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栖鄭 椎(すてい しい)
年齢:
40
性別:
非公開
誕生日:
1983/06/25
職業:
契約社員
趣味:
ビルバク
自己紹介:
 24歳、独身。人形のルリと二人暮し。契約社員で素人作家。どうしてもっと人の心を動かすものを俺は書けないんだろう。いつも悩んでいる……ただの筋少ファン。



副管理人 阿井幸作(あい こうさく)

 28歳、独身。北京に在住している、怪談とラヴクラフトが好きな元留学生・現社会人。中国で面白い小説(特に推理と怪奇)がないかと探しているが難航中。

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給青年編劇的信 著:宋方金

 

 

本書『給青年編劇的信』(青年脚本家へ送る手紙)は自らを「失敗した脚本家」と卑下する、中国ではまぁまぁ有名なテレビドラマの脚本家である宋方金が、これから脚本家になる、または新人脚本家に対してこの業界のルールや現状をユーモラスな語り口で説明するという内容です。

現在、中国は著作物(IP)を国内外から買い漁ってドラマや映画などの映像化を進めていますが、本書はその浮かれモード(?)な業界に冷水をぶっかけるような内容ではなく、「資本」(功利主義)が蔓延している映像業界で脚本家はプライドを保ったまま創作活動を続けられるか?という一人ひとりの品性に訴えかけています。

彼は脚本家として仕事を発注される立場でありながら、注文の内容が自らの条件に満たない場合は仕事を受けないという芸術家気質もあり、それが自らの首を絞めていることを自覚しながらやはり創作者としての脚本家である姿勢を貫いています。ですのでこの本はアドバイスを書いた指南書であるのですが、読んでいると「青年脚本家のみんな、俺みたいになるな。仕事ならなんでも引き受けろ」という叫び声も聞こえてきそうなほど、宋方金のような人間が現在の脚本家業界では生きづらくなっていることがわかってきます。

 

 

 

それでは彼の発言いくつか抄訳してみましょう。

 

映画には良い映画と悪い映画の二種類しかないが中国にはもう一つ、ニセ映画が存在する。ニセ映画はポスターや予告編で見分けられる。下水油の臭いがするから、過激な描写でその臭いを隠しているものもある。牛乳にメラミンを入れたら死刑になるが、映画界ではメラミンを入れることがレッドカーペットを歩くことにつながり、興行収入○億元突破の祝賀会を開くことになる。

 

王興東(有名な映画監督)が脚本家の契約書のひな形を作り、しかもネットで無料にダウンロードできるよう公開した。私は狂喜乱舞した。このような細かい契約書があれば双方(会社と脚本家)の利益になるからだ。だがそれ以降、私は一度としてこの契約書を見たことがない。

これは何故か?王興東の契約書に不備があるからか?いや違う、契約書が完璧すぎるから誰も使ってくれないのだ!この契約書は会社側が冷や汗をかくのに十分すぎるほど完璧なのだ。

 

(王興東の作成したと思われる契約書は以下のURLで読むことができる。中身は、極めて『普通』の契約書だと思う。)

 http://blog.sina.com.cn/s/blog_706cdd310101do2j.html

 

我が国の主な機関は長年国民に良い情報を伝え、我々は良い情報に囲まれて生きている。だがこれは良い状況ではない。国家と民族が良い情報しか知らず、悪い情報がない場合、その国家と民族は極めて危険な段階に入っていると私は考える。

だから物語に携わる人間は時代の役割を担うべきであり、真実を語り、真実を書き、時代の真相、情念のリアル、人生のリアル、人間性のリアルを書き出す。

 

 

私は昔、月面着陸を疑ったことがある。何故ならアームストロング船長の言った「人間にとっては小さな一歩だが、人類にとっては偉大な一歩だ」という名言が一人の宇宙飛行士が思いつく言葉ではないからだ。これはアメリカ政府が用意した一節だろう。おそらくハリウッドの脚本家が書いたに違いない、何故ならこの言葉はとってもハリウッド的だからだ。それならば我々中国の宇宙飛行士にも必ず言葉が用意されているだろう。だがそれにはフック(中国語で鈎子。物語が盛り上がるポイントや要素のことを指す言葉だと思う)はない。みんな「祖国に感謝します」と言うに違いない。

 

 


 

契約書の話を読んだ日本人なら誰もが『テルマエ・ロマエ』の映画化の一件を思い出すことでしょう。原作者(脚本家)を蔑ろにするというか、会社側が有利になるように話を進めて、契約書の存在を匂わせないところは日中で変わらないようです。

 

中国で「推理小説の書き方」とか「ライトノベルの書き方」みたいな指南書はこれまで一回も見つけたことはありませんが、「脚本家への道」みたいな本は国内外問わず多くの数を本屋で見ることができます。中国では小説家よりも脚本家になりたい人が多いのかもしれませんが、有名になれるのはごくわずかで、そもそも映画業界はIP(作品)こそ欲していますが肝心の脚本家は全く求めていないのかもしれません。その非人間的な労働環境に気付くと、この本が決して青年脚本家のみに向けたものではないことがわかります。

 

 

 

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