.
Powered by NinjaBlog / Material By 御伽草子 / Template by カキゴオリ☆