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プロフィール
HN:
栖鄭 椎(すてい しい)
年齢:
40
性別:
非公開
誕生日:
1983/06/25
職業:
契約社員
趣味:
ビルバク
自己紹介:
 24歳、独身。人形のルリと二人暮し。契約社員で素人作家。どうしてもっと人の心を動かすものを俺は書けないんだろう。いつも悩んでいる……ただの筋少ファン。



副管理人 阿井幸作(あい こうさく)

 28歳、独身。北京に在住している、怪談とラヴクラフトが好きな元留学生・現社会人。中国で面白い小説(特に推理と怪奇)がないかと探しているが難航中。

 Mail: yominuku★gmail.com
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このブログは、友達なんかは作らずに変な本ばかり読んでいた二人による文芸的なブログです。      
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新中国成立から約70年間で起きた重要な出来事に絡めた短編7話からなるオムニバス映画。新中国成立70周年の日に当たる101日の前日から中国で公開された映画で、評判が良かったし、中国に暮らしている以上見なければと思って国慶節連休中見に行った。だがその行為は結局、中国において自分はやはり外国人であるということを再確認しただけだった。


 


 


1話目『前夜』


1949年国旗掲揚


建国記念日の最大行事の一つ、天安門広場での国旗掲揚式の裏側を描いた作品。建国記念日前夜、国旗をモーターで自動で揚げるという大役を任されている技師が、ミスが絶対許されていない翌日の本番のために試行錯誤を繰り返す。重要な部品が破損してしまうと、彼の助手は近所に呼び掛け、金属回収を行う。建国を祝う人々の助けを借りて見事部品を製造した技師は、国旗のポールに上ってそれを取り付ける。


この技師は実在し、当時は毛沢東の後ろで彼に国旗掲揚ボタンの操作を説明したらしい。しかし、映画と同じ出来事が実際にあったかどうかは分からない。とは言え、明日までに100%ミスのない装置を作らなきゃいけないのにトラブルが続き、軍人を初めとした中国人が助けてくれる展開は感動的だったし、刻一刻と減っていく時間が表示される見せ方は『24』を思い起こさせ、とても緊張感があった。


 


 


2話目『相遇』


1964年 初の原爆実験成功


家族にも黙って原爆実験を数年間行う科学者チームの一人が、実験中の危機を身を挺して食い止める。被爆した彼は病院から抜け出し、昔よく乗っていたバスに乗る。車内には、何も言わず消えて行った夫を探すために、毎日バスに乗っていた妻がいたが、彼は任務の秘匿性を重視して自分の正体を明かさない。すると妻は彼の隣の席に乗り、夫婦の馴れ初めを語るのだった。


2人が乗るバスのリアガラスから見える風景が徐々に賑やかさを増していき、ついには龍が舞いビラが飛び交うお祭り騒ぎになる。そのビラは、中国が初めて原爆実験を成功させたことを祝う号外だった。その成功の陰に夫の存在があったことを知った妻は喜び、夫は満足気に涙を流すのだった。


2人の背後にある大きなリアガラスに当時の中国ののどかな町並みがゆっくりと映され、それが徐々にお祭り騒ぎになっていき、バスが停まって2人がようやく外の異変(慶事)に気付くという展開は、ホラー映画っぽくて面白かった。


 


3話目『奪還』 


1984年 ロス五輪で中国女子バレー優勝


同じ卓球チームにいる意中の女の子が、明日海外に行ってしまうことにショックを受ける男子小学生。彼女にプレゼントを上げるために急いで家に帰ると、近所で珍しく家にテレビあった彼は、ロス五輪の女子バレー決勝戦を楽しみにしている近所の人達から、家にあるテレビを外に出すよう頼まれる。


外に近所の人々が集まり、それぞれ椅子に座ってスイカを食べたりしながらバレーの試合を見始める。試合よりも女の子の方が大切な彼は家から出ようとするが、そのたびにテレビのアンテナの調整を頼まれ、なかなか自由になれない。そんな中、家に女の子が来てしまう。しかし試合も優勝が決まるクライマックスになり、彼がアンテナから手を離せば近所の人々は優勝の決定的瞬間を見られなくなってしまう。女の子と五輪を天秤にかけた彼は、皆のためにテレビを映すことを選び、彼女とは会えぬままになる。


月日が経ち、卓球チームの監督となった少年はテレビ番組の企画で当時の少女と再会するのだった。そして偶然、2016年リオ五輪での中国女子バレー優勝の瞬間を2人で立ち会うのだった。


上海の下町を舞台にした小さな恋の物語と思いきや、その愛はやはり国への愛だったという、個人的にかなりグロテスクに見えた作品。7作品の中で一番ワクワクし、一番驚いた。その二択なら普通は間違いなく女の子を選ぶだろうし、それでテレビが見られなくなっても皆許してくれるだろう、と思っていたので、アンテナを選んだ時は本当にビックリした。これが『三丁目の夕日』的な日本の下町が舞台で、五輪で日本チームが勝つ瞬間だと仮定した場合、一体どちらを選ぶことになるかと考えたが、テレビを選ぶシーンはあまり想像できなかった。


 


