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栖鄭 椎(すてい しい)
年齢:
40
性別:
非公開
誕生日:
1983/06/25
職業:
契約社員
趣味:
ビルバク
自己紹介:
 24歳、独身。人形のルリと二人暮し。契約社員で素人作家。どうしてもっと人の心を動かすものを俺は書けないんだろう。いつも悩んでいる……ただの筋少ファン。



副管理人 阿井幸作(あい こうさく)

 28歳、独身。北京に在住している、怪談とラヴクラフトが好きな元留学生・現社会人。中国で面白い小説(特に推理と怪奇)がないかと探しているが難航中。

 Mail: yominuku★gmail.com
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このブログは、友達なんかは作らずに変な本ばかり読んでいた二人による文芸的なブログです。      
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日経ビジネスオンラインに掲載されている福島香織さんのコラム『中国新聞趣聞~チャイナ・ゴシップス』の先週号『赤い帝国主義下の言論出版統制』に昨今の中国の出版事情が書かれていました。

http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20150601/283768/

 

ここでは識者の言葉を借りながら最近の中国で文明論や文化論に関係し、中華文明や中華的価値観に対する否定的な言論、とりわけ西洋文明の関与を匂わせる論評が検閲されやすいと書かれています。

 

現時点では論評に限られているようですが、出版業界がこのまま政府によって西欧色を排除させられてしまい、ついには現代中国の実情にそぐわない内容の小説なども規制されてしまうのではと危惧してしまいます。

 

そしてその際に槍玉に挙げられる可能性が高いのはミステリ小説でしょう。

何故ならミステリ小説に欠かせない探偵という職業は西欧的であり且つ中国では違法だからです。

 

 

中国で探偵が違法ということは昔から言われていますが、実際にどういう罰則があるのかははっきりわかりません。いろいろな話を統合すると、盗聴や追跡など非合法的手段で情報を取得することを禁じているだけであり、探偵事務所の看板を掲げること自体は罪にならず、法律に則って営業していれば捕まることはないようです。(個人的な理解です)

 

ですが、日本の探偵事務所と同様に中国の探偵事務所を名乗る会社も大概は人探しや浮気調査、そして知的財産保護など法律事務所の業務を行い、事件の捜査なんかは行いません。

 

では中国のミステリ小説ではどうかと言うと、探偵と呼ばれるキャラクターは数多くいますが本業が別にあって趣味で探偵をやっている、または周囲から探偵としての役割を頼られているだけで副業として探偵をやっている人間がほとんどです。物語ではそのような自称(他称)探偵が警察と何らかの関係性を持って事件に介入しますが、警察が探偵に協力を求めることも実際にはありません。

 

中国人作家が「中国では探偵が違法」というリアリティを気にしているのかわかりませんが、現代中国のミステリで探偵業で飯を食っているキャラクターはいないと思います。
 更に中国では「名探偵」の名称が警察にも使われ、敏腕刑事が「名探偵ホームズ」などの異名を取ることがあります。この場合はたいてい警察や公安が主人公となって証拠や手がかりを固めて犯人を追うという構造の懸疑小説(サスペンス小説)が主です。

私は探偵とは在野におり、時には公権力と対立する存在だと認識していたため、刑事が名探偵を名乗る中国ミステリには違和感を覚えます。

 

 

出版に対する規制が厳しくなっているという昨今、非合法な存在であり民間人なのに事件に介入する中国には存在しないはずの探偵は今後フィクションの中でも存在が許されず、警察しか名乗ってはいけないという方針が出されるかもしれません。それはともすれば、トリック重視のミステリ小説がなくなり、警察しか活躍しないサスペンス小説が中国の『ミステリ小説』となる恐れがあります。

 

