帯に「中国版Xファイル」と書いていたから、ファンだった身としてちょっと期待したんだが、いまいちな内容だった。ってか調べたら、今回買ったのは新装版で、もともとは2009年に出た本だった。二重に騙された気分だ。
複雑怪奇な事件を解決して市民の不安を解消することを目的として、公安庁は極秘に「詭案組」(不可思議な事件の捜査科)を設立した。この部署に回された慕申羽をはじめとした個性的な面々が、幽霊や化物の仕業としか思えない凶悪事件を解決していく。
「中国版Xファイル」と銘打たれている以上、気になるのは作品内で起きる事件が本当に超常現象による物かどうかということだったが、残念ながらみな「人間」が起こしたものであった。一般的なミステリー小説は、一見すると人知を超えた実現不可能な犯罪が捜査によって徐々に現実的になっていくが、本作の事件は真相が明らかになっていっても一般人では再現不可能な「特質性」がある。ただ、その不可思議性に甘えて非論理的で非現実的な話を書いている感も否めず、人間がそんなペースで人を殺して、しかも証拠を残さないなんていうことはあるのか、とか、いくら常人とは違う体だと言ってもそんな生活で生きていけるのか、とか気になる点は多々あった。
しかし最も気になる箇所は、キャラクターの設定を生かしきれていないという点だろう。本作には普通の警察小説では絶対登場しないような警察官が出てきて、例えば主人公の慕申羽は過去の事件から足に怪我を負っていて、警察としての将来は期待されていなかったが、手品のプロで手先が器用だ。「詭案組」は他にも、非常に好戦的な女性警官、スカウトされた元ハッカー、特殊能力を持つ小柄な女性など、格別の個性や過去を持っているキャラクターがいるが、本書では話が進むほど出るキャラが減っていくのだ。
それもそのはず、本作は当初からシリーズ化や映像化を見越して、色々なキャラに様々な過去を持たせて、小出しにしていって一つの大きな物語に仕上げるはずだったのだ。多分。
結局のところ、物語として整合性が取れない箇所を「超常現象」で誤魔化しているような作品で、ホラーとしてもミステリーとしても突出できていない作品だった。あと、そもそも中国で『Xファイル』ってそんなに有名なんだろうか。