4話『復帰』


1997年 香港返還


香港返還式典で71日になった瞬間に中国の国旗を揚げるべく、香港側担当者とイギリス側担当者はそれぞれグリニッジ標準時に合わせた腕時計を用意する。香港で時計修理屋を営む熟練の技師は、イギリス側担当者の腕時計の修理を任させる。


成功の裏側には市井の人々の技術と協力があったというお話だが、個人と国家を無理やり絡ませてねぇかっていう印象が強い一作だった。軍人の上官役で、いかにも自制心がなく酒色に溺れそうな外見の人物が出てきて、コイツがスパイとして香港返還の儀式を邪魔するんじゃないかと一瞬思ったが、この映画にそんな悪人が登場するはずないので無駄な期待だった。


 


5話『やあ北京』


2008年 北京五輪


北海道を舞台にした映画『非誠勿擾』の主演俳優葛優(グォヨウ)が、ウザくて不器用で肉親にこんなのいたら絶対嫌だけど、何故か憎めない(フォロー)タクシードライバー親父を演じる作品。タクシー会社から北京五輪開幕式のチケットをもらった葛優はそれを周囲に見せびらかし、別居する息子のプレゼントにしようとする。しかし、いつもどおり車内で客に見せびらかしていたら、四川から来た少年に定価の800元の現金にすり替えられ、息子の前で大恥をかくことに。胡同を走り回って少年をやっと捕まえた葛優だったが、少年が四川大地震で父親を亡くし、またその父親が五輪会場「鳥の巣」の建造に携わったことを知り、彼にチケットを渡す。


 


6話『白昼流星』


2016年 有人宇宙船神舟11号着陸


貧困地域に住む兄弟は親戚のツテを頼って、村の責任者の李老人の家に身を寄せる。だが兄弟は李家から大金を奪って逃走しようとしたところ、警察に見つかり拘束される。だが2人の姿を見た李老人は警察官に「そのお金は私が上げたものだ」と言い、兄弟をかばう。


ある日、兄弟は有人宇宙船神舟11号の着陸に立ち会い、関係者に代わって宇宙飛行士の搬送を行う。その時から2人は貧困撲滅活動に身を投じるのだった。


劉昊然と陳飛宇が演じる兄弟の年齢を、俳優の実年齢と同じ22歳と19歳に設定すると、この兄弟は知恵遅れなんじゃないかと思うシーンが多々ある。貧困地域にはこういう1020代の若者がいるんだろうか。確かに、貧困家庭で育った子供が誰からも教わっていないから体の洗い方を知らなかった、というケースが日本でもあるみたいなので、この映画に出てくる兄弟みたいに恩も礼儀も知らない若者は中国に実在するかもしれない。未来のない若者も国家的事業に関われば誇りを取り戻し、仕事に打ち込むようになるというメッセージだろうか。


 


7話『護衛』


2015年 抗日戦争勝利70周年


抗日戦争記念式典で飛ぶ戦闘機の女性パイロットの話。鑑賞中は、きれいな内容で終わった前の話で終了したと思っていたし、なんでこれだけ時間の順番通りじゃなくて2016年から2015年に巻き戻っているのか不思議だったが、映画のラストを見て納得した。この作品が終わってから本物の中国の軍人が雄々しく行進する様や、各地の大学生が歌を歌うシーンとかが流れるので、それらの映像の導入としてこの作品がふさわしかっただけなのだ。


サングラスをかけた女性パイロットらがカメラに向かって滑走路をゆっくり歩いていくシーンは西部警察を思わせ、失笑が漏れた。7作品中一番ダサい作品だった。


 


 


国家の重大な出来事の裏側には個人の物語があり、個人が国家に貢献し、国家が個人に寄与する姿には定まった形がない、ということを伝えているのだろうか。海外のコメディ映画と同様、その国の文化が分からなければ100%理解することはできないといった内容であり、評価が難しい作品だった。


もう一つ、中国共産党的特色よりよほど理解できなかった点は、実際の国家の重大ごとと絡めた作品に虚構を施してもいいのか、ということだった。2345話では登場人物(庶民)が直接的に国家の重大な出来事に関与していないので、虚構性に対する抵抗感をかなり下げている。しかし本当に、1話の技師は人々から金属を回収して重要な部品を作ったのか、2話の科学者はバスの中で妻と出会ったのか、6話の貧乏な兄弟は宇宙飛行士を搬送したのか、7話の女性パイロットは空を飛んだのか、と疑問が湧いてくる。それはストーリーの信憑性を疑っているのではなく、監督や俳優らの映画作りに対する姿勢への疑いだ。


しかし自分は実を言うと、この手の映画はあまり見たことがない。なので、史実(中国共産党関係)を題材にした作品にフィクションをぶっこむやり方は、実は珍しくないのかもしれない。


だが信頼問題として、映画の中で個人と国家の大切な繋がりを描いているのだから、そこに描かれているのは、感動を誘うための虚構ではなく、現実と密接につながって血の通った物語のはずだ。


 一方で、感動的な作品をつくるためなら史実に架空の人物や出来事をぶっこんでも良いという大胆な姿勢は見習うべきだなと思った。
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