しかし規制されるのであれば小説よりもドラマが先でしょう。

2011年にタイムスリップを題材にした映画が規制された原因は粗造乱立した映画の内容があまりにも低レベルだったためだとも言われています。

最近は規制が緩いということでミステリ小説のネット映画化が中国で盛んになっているようですが、粗悪な内容のものが当局の目について規制されなければいいのですが…


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521日に中国の映画監督・賈樟柯が自身の監督した映画『山河故人』の上映会後、集まったメディアに上海に映画会社『暖流(FABULA)』を設立したことを宣言。上質な商業映画を制作することを目的とし、最初の計画として東野圭吾の小説を改編した映画作品を中国で初めて制作するとのこと。

 賈樟柯が映画会社設立。(中国語ニュース)

この記者会見ではあくまでも『計画』としか話しておらず、東野圭吾の何の作品をいつ映画化するのかなど具体的なことについては一切言及していないです。

このニュースを初めて見たときは「なんだよ、ただのビッグマウスじゃないか」と疑いましたが、賈樟柯が中国のみならず日本でも一定の知名度を誇り、オフィス北野と提携している映画監督だと知ってからは単なる夢想と片付けることができなくなりました。

記者の前で語っているのだからある程度の見通しはあるのでしょう。

 

中国で有名な東野圭吾作品と言えば『容疑者Xの献身』『白夜行』は外せないでしょう。前者に似たタイトルの中国ミステリは何度も見かけたことがありますし、後者については中国の東北地方を舞台にした『東北版白夜行』とネットで揶揄される中国映画『白日焔火』があります。

しかし東野圭吾の作品は上記2つ以外も大抵は人気があると思いますので、既に日本や韓国で映像化されて中国人の東野ファンも見たことがある作品の映画を今更制作しても比較されるだけでしょうから他の原作を選べばいいでしょう。ただこの2作はあまりにメジャーですので敢えて中国版を制作することもあり得ます。

 

さて、もし東野圭吾の小説を映画化するとなると版権はどこから買えばいいのでしょうか。中国国内の出版社が版権を購入するとき契約書に書籍化の権利は書いているでしょうが、映像化の権利までは書いていないはずです。もし書いていれば今頃いくつも東野圭吾映画が出来ているでしょうし。だから既に中国国内で出版されている作品を映画化するのであれば賈樟柯は日本の出版社と交渉するでしょうが、彼にそんなルートがあるのでしょうか。

 

この点についてとあるブロガーが日本の映画プロデューサーであり『山河故人』のプロデューサーでもある市山尚三氏が『山河故人』試写会の前日に行った中国人記者とのインタビューで語ったコメントに注目しています。

 波米-春のマイクロブログ(中国語)

このインタビューの最後に市山尚三氏は記者の「賈樟柯に日本映画の監督をさせようと思ったことがあるか」という質問に対し、「当然ある。実際、私の手元には彼に撮影させたい脚本がいくつかあり、彼も興味を持っている。ただし詳しい作品名は明かせない(以下略)」と答えています。

 

ブロガーはインタビューの末尾に『インタビュー終了後、賈樟柯が東野圭吾の小説を映画化させる計画があるというニュースが伝えられた』という注釈を付けており、まるで市山尚三氏が版権交渉人として動いていると推測しています。

この推理が果たして正しいのかは別として賈樟柯と日本の距離が意外と近いため、中国初となる東野圭吾作品の映画化というのは単なる与太話で終わらなさそうです。

 

昨年10月、北京の各大学のミステリ研究会が協力し各自が創作した推理小説の出来を競いあった『北京高校推理聯盟 第1回ミステリー作品募集大会』から半年も経たずして、今年20142月に『第2回北京地区ミステリー作品募集大会』の開催が公布されました。


 関連記事 
  北京高校推理聯盟 第1回ミステリー作品募集大会の様子(1)
 

さて、何故わざわざ『北京地区』と明記し、且つ1回目と違う名称を名乗っているかと言いますと、今年はその他に中国東南地区の大学のミステリ研究会が『第1回東南地区ミステリー作品募集大会』を開催するからです。

 
 東南地区ミステリー作品募集大会
 次のコナン・ドイルを探す

この大会では中国の閔(福建省)、粤(広東省)、カン(江西省)の各大学のミステリ研究会が主体となり、そこに所属する学生を対象に16,000文字以内のオリジナル推理小説を公募しています。

