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HN:
栖鄭 椎(すてい しい)
年齢:
42
性別:
非公開
誕生日:
1983/06/25
職業:
契約社員
趣味:
ビルバク
自己紹介:
 24歳、独身。人形のルリと二人暮し。契約社員で素人作家。どうしてもっと人の心を動かすものを俺は書けないんだろう。いつも悩んでいる……ただの筋少ファン。



副管理人 阿井幸作(あい こうさく)

 28歳、独身。北京に在住している、怪談とラヴクラフトが好きな元留学生・現社会人。中国で面白い小説(特に推理と怪奇)がないかと探しているが難航中。

 Mail: yominuku★gmail.com
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このブログは、友達なんかは作らずに変な本ばかり読んでいた二人による文芸的なブログです。      
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 海外の翻訳ミステリを積極的に出版している新星出版社が新たな事業を開拓しました。




 中国の出版・書籍ニュースを取り扱う百道網(Bookdao)の情報によると、新星出版社は4月20日に中国最大のネット兼リアル民営図書館『青番茄』(青トマトネット)と手を組み、彼らが提携しているカフェ、ユースホステル、ホテルなどにミステリ小説を置くことを企画。既に北京、上海、深センなどではミステリ小説をテーマにした『大偵探的蔵書房』(名探偵の蔵書室)を設立しています。

http://www.qingfanqie.com/(青番茄公式サイト)



 最初に貼ったニュースに表示される写真のメガネを掛けた男性が新星出版社の午夜文庫副編集長の褚盟氏です。4月に彼が深セン大学で講演を開くという話を聞いた時は、ずいぶん行動力あるなぁと感心したのですが、この青番茄の本社が深センにあるので、深センに来た本当の目的はあくまでも仕事であり、講演はついでだったのでしょう。


 さて、新星出版社と青番茄の契約の本当の目的は提携カフェなどにミステリ小説を置くことではなく、ミステリ関係の講演を開く場所を増やすことにあると思います。上記ニュースでも4月に7箇所で人気作家らの講演会をしたと書かれておりますし、活動の場を増やすことでミステリを中国全土に浸透させていくのが新星出版社の狙いなのでしょう。



 またこの青番茄網は以前ブログで紹介した、東南地区ミス研聯盟が同人誌を発行するにあたってクラウドファンディングの活動を担当しています。



 
 今年の中国ミステリは南方がキーワードになるかもしれません。

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前回 の『東南地区ミステリー作品応募大会』の告知文で作品の応募とは別にお金を募集する文言があり、表示されているリンクを辿ると興味深いページヘと飛んだ。それが『追夢網』である。


  
 

 追夢網サイト


 見つけた当初は中国にこんなサイトがあったのかと感心したのだが、創設は2011年らしいので今更紹介するようなページでもないだろう。名前に『夢』なんて入れているから『中国夢』にかこつけた比較的新しいサイトと勘違いしてしまった。

 

有り体に言えばこのサイトは中国のクラウドファンディングサイトだ。

 『東南地区ミステリー作品応募大会』を企画する東南地区ミス研聯盟はここで大会の賞金及び入選作品を発行する際に必要な印刷費などの出資金を募り、出資者に対し金額ごとにそれなりの見返りを用意している。最低金額
29元なら刊行物の電子書籍版など、最高金額299元ならば刊行物、審査員のサイン入り書籍など最大で8点の特典を贈呈するといった感じである。

 

 

『追夢網』で資金の使い道の詳しい内訳が書かれている。

 東南地区ミステリー作品応募大会 資金調達告知ページ
http://www.dreamore.com/projects/13371.html?from=Projects_index

 

大会の賞金金額が11,000元、2800元、3500元で、各入選作品に送るプレゼントの総額400元、そして優秀作品を刊行した場合にかかる印刷費が2,300元の合計5,000元が本大会にかかる必要経費らしい。(2位は2名、3位は3名なので更に1,800元が必要になると思うのだが

 

 

書籍の作成及び発行はデザイナーと推理雑誌社(歳月推理、推理世界を発行している会社)に依頼するので、それら人件費を含めた金額が5,000元なのだろう。しかし、果たしてこの大会及び優勝作品の発行に外部から資金を募るほどの価値はあるのだろうか。

 

前回『北京高校推理聯盟 第1回ミステリー作品大会』では優秀作品の出版も予定されていたが結局叶わなかったのは、出版に値する作品が1作もなかったからだ。だから東南地区のミス研が自費出版の道を選んだ気持はわからないでもない。だが、まだ作品すらできておらずどのような本に仕上がるのかわからない現時点で他人に資金提供を求めていいのだろうか。

 

