前回、前々回と続けて人肉捜索のやり方を紹介しましたが、今回は人肉捜索が持つ真の力を皆さんに紹介いたします。
人肉捜索が一人の人間のプライバシーを丸裸にすることは皆さんご存じでしょうから、その原動力が決して無私無欲から生じた正義感ではないことは説明しなくても良いでしょう。そして人肉捜索の目的が問題の解決ではなく、如何にして対象を酷い目に遭わせるかという点にあるのも言うに及びません。
しかし人肉捜索ネットに載っているような記事は真の人肉捜索ではありません。あんなものは極論すればただの恨み言や復讐に過ぎず、同情心を駆られたところで人々の支持は得られず、相手にも大打撃を与えられません。
真の人肉捜索とはネットユーザーが一丸となり人海戦術を駆使して気に食わない奴を社会的に殺すことであります。
ここで人肉捜索の性格をこれ以上ないほど表した、王千源事件について触れてみたいと思います。
王千源は青島出身のアメリカ留学生で北京五輪聖火リレーの際にフリーチベットを叫ぶ欧米人と中国人留学生の諍いを止めさせようと、争いではない両者の対話を求めた女性でありました。だが狂信的に熱くなった同胞の愛国心は止められず、彼女は中国の団結を阻害する反対分子としてその場で罵倒されます。しかし問題はここから、彼女が両者の間に割って入ったシーンが動画サイトにアップされて彼女への人肉捜索が始まったのです。彼女の名前、住所、身分証番号全てはあっという間に曝され、実家の両親に累が及ぶのも時間の問題でした。
事件の詳細につきましてはコチラを御覧下さい。
これが真の人肉捜索です。
彼女の個人情報は未だにネットに載っており、コラージュ画像と共に難なく見ることが出来ます。
何故彼女が人肉捜索されなければいけなかったのか、それは彼女の大勢に反抗する行動がネットユーザーの気に障ったからです。更に国家の姿勢と真逆の立場を取ったことで国家の庇護下から外されました。彼女は今も見放されています。
この方の非は勇気ある行動があまりに無謀で散々な結果に終わったことです。
まるで痴漢された女性に向かって、電車に乗ったお前が悪いと吐くような暴論ではありますが、それが論だったらそれを論拠に相手を非難できるわけです。正義はコチラ側にあるから罪悪感を感じない。人肉捜索をする人々の心理はこういう状態ではないでしょうか。
人肉捜索の出現は、中国で私立探偵が認められていないことと人民を守らない腐敗した警察、そして個人情報保護法の不整備にその理由を求められると思います。しかし一番の原因はやはり個人情報を不法開示することが奨励されている点にあるでしょう。
いつか中国に人肉捜索が出来なくなる日が訪れる、と信じています。しかしそのときに上に挙げた三つの欠点が解消されているとは到底思えない。だが人肉捜索は批判の矛先を個人に向けることが出来る優良ツールだ。
矛先が自分たちに向けられるまでやっぱりなくならないのかな。