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栖鄭 椎(すてい しい)
年齢:
36
性別:
非公開
誕生日:
1983/06/25
職業:
契約社員
趣味:
ビルバク
自己紹介:
 24歳、独身。人形のルリと二人暮し。契約社員で素人作家。どうしてもっと人の心を動かすものを俺は書けないんだろう。いつも悩んでいる……ただの筋少ファン。



副管理人 阿井幸作(あい こうさく)

 28歳、独身。北京に在住している、怪談とラヴクラフトが好きな元留学生・現社会人。中国で面白い小説(特に推理と怪奇)がないかと探しているが難航中。

 Mail: yominuku★gmail.com
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このブログは、友達なんかは作らずに変な本ばかり読んでいた二人による文芸的なブログです。      

 


このコラムには映画『少年的你』及び小説『少年的你,如此美麗』などの作品のネタバレが含まれています。あと映画の各人物のセリフはうろ覚えなので、結構間違っているかもしれない。





先日、翻訳ミステリー大賞シンジケートに東野圭吾の『白夜行』『容疑者Xの献身』及び他作品からの盗作疑惑がかけられている『少年的你』の原作小説及び映画に関するコラムを書いた。


  


64回:中国小説界に深く根を張る東野圭吾



 


 そこではこれらの作品をめぐる問題を中心に書いたため、映画自体の評価ができなかった。様々な理由で散々叩かれている映画であるが、それでも面白い点は多々あったのでブログでは映画を中心にレビューを書いていきたい。改めて映画のあらすじを紹介しよう。


 





2011年の安橋(架空の街。モデルは重慶)、大学受験を間近に控えた高校3年生の陳念は、クラスメイトの魏莱らからひどいイジメに遭って自殺した胡暁蝶に同情を示したことで、次のイジメのターゲットになる。生来我慢強く成績優秀な彼女は、受験に合格すれば北京の大学に行けると信じてイジメに耐え、受験への影響を心配して警察に胡暁蝶の自殺の原因を言わなかった。


ある日、道端で不良同士の喧嘩を目撃し、警察に通報したところを見つかってしまった陳念は、一方的にやられていた劉北山(小説では北野)と無理やりキスをさせられる。結果的に彼をリンチから救った形になり、それ以降彼女の前には劉北山が現れるようになる。そして警察官の鄭易にイジメの事実を話し、魏莱らが停学処分を受けたことで、ようやく落ち着いた学園生活が送れるようになったのもつかの間、陳念への憎しみを募らせた魏莱らがますます苛烈な方法を取るようになる。母親が出稼ぎに行っていて周囲に頼れる人が誰もいない陳念は、学校にも行かず川辺の小屋に住む劉北山にボディーガードを頼む。


それから陳念は劉北山に登下校を遠巻きに見守ってもらいながら、放課後は彼とバイクに乗ったり街を出歩いたりし、夜は彼の家で受験勉強をし、初めての青春を楽しむ。だが劉北山が強姦事件の容疑者として警察に勾留されていた日に、陳念の前に魏莱らが現れる


大学受験当日、郊外で魏莱の死体が見つかる。警察は先日魏莱に暴行された陳念を容疑者として捜査を進める。このままでは陳念が捕まることに気付いた劉北山は、強姦犯に扮して警察官の前で陳念を襲うことで、彼女を被害者とし、さらに自分が犯罪者だと信じ込ませることができると考える。計画実行の日、警察が来るまでの間、二人は全てが終わった後に再会することを誓うのだった。





 


 


正直な話、イジメをテーマにした暗い映画なんか見たくなかったので、検証するという目的がなければ、いくら話題になろうが絶対見なかっただろう。私は映画原作小説という順に見ていったのだが、映画化するに当たって改変された点が多々ある。思いつくものをここに挙げていこう。


 


 


・小説では陳念が吃音気味で、それが原因でクラスメイトにいじめられたり、劉北山にからかわれる。映画ではそういう描写はなし。


・陳念のパートナーの名前が、小説では北野、映画では劉北山になっていた。


・映画冒頭で陳念が飛び降り自殺した胡暁蝶の死体に上着をかぶせてやり、学生たちがスマホで彼女の死体を撮影するのを防ぐ。


・小説・映画ともに陳念は母子家庭。しかし映画では母親は商売で失敗しており、債権者から逃げるために外地へ出稼ぎしている。だが親子関係は良好。


・映画では陳念が魏莱を殺す。


・映画では陳念と劉北山が共に服役する。


 


他に映画で気になる点


・映画は舞台が2011年なのだが高校生全員がスマホを持っていて、微信(ウィーチャット。LINEみたいなもの)で連絡を取り合っているのが不自然。二つとも2011年当時からあったようだが、そこまで普及していなかったはず。