そして印刷費以外に募集している各賞金だが、主催者であるミス研聯盟は作品を投稿する参加者でもあるから、結局のところ出資金の半分は彼らの懐に入るだけなのでは?と疑念が生じる。


 賞金ぐらいはスポンサーを募って何とか捻出できなかったのかと不思議に思ったが、第
2回北京地区大会及び第1回東南地区大会では現時点で企業等のスポンサーは皆無だ。そもそも第1回北京大会には新星出版社の編集者が出席していたから彼らが賞金などを出してくれたと勝手に思い込んでいたが、実際は不明だ。

  

『追夢網』では他にアーティストの卵、海外ボランティア、ネットで人気を博した小説の映画化プロジェクトなどが資金を求めているが、それらに比べて『東南地区ミステリー作品応募大会』の計画は見返りも含めて内容がかなり甘い。

  

プロジェクトに興味を持って出資したいヤツだけ金を出せば良いクラウドファンディングの活動に甘いとかの駄目だとか言うのは間違っているだろうが、5,000元集まらない場合、大会自体が実施されるのだろうかと考えると、今の時点で500元程度しか集まっていない現状を放ってはおけない。

 

 

とりあえず、スポンサー集めをせずにクラウドファンディングの手段に頼り資金集めをする以上はもっとこれを活用してほしい。『追夢網』には出資者一覧が見られるページがあるのだから、印刷を担当する推理雑誌社や審査員に選ばれた推理小説家に資金出資者になってもらい、一覧に名前を上げることで他の人が出資しやすい空気を作るのもありだろう。

 

 

業界の人間が特定のイベントにのみ資金提供するのは今後角が立つかもしれない。だが主に大学生を対象にしているこのイベントでは資金集めは困難だろう。

 


 知名度も実績も商品の見本すらない彼らがまだ存在していない自信作を取引材料に他人に出資を募るその行動は理解できない。

 しかし、根拠の無い自信から5,000元という決して簡単ではないリミットを設けるその傲慢ぶりは嫌いじゃないし、学生の卒業アルバム製作を傍らで眺めているようで、彼らを否定しきれずについつい応援したくなってしまう。


 主催者側のミス研聯盟は即ち投稿者側でもあるので、資金調達が達成すればプレッシャーがかかって執筆活動に発破がかかるかもしれない。だから、私個人としてはこういう活動は反対なのだが、中国ミステリ発展のために出資するのはありなのかもしれない。
 

 

中国のアガサ・クリスティの異名を持ち、登場人物の心理描写や人情的なストーリー展開に定評のある鬼馬星の『酷法医』(クールな法医学者)シリーズの最新作だ。法医学者の谷平が15年前の大量殺人事件の容疑者となった同僚の女刑事のピンチを救う。

 

 

表紙右下の写真の男が福山雅治っぽいんだが湯川教授って法医学者だっけ?

 

 

育ての親の遺言に従って指定された場所で人に会おうとしたら生き別れの弟の変死を思いがけず知ってしまい、更に両者の死と十数年前に起きた実の家族を巻き込んだ大量殺人事件を結び付けられて連続殺人犯として疑われてしまった女刑事のピンチと捜査を法医学者の谷平がサポートする内容で、主人公の谷平が積極的に行動する中心人物にならないストーリー展開はシリーズ1作目『木錫鎮』とは変わっていない。

 

ストーリーは女刑事の沈異書を中心に展開するが、育ての親と生き別れの弟の謎の死、元夫の再婚相手の不可解な失踪、そして少女時代に巻き込まれた大量殺人事件など重要な謎が時代別、地域別に散見しておりどこに注目すれば良いのかと読者を迷わせる。

 だが各事件に彼女の育ての親である心理学者の李殊楊の存在を当てはまるとようやくピントが合う。全ての事件に死者を絡ませて解決させる手法はやや強引に見えるが、終始存在を匂わせているのでアンフェアではないし、既に死んでいて動けない登場人物の存在感を各章の独白パートのみで際立たせているのはさすが鬼馬星で、違和感を覚えさせず白を黒に変えてしまっている。

 

 

しかし『虫屋』というタイトルはいただけない。大量殺人事件があった旅館で死体の一つが無数の虫に食われており、真犯人が意図して虫を放ったのはわかるが死体処理の仕方としてはあまりに雑なのに死体を食う埋蔵虫(シデムシ)をちゃんと用意するというアンバランスな計画は作品の謎の一角となっているが、大量殺人事件より魅力があるかと疑問が残る。

 

