少女福爾摩斯1-氷裂紋花瓶殺人事件 著:皇帝陛下的玉米
牧神文化からもらった1冊。10万文字にも満たないのですぐに読める。女の子2人組が活躍するが百合要素はあまりない。
16歳の頃からアイドルとして活動してきた秦慕斯(チン・ムース)は19歳の時に所属していたグループが解散し、ソロ活動を余儀なくされ、引っ越すことになる。引越し先の貝殻街(ベイカー街)221号B棟にある英国風建築物にはすでに夏落(シャー・ルォ)という女の子が住んでいた。慕斯を一目見るなり、彼女の職業から家までどうやって来たのかまで簡単に推理してみせた夏落は探偵業を営んでおり、ペット探しや浮気調査などはしないというスタイル。
ある日、慕斯がレポーターをしているグルメ番組の収録に夏落がゲストとしてやってくる。しかしそのお店で番組プロデューサーが死体となって見つかる。棚の上から落ちた花瓶がぶつかって亡くなった事故かと思われたが、夏落は他殺を主張。警察が止めるのも聞かずに事件の捜査を始める。
別に少女だからと言って警察に事件の介入が許されるわけではなく(むしろ警察に目の敵にされている)、むしろなんの後ろ盾もないので普通の探偵キャラより不利な状況にあるかもしれない。事件の真相の解明が第一だと考える典型的な探偵キャラである夏落より、アイドルとして大成したい慕斯の方がよっぽど一般的だ。ただ、1巻を読んだだけでは従来の探偵・助手コンビの枠を出ない感じなので、今後2人の仲がどう進展するのか見てみたいものだが、百合展開などあり得ないだろうからその辺りは期待するだけ無駄か。
肝心の事件は、犯人の一言によって関係者の視線が誤った方向に誘導されるというトリックで、作中でも言われているが、探偵がいなくても警察の捜査で何とかなっただろうというレベル。だからこそ、本作における探偵の存在意義はなんだろうと考えさせられた。慕斯に対する夏落の自己紹介代わりにも見えるが、ではやはり2人の関係性をもっと掘り下げてほしかった。
前回の『少女偵探事件簿』もそうだったが、果たして19歳を少女と言って良いのか自分には疑問だ。タイトル詐欺じゃないか。しかしこの本、登場人物は19歳だがタイトルに「少女」とあるように対象読者層は多分中高生なんだろう。しかし、今の中国、中高生に殺人事件を捜査させてはいけないのか、本当の「少女探偵」にお目にかかるのは難しい。