・陳念が情状酌量されて4年の刑期で出てこられるので、劉北山の行為の重さが可視化されて軽くなってしまう。


 


・イジメ加害者魏莱への同情


 


映画は、大学受験のプレッシャーや家庭内の問題が学生間のイジメを招くという考えを基にし、加害者側の立場を通してイジメの原因を描いている。原作より社会性やテーマ性が高くなった映画で重要になるのが魏莱の役どころ。


 


この魏莱という女生徒は美人で勉強もでき社交性もあり、一見優等生に見える。だが、イジメグループの主犯としてクラスメイトを自殺に追い込んでいるのだから悪魔みたいな女だ。ターゲットを陳念に替えてもその苛烈さは変わらず、陳念を学校の階段から蹴り落とすのは序の口、陳念にイジメをバラされて停学になってからは仲間とともに陳念の家の前に大量のハムスター(何に使うつもりだったのか。食わせる気だったのか?)を持って現れる。これによって陳念が劉北山にボディーガードを頼むことになり、魏莱も一度劉北山から「警告」を貰っているのだが、彼女はそれで諦めるような人間ではなかった。劉北山不在時を狙い、仲間とともに陳念を暴行、彼女を丸坊主にし、その様子を録画するのだ。


 


半グレみたいな暴力性を持っている彼女の真の異常性が発揮されるのはここからだ。


 


丸坊主にさせられただけで何とか助かった陳念は翌日、魏莱に会いに行く。すると魏莱は今までの態度とは打って変わって、昨夜の件を警察に言わないよう陳念に懇願する。裕福な家庭で育った彼女は、去年大学受験に失敗したせいで(ということは陳念より一つ年上?)父親から全く口を利いてもらえておらず、先日の停学の件もあってこれ以上受験に不利になるわけにはいけないのだ。


 


魏莱が単に表と裏の顔の使い分けが上手い不良ではないということは、胡暁蝶自殺の捜査で警察の取り調べを受けている時から明らかだ。失敗を許さない冷酷な父親と、娘のやっていることを全く知ろうとせずただ溺愛する母親に育てられた魏莱は、学校では優秀な成績を収める一方、夜は自由にクラブを周り、悪事に手を染める友人まで持つかなりの問題児になっている。受験失敗後に変貌したのか、元々そうだったのかは分からないが、クラスメイトを自殺させても全く良心の呵責を感じず、自分の行為の重大性を理解していない彼女は、これまで問題と真っ向から向き合ってこなかったのだろう。そこに現れたのが、劉北山に守ってもらって魏莱たちのイジメに耐えた陳念だ。


陳念が真実を語れば受験どころではなくなる。というより、受験を受けられないこと以上の問題がたくさんあるのだが、魏莱にとって目下の要件は受験なので、陳念には何が何でも黙ってもらわないといけない。お金ならいくらでも払うからと陳念にすがりつく彼女には謝罪の気持ちなんかないし、自分のしたことの後悔もしていないのだろう。


 


そして陳念は、喋らない代わりに二度と自分の前に姿を見せるなと伝える。「耐える人」陳念にとって重要なのはお金でも謝罪でもなく、受験に合格して北京に行くことだから、魏莱など眼中にないのだ。


陳念から警察に通報しない約束をもらった魏莱は、さっきまでの泣き顔が一転して安心した表情になり、石段を下りる陳念に親しげに話しかけ、ついには「今までのことは水に流して友達になろう」と言う。


「お母さんも言ってたんだ。喧嘩をしなきゃ本当の友達になれないって」


これは煽っているのではなく、彼女は自分が丸刈りにした少女に対して本心からこう言うのだ。もちろん陳念は無視を決め込む。だが魏莱からすれば、この話はさっきで終わったのだから、まだ怒っているのはおかしい。だから続けて、「本当にお金はいらないの?」と心配そうに聞く。しかしこれがいけなかった。


母親が商売に失敗して陳念の家が貧乏なのは魏莱も知っている。だから彼女は、「お金があったらあんたのお母さんも楽になるでしょ」と親身になって問いかける。


だが、魏莱の口から母のことが出たことで陳念は頭に血が上り、とうとう魏莱を石段から突き落とす。石段を転がり、頭を打って絶命する魏莱。彼女は最期まで何が悪かったのかを理解せず、何で死んだかも分からなかったのだろう。


 


この映画一番の巨悪を主人公が殺したというのに、全然スッキリしない。それはこの映画が、魏莱もまたこの社会の犠牲者であり、劉北山と出会って救われ、社会からも情状酌量が許された陳念みたく、彼女も誰かが救われなければいけない「若者」だったという描き方をしているからだ。


