前回紹介した人肉捜索はいわゆる情報弱者、またはネット利用者を対象にしたものですのでネットに痕跡を残していない人間を探すのは不可能です。普通、人はネットで他人を探すことなんかしないでしょうし、探される謂われもありません。
痕跡がないのなら自分から作ればいい、とはなりません。いくら犯罪者とはいえ他人の個人情報をアップすれば今度はこちらが犯罪者になってしまいます。しかしそれは日本の話。中国ではそれがない。むしろ、詐欺や強盗などの犯罪が蔓延り、警察が怠慢で仕事をしない世の中では奨励される行為ですらあります。
今回取り上げるのはそんな中国だからこそ生まれたサイト、です。
そもそも人肉捜索とは不特定多数の人間がターゲットの個人情報を根こそぎネットにアップする人力の検索を指します。写真に映っている人間の身元を特定するのは序の口で、学歴や恋人の有無、果ては彼が愛飲している煙草の銘柄まで突き止めます。
この人肉捜索ネットはネットユーザーに捜索の協力を募るサイトです。
百聞は一見にしかず、実際に御覧頂きましょう。
懸賞金十万 武漢の入学詐欺師を探しています。
武漢の許某と劉某(本文では実名記載)を探しています。二人は2007年に海軍エンジニア大学の軍籍生(日本の防衛大学みたいな物で将来国防の職に就くことが約束されている)にも、武漢科学技術大学の優秀生にもしてやれると言いました。ずっと武漢で暮らしていた私は当時、多くの友人の子供たちが受験に失敗し、私に助けを求めてきたところにこの二人の詐欺師に出遭ってしまいました。
彼らは100万以上を騙し取ったまま行方をくらませました。どうかコイツらを捕まえるのを協力して下さい。お金は全て子を思う親のお金なんです。謝礼金として10万元を差し上げます。約束は破りません。私の電話番号は156×××・・・・・・です。
この訴えの続きには二人の詐欺師の写真や住所、身分証番号、電話番号、家族関係から詐欺師の両親の住所、仕事まで書かれていますがここでは省きます。
100万元も騙し取られる。詐欺師の親の個人情報までばらす。そもそもこれって裏口入学の自白なんじゃないか。などなど疑問をぶつけたくなる箇所が山ほどある訴状ですがこういう記事が人肉捜索ネットに載せられています。
そしてページの下にはコメント欄があります。しかしこのコメント欄がまたくせ者で、浙江省で見ただの、コイツ四川省の誰々じゃねぇのとか全く信憑性のない情報が飛び交っています。
探し出したという報告を未だ見ていないので、この人肉捜索ネットにアップすることがどれほどの効果になっているかはわかりません。だからこのサイトは犯罪者に関する情報を交換するだけの犯罪被害予防サイトぐらいの利点しかなさそうです。
このサイトには犯罪者捜索の他に人捜しやニュースの真相究明などのカテゴリもあるんですが、やはり大した効果はなさそうです。また、明らかにウソの捜索願があります。(上記の投稿も怪しいものです)
つまりこのサイトは犯罪者を見つけ出すのが目的ではなく、犯罪者の一切合切を人の目にさらけ出して辱めるのが目的なのです。無実の人を犯罪者に仕立て上げて個人情報をアップすることも可能でしょう。
ちなみにこの人肉捜索ネット、投稿するのに500元の登録料がかかります。人肉捜索で他人のプライバシーをさらけ出すネットユーザーから金をむしり取る存在。とんだ食わせ物です。