プレ七夕はとにかく暑い1日だったと記憶してます。
そんな日はみんな外を歩きたくないのか、地下鉄がたいへん混んでいました。いくら東京よりはマシとはいえ北京も首都。乗車率100%を超えているんじゃないかって言う密着ぶりです。
そんな地下鉄に欧米人の一団が入ってきました。ドイツ語っぽい言語を話す、おそらく観光客だろうと思われる一同。混雑する車内を見ても物怖じせずズカズカ入ってくる。そしてカメラを手に取り記念撮影よろしく群衆を背景に写真を撮りまくる。
いやっほー超混んでるぜー。みたいなことを言ってる様子を見て尚更疲れを増す自分。
アンタら元気やね(;´Д`)
そんでそろそろ目的駅が近くなり始めると、またザワザワし始めるご一行。
どうやら彼らもこの次で下りるご様子。地下鉄のスピードが緩やかに落ちてくると一行のリーダー格が突然大声を上げた。
行くぜー5!!!
えっ?(;´Д`)なに?なに??
4
3
2
1
イエ━━━━━(゚∀゚)━━━━━!!!!
(゚∀゚)フーーーッッッ
イ・・・・・・イエー(;´Д`)
猛暑でもあんぐらいのテンションがあればしのげるんだなぁ。
そのあと中国人の友人と会って用事を済ませて、飯に誘われたので一緒にロバ肉を食べに行くことに。中国には『天上に龍の肉あり、地上にロバの肉あり』なんて言葉があるぐらいロバ肉は絶品と評されているので、よっぽど面白い味だろうと思ってたら、それほどでもなく、そしてゲテモノっぽくもない。なんだかちょっと硬いコリコリした歯応えの牛肉みたいで、味付けはちょっとしょっぱく暑い夏には合った。
煮込まれた肉はシシトウと一緒に包丁で叩き切られ、パリパリのパンにホットドッグのように挟む。ロバ肉の脂身は綺麗な黄緑色でちょっと躊躇うかもしれないが、これが龍の肉と比べられる所以なのかとも考えた。
これがボクの25歳のバースデーフード。
そして七夕当日。またしても地下鉄で、ボクの愛読書『推理歳月』今月号を読んでいると隣にいた男が声をかけてきた。
男「それいつ買ったんだ?」
ボクは、ははぁコイツもミステリファンなのかなと勘繰り、ちょっと先輩風を吹かせてやろうと
「中国に来てからずっと買ってるぜ」と豪語。するとその男ニコリと笑って
「オレ、この『推理』の編集」
ん?
えええええええ(°Д°)
そうだ、アンタ見たことあるよ。島田荘司先生インタビューのとき写真に写ってたな!!
と、25歳になって地下鉄で大はしゃぎするボク。
いやぁ講談社に行ったときは疲れたよ。
島田先生に、中国にはまだ本格ミステリがないと言われて(島田先生インタビュー参照)ちょっとやる気になっちゃってよ、今月号の包公特集(包公とは北宋時代に実在した官僚。現代に至るまで名判官として様々な物語に描かれる中国の遠山の金さん的存在)なんか自分で現地まで行っちゃったよ。
推理編集者張さんの話に、おそらく講談社の編集者に会う以上に興奮する自分。まだ半信半疑ながら話の中に次々出て来る日本人作家の名前にいよいよ真実味を増し、周りの乗客の不審気な視線も顧みず談笑を続ける。
もっと話がしたかったですが、いかんせんここは喫茶店じゃなく地下鉄。もうすぐ駅に着いてしまいます。すると、名残惜しげにしているボクに張さんから今度出版社に遊びに来るよう誘われました。
興奮が冷めないまま帰宅しました。まさかこんな偶然があるなんて。
推理はわしが見つけたじゃないですけど、中国でようやく見つけたまともな推理雑誌には日本の雑誌以上に思い入れがあります。この雑誌を買ってる日本人は北京で自分一人だけなんじゃないかって自負と孤独もありますし、編集部にファンレターなんかも送ったりしました。掲載作品を自分で勝手に翻訳したこともあります。
いつかなんらかの形で中国ミステリ業界に参加してみたかったと思っていましたが、しかしこのような形できっかけが生まれるなんて。
後日、いつもファンレターの返信をしてくださる別の推理編集者からメールが来まして、これをご縁に本誌に小説を投稿してみませんかというありがたいお誘いを頂きました。
いやしかし、今は日本語の小説も満足に書けていない状況なので、それは丁重にお断りいたします。
うーむ、嬉しいことにも責務がつきまとうんだなぁ。