 


 


・無力な大人鄭易のあがき


 


この映画の主人公として挙げられるのは陳念と劉北山だが、3人目として登場するのが警察官の鄭易だ。彼は本作の大人の代表として、現代の若者たちを取り巻く環境と彼女たちの行動に戸惑う。


終始陳念の味方でいる鄭易は、言わば「法の下にいる劉北山」であり、彼女のもう一人のボディーガードだ。しかし肝心の陳念からはあまり頼りにされておらず、そのことを自分でももどかしく感じている。


この映画の子どもたちは、大人からの庇護を拒絶する。自分たちを苦しめるこの社会(状況)を生み出した大人が一体何をできるんだと常に問い掛ける。まだ若い警察官の鄭易は陳念たちに何度も寄り添おうとするのだが、「大学受験があるからイジメのことは言わなかった」という陳念の言葉に驚くなど、今の子どもがどれだけ過酷な環境を生きているのかがよく分かっていない様子が描かれる。


 


彼の能力が発揮されるのは物語後半、陳念の魏莱殺しの罪をかぶった劉北山を取調べしている最中だ。連続強姦犯に扮して陳念を襲っているところを逮捕された劉北山は魏莱殺害も自白し、陳念から捜査の目を逸らそうとする。鄭易には二人が嘘を吐いていることがすぐに分かったが、何も証拠がない。若者二人は全く尻尾を出さず、劉北山は陳念のために刑務所に行く覚悟があり、陳念は何年かかろうとも劉北山の出所を健気に待とうとしている。だが、真正面に罪と向き合おうとしない二人を許すわけにはいけない彼は、なんと強姦犯として捕まった劉北山とその被害者である陳念を面通しさせる。もちろんれっきとした規律違反だが、彼の捨て身の行動でも二人が真実を明かすことはなかった。


そこで彼は次の行動に出る。受験に合格した陳念のもとに来た彼は、劉北山が死刑になったと告げる。何年後かに一緒になることを待ち望んでいた陳念にとって、これは最悪の知らせであり、彼女はその場で泣き崩れる。しかし、これは鄭易のウソ。彼女の本心を引き出すために繰り出したブラフであったのだ。そして、陳念に「本当のことを話せば二人とも罪が軽くなる」と説き、ついに彼女を説得する。


 


これには、懐柔でも脅迫でもなく、ドッキリを使って自白させんの?!と、見ていて驚いた。この鄭易の行動は、全く心を開いてくれない陳念への意趣返しにも、愛のために全てを投げ出せる劉北山への嫉妬心にも見え、とても大人気なく感じた。


 


・イジメ被害者にメッセージ


映画のラストでは舞台が2015年になっている。4年間の刑期を終えた陳念が学校(英語教室?)の先生になり、何か悩みを抱えてそうな少女に寄り添って歩いているその後ろで劉北山が見守っている。


そしてスクリーンには中国が2015年から取り組んでいるイジメ対策の内容が次々と流れ、劉北山役の易烊千璽(イー・ヤンチエンシー。お前、易が名字で烊千璽が名前だったのか…)が、「イジメを見て見ぬ振りするな」という励ましのメッセージを観客たちに送る。


なぜこの映画が現代ではなく2011年なのか。2011年ではまだメジャーじゃなかったスマホや微信を学生たちが使っているのはなぜか。その原因を色々考えてとてもシンプルな推測が生まれた。この映画は元々現代を舞台にしていたのだが、それでは上映の許可が下りなかったので、イジメ対策がまだ完全ではなかった2011年を舞台にすることで、許可をもらう代わりにリアリティを犠牲にしたのではないだろうか。更に一歩踏み込んで考えると、この映画を海外でも上映したいと考える人間(監督たちではない)の目的は、映画の内容ではなく、ラスト数分の中国のイジメ対策の成果の喧伝なのではないか。


 


中国の映画で殺人を犯した未成年者が罪に問われないなんてありえないので、陳念が魏莱を殺害していたことが明らかになった時点で陳念逮捕は予想が付いた。しかし情状酌量を認められて4年で出てこられてるというオチは、ハッピーエンドにも見えるが、愛する女性のために自分の人生を犠牲にしようとした劉北山の覚悟に泥を塗る描写でもあり、はっきり言って蛇足だ。


魏莱とは何だったのか。そもそもイジメなんか本当にあったのか。ハッピーエンドをしっかり描いてしまったことで、これまでの不幸が全て薄っぺらに思えてしまう終わり方だった。やっぱりここは『容疑者Xの献身』のように二人共罪を償うことを決めて終わるか、『白夜行』のように男が死のうが女は一人で生きていくという終わり方にしたほうが良かった。

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