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プロフィール
HN:
栖鄭 椎(すてい しい)
年齢:
40
性別:
非公開
誕生日:
1983/06/25
職業:
契約社員
趣味:
ビルバク
自己紹介:
 24歳、独身。人形のルリと二人暮し。契約社員で素人作家。どうしてもっと人の心を動かすものを俺は書けないんだろう。いつも悩んでいる……ただの筋少ファン。



副管理人 阿井幸作(あい こうさく)

 28歳、独身。北京に在住している、怪談とラヴクラフトが好きな元留学生・現社会人。中国で面白い小説(特に推理と怪奇)がないかと探しているが難航中。

 Mail: yominuku★gmail.com
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 [中国人作家が書くアメリカドラマ的SFミステリ]

 shijianzhong.jpg
 
 カート・ヴォネガットの『タイムクエイク』から着想を得た本書はハードボイルドミステリの形式を取りながらも過去にタイムスリップするというSF的要素を基軸にしており、そのために第三回全球華語星雲賞にノミネートされているSF小説でもある。
 
 
 自動車会社の副総裁ジャック・ダニエルを射殺したことがきっかけで逮捕された大学教授のキルゴア・トラウトは過去に16人もの人間を手に掛けた殺人鬼であることが全米に知れ渡る。そして『教授』とあだ名を付けられたキルゴア・トラウトの凶行から半年後、ピッツバーク市で今度は連続強姦殺人事件が発生した。
 
 『教授』を逮捕した刑事イアン・マルクスは今回も凶悪事件の捜査に乗り出すが、その途中に彼はタイムクエイクに巻き込まれ強姦殺人事件発生前の過去に戻されてしまう。彼は何度も過去に戻るうちにキルゴア・トラウトもタイムクエイク経験者であり、連続殺人事件を食い止めるために真犯人であるジャック・ダニエルを殺害し、その罪をかぶったという真相を知る。
 
 イアンも教授に倣って事件を未然に防ごうとするが、事はそう上手く運ばなかった。


 作者も公言している通りアメリカドラマ『CSI』の影響を多く強く受けている本書は、中国人作家にとって異国であるアメリカを舞台に書いているにも関わらず、ある一定以上のリアリティを持っている。ただしそれは本場のアメリカを描けているという意味ではなく、アメリカドラマを再現していると言ったほうが正しい。

 物語の核心部分で犯人がFacebookやEbayといったネット上で被害者の個人情報を合法的に入手していると推理してから、実際はアメリカの警察にとって灯台下暗し的なデータバンクを使っていたと確信するまでのミスディレクションは、今時Facebookを悪用した犯行はないよなぁと高を括っていたミステリ好きを驚かせたはずだろう。
 
 しかし『CSI』の雰囲気を借りながらも、作中でドラマの矛盾点を指摘しているのにはやや厚かましさを感じる。アメリカでも実際に『CSI』への指摘や批判は散々されてきているから、本書の中でアメリカの刑事たちが『CSI』に文句を言ったりリアリティがないと馬鹿にする描写はパロディと言えなくもないのだが、既存の作品を踏み台にしているようにも見えてしまう。
 
 そもそも作品の中に同ジャンルの既存の有名な作品名を出す手法は如何なものか。その小説のストーリーの内容と似ている過去の作品を作中に登場させて、登場人物の口を借りて自分の作品と過去の名作を比較させるようなことを言わせるのは、設定の借り逃げというか雰囲気の底上げをしているようであまり評価できない。
 
 
 刑事の本分を逸脱しても被害女性を救おうと奔走する時をかける刑事を描いたSFハードボイルド小説はラストに突然登場する忍者集団に完全にぶち壊される。被害者の一人である在米日本人女性が空手のブラックベルトって設定を目にした時点で何となく嫌な予感はしていたんだが、まさか忍者が警察を襲撃する展開になるなんて誰が予想できただろうか。
 
 タイムクエイクというSF設定は飲み込めるが、忍者は到底納得できるものではない。なんで作者はこんな結末を持ってきたのだろうか。

 確か『Xファイル』でも日本の外交官がモルダーを空手で退けるシーンがあった。と言っても外交官役の俳優がどう見てもチャイニーズアメリカンだったのでカンフーアクションにしか見えなかったが。アメリカドラマが持っている日本への偏見や過剰評価を忠実に再現した結果がこれなんだろう。
 
 とんでもないところはあるけど、タイムクエイクを経験してしまった刑事の使命感と焦燥感を味わえる一作なので読んでおいて損はない。

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