ちょいと小腹が空いたので近所にできた24時間の食堂へ足を向けた。
中国でこういう言い方があるのかわからないが、一応私が住んでいる場所は団地地区なので食堂には事欠かない。コンビニも付近に中国の物美とセブンイレブンがある。
入ってみるとこの立地条件にしてみればなかなか明るく広い店で、レストランのようにソファ席もある。深夜三時も過ぎているというのに席はかなり埋まっており、テーブルを覗くと夜食とは言えないボリュームの食事を囲っている。
そして私を除いて一人で来ている人間は誰もいない。
留学時代、韓国で一人で食事をすることは友人が一人もいないと公言するようなものだと韓国人と仲がよかったマレーシア人に聞いたことがある。例えコレが嘘でもこの嘘を信じている人間が少なくとも私一人ではないということだ。
中国でもそうだろうか。一皿に盛られる料理の量が多いので中国の料理は大人数向きであるし、人数が多いとより多くの料理が楽しめる。しかし私には一緒に夜更かしできる仲間がいるのが大層羨ましかった。
表の看板には『お粥店』と書いてあるので、お粥のメニューが豊富だ。スープで米を炊き、具に豚肉や海鮮、ピータンなどを入れた味のついたお粥はそれ自体一品料理の出来映えだが、私には病気の時に無理矢理食べさせられた酷くの味気のない日本のお粥を思い起こさせどうも好きになれない。
結局焼き河粉と牛すじの醤油煮を頼んだ。河粉とは米製の平べったい麺のこと。本当は値段の安い焼きそばが食べたかったんだがもう売り切れていた。深夜のことなので気にはならない。
しかし眠そうなウェイトレスはふてぶてしい態度を崩さず、黄魚泡餅という到底一人じゃ食べきれない魚料理を持ってきた。中国では好くあること、それに深夜なので気にはならない。だがなぜあれほど堂々と間違った料理を運んでくるのかは何年中国に住んでもわからない。
食べた料理は劇的な美味さがあるわけでもなし。不味くなければこれからも利用しようとは思っていたので、今後も行くことになるだろうが肝心の味は期待通りなんの特色もなかった。
この近辺の食堂は一帯で業務用食材でも仕入れているかというほど味が単一だ。この場所に移り住んで1年、各食堂に出前を頼むことがよくあるがこれと言ったヒイキがないのは店のレベルがドングリの背比べだからだ。
飯を食い終わったのが朝の四時。誰かと一緒に来ていれば空が白む頃まで居続けたのだろうに。