募集要項には特に北京地区と異なる注意事項など書かれておりません。ですが、中国の北と南の文化の差が浮き彫りとなる一風変わったテイストの作品が現れるかもしれません。

 

確か、『北京高校推理聯盟 第1回ミステリー作品募集大会』の授賞式の際に主催者が今後北京以外でもこのようなイベントを開催したいと発言していた記憶がありますが、まさか北京の次が東南地区だとは思いませんでした。

 

しかし将来的には中国全土を対象にした各大学対抗ミステリ小説大賞の創設も夢ではなさそうです。去年の大会ではどの作品も書籍化するまで至りませんでしたが、こうしたイベントを経て作品の水準が上がり続ければ、賞金ではなく書籍化を目的にした応募作品も増えるのでしょう。

  

2回北京地区大会及び第1回東南地区大会には島田荘司氏は出席されないようですが、前回の講演内容を反映したような最新科学とミステリが融合した作品が投稿されれば先生としても嬉しいところでしょう。

 

 参考サイト
 推理之門

 東南地区ミステリー作品応募大会

 今月、ミステリ関係の記事を何も書いていないのはマズイと思い、百度で『推理小説』とググったらなかなか新鮮(日付が)なニュースがあったので紹介します。
 
 80後推理迷褚盟:99%推理小説不値得看第二遍
 (80年代生まれのミステリマニア褚盟:推理小説の99%は2回読む価値はない)
http://www.chinanews.com/cul/2013/04-23/4755377.shtml
 
 
 新星出版社で国内外の推理小説を専門に出版している『午夜文庫』副編集長褚盟氏のインタビュー記事です。タイトルは若干過激ですが記事の中でも言及されているように、推理小説に限らず、そもそも2回読む小説ってのが多くないでしょう。ここで褚盟氏は2回読む価値のある小説にホームズシリーズとアガサ・クリスティの作品を挙げているのが、いかにも『らしい』ですけど。
 
 インタビュー内容は褚盟氏が以前から主張していることの焼き直しなので、取り立てて目新しくはありません。欧米や日本のミステリを賞賛し、中国ミステリを眼中に置かない姿勢は変わっていません。
 


 東野圭吾の新作『マスカレード・ホテル』『假面飯店』というタイトルで今年の7月に中国で発売されるらしいです。
 東野圭吾最高傑作『マスカレード・ホテル』 中国へ
 
 
 新作発売ということは、東野圭吾が中国大陸及び台湾や香港の出版社にとっていたとされている版権許諾の禁止措置が解かれたということなのか。また台湾香港向けの繁体字版も同時に発売されるのか。6月7日時点で上記の第一報以外のニュースがないため、詳しいことは何一つわからず、今は続報を待つしかないそうです。
 
 それより気になるのは、記事の中で引用されている東野圭吾の2つのコメント(下線は副管理人によるもの)

 higashino.jpg
 
 赤線部分「私ですら今後これを永遠に超えられないと思った」(適当訳)というコメントは、マスカレード・ホテル公式サイトのエッセイ&プロフィールの末尾から取ったもののようです。

 higashino2.jpg

 ニュアンスは違うけど言ってることはだいたい同じでしょう。


 しかし青線部分「この小説で自分の想像力を極限まで発揮できたと感じたし、同時にこの作品はきっと読者の心の奥底を打てるだろうと思った」(適当訳)というコメントはネットをちょっと探したぐらいじゃ見つからなかったです。
 
 おそらく東野圭吾が紙媒体でのインタビューで口にした言葉なんでしょう。それか中国媒体向けに語ったものかもしれません。
 中国語訳された作者コメントを見るとその真偽を疑うくせがついてしまいましたが、新聞記事ぐらい信じなければいけませんね。
 


 近年の東野圭吾作品では最高傑作と評される本作が中国市場に現れることにより、ミステリ小説版権バブルの再燃が訪れるかもしれません。
 
 この出版劇の内情が明らかになるにつれて中国ミステリ業界がどう動き、中国人読者がどんな反応をするのか楽しみであります。
 

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