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プロフィール
HN:
栖鄭 椎(すてい しい)
年齢:
40
性別:
非公開
誕生日:
1983/06/25
職業:
契約社員
趣味:
ビルバク
自己紹介:
 24歳、独身。人形のルリと二人暮し。契約社員で素人作家。どうしてもっと人の心を動かすものを俺は書けないんだろう。いつも悩んでいる……ただの筋少ファン。



副管理人 阿井幸作(あい こうさく)

 28歳、独身。北京に在住している、怪談とラヴクラフトが好きな元留学生・現社会人。中国で面白い小説(特に推理と怪奇)がないかと探しているが難航中。

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 『逆時偵査組-凶手何時来訪(タイムトラベル捜査班-犯人はいつ来る)』。このタイトルから察せられる通り、ジャンルとしてはSFミステリー小説だ。しかしタイムリープ能力を駆使した捜査が重点で、科学的に難しいところはない。




 敏腕刑事の路天峰は、10年前から自分では制御不能なタイムリープ能力を身に付け、不定期的に1日を5回繰り返していた。彼はその能力を使って難関の警察大学の受験に合格し、刑事になってからはそれを駆使して重大事件を未然に防ぎ、順調に昇進を果たしていた。「RAN」という遺伝子治療法研究で名を挙げているバイオ企業・風騰ゲノムの幹部が立て続き殺され、社長の駱騰風に犯人「X」から脅迫状が送られたことで、路天峰は彼の護衛を命じられる。そして4月15日、駱騰風の存在をよく思わない団体「逆風会」から次々と刺客を送られるも無事護衛の任務を果たした路天峰は、16日を迎えることなく2度目の15日を迎える。そして4月15日を繰り返し、新たな真実が次々と明らかになり、駱騰風を狙う手段がますます複雑化する中、路天峰は「X」もまたタイムリープをしているのではないかという疑いを強めていく。

 主人公の路天峰はすでに10年間タイムリープ能力と共存しているので、この超能力に戸惑ったりその原因を突き止めようとしたりする描写はなく、展開がスムーズだ。刑事なのに自分でコントロール不可能な超能力をあてにしているのはどうかと思うが、彼にとって同じ1日を5回繰り返すというサイクルはもう不動であり、本作でもその法則が崩れることはない。


 同じ1日が繰り返されるたびに事件をより詳細に調べ上げ、最後の5回目までに完璧な作戦を立ててどんな重大事件でも犠牲者を出さずに解決するというのが路天峰の手法だが、その異常なまでの事件解決能力は当然上司や部下から怪しまれる。だから警察には、絶対秘密で信頼できる「情報提供者」が外部にいるという設定で通しているが、前回のタイムリープで新たに容疑者リストに加わった人物を次のタイムリープでいの一番に捜査する際、全くノーマークだった人物の捜査を急に命じられた部下は、やはり不気味に思うだろう。

 本作では、「RAN」という遺伝子治療法を研究開発する風騰ゲノムトップの駱騰風を中心に据え、彼の警護期間中に事件が多発する4月15日を路天峰が繰り返す。タイムリープするたびに新たな事実や関係者が現れ、事件の謎は深まるばかりか、路天峰の恋人で風騰ゲノムの科学者・陳諾蘭まで事件と重要な関わりを持ち始め、路天峰はますます疑心暗鬼に陥る。謎を次々に登場させることで、読者の目を「そもそも路天峰がタイムリープできる理由は?」という疑問からそらしているのかもしれない。


 そして一連の事件を捜査する中で、数々の関連事件が起きた日付が、自分がタイムリープした日と同じであることに気付き、犯人「X」もまたタイムリープで何度も同じ一日を繰り返し、完全犯罪を実行しているのだと悟る。


 結局のところ、路天峰一人がタイムリープを繰り返し、その都度部下に様々な情報を集めさせて次の「当日」の対策を練ることと、時間経過と事件の展開に従って指示を出すことにあまり違いはないのだろう。
 

 タイムリープするたびに捜査側としてのアドバンテージを高めていく設定は『All You Need Is Kill』っぽいが、今回の事件でのネックは犯人側もタイムリープを使えるということ。だから路天峰と「X」が4月15日を5回繰り返す中で、相手の裏をかこうとどんどん策略を張り巡らせた結果、最悪の事態を引き起こしたといってもいい。


 長年「そういうもの」だと思って深く考えたことがなかったタイムリープ能力の理由も「X」の正体も重要だが、終盤になって「逆風会」とは異なる組織の存在がほのめかされ、この巻では到底全ての謎を明らかにすることは不可能になった瞬間、物語は次巻に続くことが確定する。事件の背後に謎の組織を据えてシリーズ化するのは大嫌いなので、2巻を買うかは不明だ。ちなみに2巻では路天峰の能力が強化され、3日前にタイムスリップするらしい。


 そして2巻はもう間もなく出るとのこと。中国ミステリー界隈は最近、1巻出したらすぐに2巻を出すという売り方をしているが、これは出版社の販売戦略と作品の長文化がうまい具合に一致した結果なのかもしれない。
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