耳食者
著:王雨辰 挿絵:KAN
・耳食…人の言うことを真に受ける、人の話を鵜呑みにする。(小学館 中日辞典から)
★表紙裏のあらすじ
引きこもりの二流小説家が外で散歩している道すがら、物語を聞くことが食事の14歳前後の不思議な少女を拾ってしまい、彼女に奇妙な物語を1つずつ語り始める。
貧弱な二流小説家と人生の負け犬の警察官がなんで怪人が蔓延る得体の知れない不死の家族の財産相続劇に巻き込まれてしまうのか?
ネクロフィリアっぽくて回復力がゴキブリ級の間抜けな殺し屋と、口やかましい美少女の生首との間にあるのはどのような怪奇で感動的な愛なのだろうか?
貧乏で不器用で不運で可哀想な神様はどうやって怪奇趣味を持つ人間たちを頼って、間違った道に迷い込もうとしている“息子”を救済するのだろうか?
本書が述べたかったのは特殊な職業に就き人ごみの中に潜む妖怪と呼ばれるものたちのストーリーだ。
作者の王雨辰はホラー畑出身の若手小説家だ。本書が彼の初ライトノベル作品となる。だからだろうか。この小説は意図的なのかライトノベルの定石を外しているように読める。
主人公の二流小説家が耳食者の少女蘇弥里と出会ってしまい家まで連れてくるシーン。物語の冒頭ではせっかくの二人の出会いも、少女が大食いで食えるものならドッグフードまで口に入れてしまうほどの強いキャラクター性も、たった7ページで済ませられているのだ。しかも両者の会話はなく文中では書かれず主人公の一方的な独白だけで終わり、少女の台詞は一言もない。
この小説の本筋は少女に主人公の奇妙な物語を聞かせることにあり、女の子とじゃれ合うことではない。そして彼ら二人のやり取りは全3話ある本編への導入部でしかない。
馬桶上的阿拉丁(トイレの上のアラジン)
著:風聆 イラスト:kurudaz
本屋で見つけて即表紙買い。久々に本を裏返しにしてレジに持って行った。
本書は2009年に第1回台湾角川ライトノベル大賞銀賞に輝き、台湾国際角川書店から出版されている。翌2010年に中国大陸版として発行されたのがこれだ。
あらすじ
主人公張暁果は普通の身長、普通の体格、普通の顔、「普通」の二文字で形容できてしまう18歳の少年だ。それが学校のトイレで用を足しているといきなり便器に話しかけられた。《アラジンの魔法のランプ》の分身を名乗る便器の精霊・阿磨尼亜(アンモニア)の《ご主人》となってしまった張は、学校の先生や同級生の精霊は格好良いのに何でオレだけ便器…とふて腐れる間もなく最近台湾で超常現象が起きた。張は先生やクラスメイト、そしてパートナーのアンモニアの力を借りて事件を解決するため異変に立ち向かう。
便器を題材にした小説なので、これはライトノベルじゃなくて更に幼い児童文学のカテゴリじゃないかと疑ってしまった。だけど、物語の登場人物たちは典型的なライトノベルにありがちなキャラで、主人公と比べてキャラクター性に富んでいる。