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プロフィール
HN:
栖鄭 椎(すてい しい)
年齢:
33
性別:
非公開
誕生日:
1983/06/25
職業:
契約社員
趣味:
ビルバク
自己紹介:
 24歳、独身。人形のルリと二人暮し。契約社員で素人作家。どうしてもっと人の心を動かすものを俺は書けないんだろう。いつも悩んでいる……ただの筋少ファン。



副管理人 阿井幸作(あい こうさく)

 28歳、独身。北京に在住している、怪談とラヴクラフトが好きな元留学生・現社会人。中国で面白い小説(特に推理と怪奇)がないかと探しているが難航中。

 Mail: yominuku★gmail.com
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このブログは、友達なんかは作らずに変な本ばかり読んでいた二人による文芸的なブログです。      
 
 zhongjibaozha.jpg

 本書は中国ファンタジー小説界の最高の栄誉とされる銀河賞を1993年から6年連続受賞したベテランSF作家王晋康の最新短篇集だ。表題作の【終極爆炸】は2006年度第18回銀河賞で傑出賞を受賞している。

wikipedia:銀河賞(中国語)
wikipedia:王晋康(日本語)
百度百科:王晋康
 
 
 本書に収録されている小説は【一生的故事】、【可愛的機器犬】、【決戦美杜莎】、【時空商人】、【終極爆炸】、【有関時空旅行的馬龍定律】、【我們向何処去】、【新安魂曲】の8編だ。ここでいくつかの短編を取り上げて紹介してみる。
 
 
 【一生的故事】は映画ターミネーターを思わせる恋愛小説。30歳の独身女性SF小説家のもとに300年後の未来から美青年がやって来る。彼が生まれた300年後の世界は『大媽媽』(ビッグマザー)と呼ばれるコンピュータに管理され、何事にも不自由しない未来社会となっていた。だが機械に支配される社会に反対する者も少なくない。彼は自分たちの世界の基礎を創ることになる女性作家の子供を殺して未来を変えるために過去へやって来たのだ。

 本作には2人の母親が登場する。人間に奉仕するコンピュータとして自分を滅ぼそうとしている人間を律儀に過去へ送る『大媽媽』と、美青年の計画の全てを知ってもなお彼と恋に落ち、彼の子供を身ごもる女性作家だ。

 物語終盤、子供を身篭った女性作家は『大媽媽』が人間に対して見せる優しさの裏側に気付く。大きく膨らむ自分のお腹を見て、過去にいる自分すら『大媽媽』の支配下にあるのではと女性作家が恐怖するシーンは、決して本心を見ることができないコンピュータへの不信感と自分の胎内にいるものの正体に怯える妊婦の心理を表している。
しかし手塚治虫の【火の鳥】しかり、未来社会をデストピアにするのは何故いつも女性型AIなのだろうか。
 


 
 表題作の【終極爆炸】は天才科学者集団が密かに開発した兵器をめぐる人間ドラマだ。人種も国籍も超えてどこの国家機関にも属さず、ただ科学の発展のためだけに集まった科学者たちはどんな物でも爆弾に変えてしまう『終極公式』を発明する。核より高い破壊力を持つ爆弾を簡単に製造できるその公式を、科学者たちはどこにも発表せず何があっても使用しないと決める。

 しかし折しも世界では石油エネルギーの利権をめぐる諸国の対立が激化し、ついに3回目の世界大戦が勃発する。科学者以外誰も知らない『終極公式』による爆弾は使用されることはなかったが、戦争で子供を失った科学者の一人はとうとうある決断を下す。

 頭に異物を埋めこまれた科学者が登場する序盤にはSFホラーの雰囲気を漂わせたが、科学者集団の正体が明らかになるにつれて未来への不安を感じさせる展開となる。また、人命を軽視する戦争によって無私の科学者が1人の人間として生まれ変わる流れが秀逸だった。

 

 長年の夢を実現させて片道の宇宙旅行に出る老人と、全人類の中から選ばれた少年と少女の3人が宇宙船で家族として暮らす【新安魂曲】

 誰もいない宇宙で一生を終えることになるというのに、たった3人しか乗船していない宇宙船には老人と子供が互いに敬愛し合う家族愛が溢れている。読者はSF小説の中に現代では失われた懐かしい情景を思い浮かべるかもしれないが、老人と子供による感動話は作者の狙いが透けて見えるようでやや辟易させられる。
 
 タイムマシーンを使って金儲けをする【時空商人】や、大富豪にふっかけられた難題をトンチのように解決する【決戦美杜莎】はSFと言うよりも少し不思議な話で、短篇集の箸休め的な内容だった。
 
 

 93年デビューの作家が2010年に出した短篇集を俎上に載せるのは間違っているのかもしれない。本書は別段つまらなくはなかったが、中国SF小説の独創性を期待した気持ちが、物語に散見する道徳的な記述とナショナリズムにより失せてしまった。

 中国人が主人公であることに異議は挟まないが、国家や政府を称揚するような描写はたとえそれが物語の主軸となっていなくとも、外国人の私はやはり読んでいて盛り上がれない。
 

 小林泰三のようなSFがないか調べてみよう。

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無題
天天
Kinbricks Nowで勝手に誤字ターミネーター活動を行っている天天と申します。

以前はKinbrick内で私のコメントにお返事をいただきありがとうございました。
http://kinbricksnow.com/archives/51765068.html#comments

実を言うと、私の「修正後の文章の方が、読みやすいのではないかと思います。」の意味は、(Kinbricks転載後に阿井さんがこちらの本文の修正を行ったのだと思っていたので)「阿井さんの文章の方が読みやすいと思います」という意味です。
返事をしなくて申し訳ありません。

実際のところ、阿井さんの文章を読んで、「なるほどそういう意味だったのか」と感じた次第です。

ちなみにこちらの記事の
「世界対戦」->「世界大戦」
です。

それにしてもこちらの記事を読んでいると、2000年ごろから韓国の映画やドラマが驚異的な発展(視覚的にも非常に美しく、話としてもとても面白いものが量産され、世界に売れる商品になった)を見せたように、中国の映画やドラマも同じように多くの人材を育てているのだろうなと思います。
RE:無題
阿井 URL
天天さん

Kinbricks Nowに転載される記事はそのサイトの管理人にしていただいております。
私としては転載後の文章の方が読みやすくなっていると思っておりましたので、天天さんのご指摘もご尤もだと思った次第です。

『世界対戦』の誤字、気付きませんでした。ご指摘どうもありがとうございます。


中国で有名なSF作家の王晋康も劉慈欣もデビューこそ遅いんですが、二人とも年齢だけを見ればベテラン作家なんですよね。中国には『科幻世界』や『九州幻想』などのSF雑誌があるので、子供の頃から中国SFに親しんでいた若手が書いた物も読んでみたいです。

私としてはB級SFやエログロが好きなので、そういう物を探し出したいです。
RE:無題
天天
阿井さん

早速のお返事ありがとうございます。

阿井さんの文章に関しては前のコメントに書いたとおりですが、Kinbricksさんの理解の深さと構成力には私はいつも感心しています。
ujcさんの記事などujcさんの意図を正確に理解した上で文章の順番を入れ替えて、目を引くタイトルを付ける手腕は本当に凄いと思います。

さて今回の阿井さんのお返事で中国にも「九州」という言葉があることを知ったのですが、「九州」という言葉が「中国」全体のことを表すと知ってさらに驚かされました。

私は基本的に各国の経済や政治の動きに興味があるのですが、こちらのサイトにも時々遊びに来させていただきます。

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