ミステリ小説では注目を集められないから『虫屋』というグロテスクなタイトルにしてサスペンスやホラー小説として売りに出そうという打算が見えるのだが気のせいだろうか。なんていうかこのタイトルに推理小説のジャンルの吸引力の弱さを感じてしまう。


http://read.10086.cn/www/bookDetail?bid=385510307

(第1章まで本作を無料で読めます。)

 




公安法制文学の代表雑誌『啄木鳥』(WOODPECKER)の20142月号を購入した。

 

 

公安法制文学とは…1950年から60年代に成立した小説の一ジャンルで、中国の警察機構公安の関係者を主人公に据えている。成立当時は時代背景も相まってスパイ、国民党、アメリカなど反共産党的存在と戦う公安の警察官が描かれ、探偵に代わって犯罪を暴き犯人を捕まえるという展開が多かったため公安法制文学は今でも探偵小説に類別される。しかし公安の活躍の描写に重点を置いた作品が多いため、トリックを期待したり、日本の刑事小説のような組織内の複雑な人間関係を想像していると痛い目に遭う。

 

 

公安法制文学=探偵小説という思い込みがあったのだが、2月号の目玉は2013年の年末に広東省の麻薬村『博社村』で大規模な大捕り物が決行されるまでの数ヶ月に及ぶ計画を描いたドキュメンタリーだった。

 

そして小説も探偵小説に属していたのは『偵探与推理』コーナーの一作と、『外国懸疑推理』コーナーに掲載された仁木悦子の『赤い猫』の計二作品のみだった。他の掲載小説は単なる物語に過ぎなかったのだが、その中の『截訪』では体制寄りの文学が発する強烈な違和感が浮き彫りになっていた。

 

タイトルの『截訪』とは『上訪』を阻止するという意味である。『上訪』とは地方の政府機関を飛び越して上級機関へ直訴・陳情するという意味だ。地方から北京に来る直訴者の窮状は2008年の北京オリンピックに備えた大規模な取り締まりにより日本でも既に知られるようになったが、本作は直訴を阻止する公安の目線に立った作品である。

 


 

 年末年始に帰国した時に札幌のラルズプラザ古本市で購入した江戸川乱歩の『探偵小説の「謎」』やら権田萬治の『日本探偵作家論』は日本のミステリに疎い私にとって大きな収穫になり、また中国の探偵小説を理解する手がかりにもなった。

 『探偵小説の「謎」』で乱歩は動物を使ったトリックの例として
訓練したオウムに宝石を盗ませるというモリスンの短編を紹介しているのだが、1924年の中国では趙狂という作家がオウムに盗品の隠し場所を喋らせるという探偵小説『鸚鵡口中』を発表している。

 読んだ当初はオウムと会話をするという無茶な設定に呆れたが、この作者が上記のモリスンの短編を読んでいたとしたらオマージュとして別の評価を下すことができる。

 『モルグ街の殺人』をモデルにして
翻訳者黄翠凝が書き上げたであろう『猴刺客』という例もあるし、そもそも『中国探偵小説の父』こと程小青が著した『霍桑シリーズ』はまんまシャーロック・ホームズだし、孫了紅はアルセーヌ・ルパンの活躍の舞台を中国に移したようなものなので、中国の探偵小説家がどれほど英米の作品を参考にしていたのかを把握しないことには正当に評価できないだろう。

 中国の探偵小説も1900年代前半のは探偵ありトリックありで昔の作品と割り切って読めばつまらなくはないのだが、50年代以降の作品からは探偵が消失して公安が活躍する共産党礼賛文学に成り下がっているので読むに耐えない。
 日本じゃ戦中に探偵小説が出せなくなり、作家は国威発揚のスパイ小説や軍事小説を書かざるを得なかったと
『日本探偵作家論』に書いてあったが、中国じゃ世界大戦よりも国共内戦からの国民党との戦いが探偵小説に大きな影を落としたようだ。

 言わば日本も中国も同じような道のりを歩いていたのに、日本じゃその後社会派ミステリが台頭して探偵小説が一般的に受け入れられていったのに、中国じゃ公安を主役にした作品が廃れるどころか探偵小説のトップに据えられ、流石に露骨な政府賛美は薄れたとはいえ今でも公安法制小説というジャンルは生き残っている。


 何故中国は本来の探偵小説に立ち返られなかったのか。松本清張が生まれなかったからという単純な理由なのか、それとも時勢に乗ってミステリ要素を二の次にした公安法政小説が権威を持ってしまったところに中国ミステリの不幸があるのか。


 面白い作品にはそれを成立せしめる背景がある。そしてつまらない作品もそれ相応の理由があって生まれるわけであり、中国のある時期の探偵小説を読む際にはそこら辺も知っておかないと壁にぶん投げて二度と手に取らないということもあるかもしれないのだ。


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