『唐人街探案』(Detective Chinatown)は2015年中国で上映されたコメディミステリーです。この2月16日に2が公開されたので、1を見てみることにしました。
抜群の頭脳と推理力を持つが吃音症のせいでうまく喋れない秦風は祖母のすすめで叔父・唐仁のいるタイに旅行へ行く。祖母から唐人街(チャイナタウン)1の名探偵と聞いていたが、探偵とは名ばかりでやっていることは迷い犬猫探しや荷物配達、しかも下品でガサツな性格の唐仁に秦風はタイに来て早々いやけが差す。だが、唐仁が殺人と黄金強盗の容疑者として警察やマフィアに追われ、秦風はなし崩し的に唐仁と共に彼の冤罪を晴らす逃避行に出る。
実はこの映画、最初は全然受け付けなくて全く面白いと思いませんでした。
その原因が唐仁の性格。彼は下品でガサツで、しかも人から好かれるところも見当たらない人間で、形容すれば人から嫌われてばかりの『こち亀』の両さんや『男はつらいよ』の寅さん、みたいな感じでしょうか。
しかし何より私を苛立たせたのは、彼が容疑者として負われている身であるにも関わらず探偵役の秦風に非協力的で、非合理的な行動ばかり取り、自身と秦風を窮地に追いやります。まぁそのあたりはコメディ映画なので上手くやるんですが、もし一般的なミステリー作品ならこういう人間はさっさと捕まるか殺されるかのどちらかですね。
唐仁は推理をほとんど重視せず結果(自分が犯人ではないという証拠)だけを欲しているので、秦風が事件現場に行ったり監視カメラを見たりする行為を無意味と思います。秦風は無理解な唐仁を説得したいのに吃音症が邪魔をして逆に彼に言い負かされます。
この映画では探偵役と助手役(容疑者役)の立場を単純な上下関係として成立させておらず、探偵だから彼の話を聞かなければいけないという態度を必ずしも取りません。
もしホームズがコミュ障だったら?もしワトソンがホームズより口が達者で強気な性格だったら?そのような「If」をコメディ映画の体裁で作ったのが本作です。
ちなみに秦風、推理しているときだけ全くつっかえずにスラスラ喋ります。「コイツ、推理しているときだけ早口になるの気持ち悪いよな…」
コメディ部分は結構ダサいというかベタなのに対し、ミステリー部分は結構しっかりした密室トリックになっていて、ミステリーシーンにコメディ要素は一切ありません。ミステリー部分とコメディ部分で脚本家違うんじゃないでしょうか。
結局、犯人のトリックが明らかになる中盤からコメディもミステリーも楽しめるようになり、見終わった時には早く2が見たいと思うまでになりました。コメディ箇所はコメディ映画として、ミステリー箇所はミステリー映画として切り替えて楽しむのが適切な見方だと思います。ただ、2はミステリー要素が薄いという噂です。
何ていうか、推理と言うのは周囲の理解がないと成立しないのだなぁと悟らせてくれる作品でした。余談ですが本作には歌野晶午と青崎有吾の某作品のネタバレが入っていますので注意。