2007年に北方文芸出版社から出た同名タイトルが2020年に新星出版社から再出版されたので購入。実は10年ぐらい前に旧版を購入していたのだが全然読めないまま放置していた。つまり今回はリベンジ読書になるわけだが、やっぱりあまり楽しめなかった。
自由意志市では1984年から毎年3月に1件の首切り殺人事件が起き、犯人は「大鎌のロミオ」と呼ばれ人々から恐れられていた。最初の事件発生から9年目の1992年、3月が迫り焦った警察は犯人逮捕に5000ドルの懸賞金をかける。警察官を辞めようと思っていた文澤爾は、警察官として最後にこの事件を一から洗い直してみることに。最初の犠牲者エリザの父親ローゲンマンは日本刀マニアの富豪であり、遅々として進まない警察の捜査に嫌気が差しており、文澤爾に日本刀にまつわるクイズを出す。
作者文澤爾(Wenzel)はドイツ在住(今も?)の中国人作家で、舞台となった自由意志市もドイツだ。登場人物も全員ドイツ人であり、横文字の人や地名が漢字で表記されているので外国人の自分にとっては読みづらい。そして日本刀マニアの西洋人が出て、日本刀のうんちくを語るという、欧米の小説にありそうな展開が挟まれる。要するに海外小説の中国語訳っぽい小説を日本人が読むという、邪魔なフィルターがかかってしまっていて物語をすんなりと楽しめないのだ。
大鎌のロミオの出現日に法則性があったり、日本刀の飾り方から重要な手掛かりが見つかったりと要所要所面白いところはあったが、肝心の真犯人はやっぱりかって感じの人物で、しかも文澤爾とは全然関係ないところで、まるで読者に対する演技のように罪を悔やんでいて唐突な感じをぬぐえなかった。都市型犯罪小説というわけあって物語自体の距離的なスケールは大きいが、大きすぎて各登場人物の関係性にムラがあり、深さはそれほどない。
面白い面白くないというか「合わない」(角が立たない言い方)作品だった。もう一冊、『荒野猟人』の新装版も買ったが、これを読むのはまた数年後かもしれない。