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プロフィール
HN:
栖鄭 椎(すてい しい)
年齢:
40
性別:
非公開
誕生日:
1983/06/25
職業:
契約社員
趣味:
ビルバク
自己紹介:
 24歳、独身。人形のルリと二人暮し。契約社員で素人作家。どうしてもっと人の心を動かすものを俺は書けないんだろう。いつも悩んでいる……ただの筋少ファン。



副管理人 阿井幸作(あい こうさく)

 28歳、独身。北京に在住している、怪談とラヴクラフトが好きな元留学生・現社会人。中国で面白い小説(特に推理と怪奇)がないかと探しているが難航中。

 Mail: yominuku★gmail.com
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このブログは、友達なんかは作らずに変な本ばかり読んでいた二人による文芸的なブログです。      
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歳月推理12月号が出た。

 2010112648289197.jpg

今月号のラインナップは以下の通りになっている。

 

言桄     蚂蚁的力量(アリの力)

雪飲狂歌   日落旅馆(サンセットホテル)

千山     探阴宅上(上)(幽霊屋敷探訪・前編)

御手洗熊猫  圣诞夜的诅咒下(クリスマスの呪い・後編)

松本清張   種族同盟

アガサ・クリスティ 犬のボール事件

 

『犬のボール事件』は去年あたりに発見されたアガサの未発表短編小説。どんな内容だか楽しみだが、今回紹介するのは先月にも取り上げた御手洗熊猫の『クリスマスの呪い』の後編だ。


クリスマスの夜、神の使者を名乗る謎の老人卜部六神に招かれた鮎川刑事と天城刑事。館には他にも無神論協会会長の香取恭生と浮浪者めいた風貌の北条圭吾という男がいた。彼らの立会いの中、卜部老人は今晩女優の美千晶恵美、大学教授の松下放庵、作家の菊川雅美、東大生の木下貴和という四人の有名人が神の命によって死ぬ運命にあり、どのような殺され方をするのか説明する。

 

だが卜部老人の呪術はこれで終わらない。今度は紙に書かれた人物が死ぬと言い香取に裏返しにした紙を引かせる。しかし香取が取った紙には卜部老人の名前が書かれていた。得意気になる香取に対し、卜部は香取こそ死ぬべきだと言い放つ。

卜部老人の予言を端から信用していない香取は館から出て行ってしまう。そして瞑想のためと鮎川刑事たちに言い残し一人で部屋に閉じこもった卜部は密室で背中を日本刀で串刺しにされて死んでしまった。更に翌日、卜部老人の予言どおり名指しされた人物がすべて遺体で発見され、館から出て行った香取も付近で転落死していることがわかる。

 

 

遠隔殺人がテーマの今作では、登場人物が上記の人物のほか名探偵御手洗濁しかいない。ミステリの定石で考えると犯人は唯一残った第三者である北条圭吾に間違いなく、鮎川刑事らは御手洗濁の助力を借りてアリバイ崩しを始める。

 

今作の見所は卜部老人が死者を予言したことにより生じた時系列に関する叙述トリックを、御手洗濁が卜部の予告した死者の順番と被害者が殺された本当の順番を明らかにするところにあります。そしてその結果、常人には理解し得ない犯人たちの思惑が露わになり読者を驚愕させます。

 

オチを言ってしまえば(以下文字反転)

菊川雅美を除く北条圭吾と卜部老人らは『無政府主義の会』を標榜し、クリスマスなどという外来の祭りに現を抜かし日本の伝統文化を疎かにする堕落した現代日本を恐怖に陥れるために、いわゆる『クリスマス死ね死ね団』を創設します。そして被害者同士が協力して殺害されることで、各人のアリバイを偽装したのです。

 

 

 

 

個性的な人物と魅力的な謎を作品世界に活かす熊猫先生は、島田荘司先生が定めた本格ミステリの定義をなぞる島田イズム溢れる推理小説家と言えます。

しかし今作もこれまでの作品同様に、探偵が事件を解決するまでの過程があまりにも乱雑であり、魅力的な謎に対する作家としての責任が疎かになっている節が見受けられます。

 

あと、御手洗濁と北条圭吾が実は大学の同級生であり、彼らが昔話に花を咲かせる場面は読者サービス以外の何物でもない。

 

御手洗熊猫先生のブログによると、先生は現在『渾濁館殺人事件』という新作を執筆しているようです。

先生の作品に登場する魅力的な謎はどれも短編向きではないと思っているので、次回作は長編だったら良いなぁと期待しています。

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無題
Dokuta URL
こんばんは。いつか読むかも…と思うともったいなくてネタばれが見られません(苦笑)

長編と言えば、渾濁館の前に『島田流殺人事件』というのを書いていたみたいでしたけど、それの刊行はどうなってしまったんでしょうね…。
日本で刊行された水天一色『蝶の夢』でも御手洗熊猫の作品タイトルとして島田流…が挙げられていたんですけど。

ところで、アジアのミステリーについての記事が毎年載ってる『本格ミステリー・ワールド』ですけど、
去年掲載されていた「中国ミステリー事情」、今年は載らないみたいです。
http://www.nanun-do.co.jp/mystery/book01-3-1.html
無題
阿井 URL
御手洗熊猫先生の本が読めるのは現状では中国大陸だけ!となっていますが、将来的にはどうなるんでしょうかねぇ。

『島田流殺人事件』もとあるブログで去年の日付のレビューがありますけど、何故かまだ出版には至っていないらしいです。百度や豆瓣にも詳しい情報は書かれていません。
しかし奇妙なのは、ウェブ上でのいくつかのブログには『島田流~』のレビューが書かれているのに、作品がどこに掲載されたのかまったく表記されていないんです。まるで攻殻機動隊2で登場したシルベストルが著したとされる『個別の11人』のようです。
調べ方が悪いのかな……

今年は中国ミステリーが不振だったんでしょうか。日本と台湾はいつも盛り上がっていて良いなぁと、大陸で羨ましがっています。
バカ笑いしました
Chinanews
阿井幸作様

私のブログにコメントをいただいたのを期にブログを読ませて頂きました。

面白いっ!

バカ笑いしながら過去ログも読ませて頂きました。

もしよろしければ、「Kinbricks Now」とのコラボ企画をお願いしたいと思うのですが、いかがでしょうか。

お手数ですが、「kinbricksnow●gmail.com」(●を@に変えてください)までご連絡をいただければ幸いです。

突然かつぶしつけなお願いで失礼いたします。ご検討のほど、よろしくお願い申し上げます。
ありがとうございます!
阿井 URL
Chinanews様

コメントありがとうございます。
こちらこそ、海外のニッチでハードな話題を紹介していらっしゃる貴ブログにはお世話になっております。
一体どんな嗅覚をしているのかと感心しながら、見習いたく思います。

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