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HN:
栖鄭 椎(すてい しい)
年齢:
40
性別:
非公開
誕生日:
1983/06/25
職業:
契約社員
趣味:
ビルバク
自己紹介:
 24歳、独身。人形のルリと二人暮し。契約社員で素人作家。どうしてもっと人の心を動かすものを俺は書けないんだろう。いつも悩んでいる……ただの筋少ファン。



副管理人 阿井幸作(あい こうさく)

 28歳、独身。北京に在住している、怪談とラヴクラフトが好きな元留学生・現社会人。中国で面白い小説(特に推理と怪奇)がないかと探しているが難航中。

 Mail: yominuku★gmail.com
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このブログは、友達なんかは作らずに変な本ばかり読んでいた二人による文芸的なブログです。      
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  その1
  その2
 
 2日に渡って伝えてきた《ホームズの盗作スキャンダル》(注:このタイトルについては転載先のKINBRICKS NOWの表記に従うことにします。私が付けた《ホームズがスキャンダルされた》はエキサイト翻訳すぎた)も3回目の今回で最後です。


 ここでは劉臻と新星出版社を痛烈に批判した陳一白が、前回の劉臻の反論に対して最終通告とも見える再反論を加えています。以下は9月11日にお馴染みの東方早報で発表された陳一白の記事です。
 
 


《こじつけの弁解をしても剽窃の事実は変えられない》
(狡辯、改変不了剽窃的事実)
 

 《ホームズの盗作スキャンダル》を執筆したとき、私は【ベルヌ条約】や【中華人民共和国著作権法】及び【出版管理条例】に対して重大な違反行為をした新星出版社が【ホームズ全集】の回収を発表するなんて別に思っていなかったし、劉臻氏が自らの剽窃行為をあらため、レスリー・S・クリンガー氏や全集を購入した読者に対してお詫びをするということも期待していなかった。


 【上海書評】で当該文章を発表したのち、新星出版社は案の定亀のように首を引っ込める作戦を取った。一方では返事をせず、相手にもせずに有耶無耶にする厚かましい態度を取り、もう一方では京東ネット上で共同購入の形式をとって低価格で違反出版物を投げ売りしている。


 率直に言えば、これらは私の予想を出ないものだった。しかし、劉臻氏が9月4日に【上海書評】に掲載したあの文章《対《福爾摩斯被窃醜聞》一文的回復》には深い同情と訝しさを感じずにはいられなかった。

 
 
 前回の劉臻の反論に不満を示す陳一白。彼はこのあと改めて劉臻の問題点を取り上げてその行為を非難します。そして、劉臻が反論の中で述べた『慣例』の是非を読者に問いかけます。つまり、その『慣例』が事実なのだとしたら、海外のホームズ研究家のベアリング・グールドやクリンガーも劉臻同様に先人たちの成果を盗用していたのか?という単純な疑問を投げかけているのです。


 この疑問を確かめるために陳一白は驚きの行動に出ます。以下はまた抄訳です。
 


  
 やむを得ず、私は劉臻氏も賞賛を惜しまない“アメリカの著名なホームズ研究家”レスリー・S・クリンガーにメールを送るしかありませんでした。私はクリンガー氏に端的に2つの問題を提示しました。1つは、彼(注:クリンガー)の注釈とウィリアム・ベアリング・グールドの注釈はどこが違っているのか?ということ。2つ目は、彼は新星出版社と劉臻氏が著作権違反をしたと考えているのか?ということです。

 10時間以内にクリンガー氏から返信が来た。1つ目の質問に対する彼の答えを翻訳して以下に記す。


 
 ベアリング・グールドの作品は非常に重要であり、私は常日頃、自分の本は【彼の肩の上に立っている】と言っている。総じて言えば、私の考え方とは、もしベアリング・グールドがとある内容に注釈を付けるのなら、私も1つ付けるということだ。

 私はベアリング・グールドの注釈の引用元を調査したのだが、悔しいことに彼の多くの注釈は他の本から引用されていたが説明が付いていなかったのだ。彼は本を出版する前にこの世を去っているので、この問題に関して言えば本来ならば解決できるはずだと信じている。

 自著《ホームズ参考文庫》で私は、引用している資料の出所を非常に気を配って明記している。確かに、《参考文庫》には第三者からの引用句が数多くあるが、私はその一つ一つに出典を表示している。

 ベアリング・グールドは膨大な時間と注釈を『年表』(注:原文では系年)、つまりストーリーが起こった日付の確定に費やしていた。私はこれに関して興味があまりなかったので、15部からなる異なる年表から取り出したものを関連する資料として付録に添えた。
 
(中略)
 
 当然私はベアリング・グールドの作品を参考にしたが、他の引用元もある。私の参考書目録は40ページにも及んだ!
 
(中略)
 
 細かい計算はしていないが、私がホームズの小説に対して加えた注釈の5%~10%程度が正真正銘私個人のオリジナルの見解である。1902年以来、人々は絶えずこの小説の研究を発表していったために現在新しい創見を提出することは困難だ。だが、確かに少なくはない私個人の意見が今では討論の対象になっていることを誇りに思う。

 
 
 アメリカからレスリー・S・クリンガーを引っ張ってきた陳一白はクリンガーと劉臻の仕事ぶりを比較し、注釈のつけ方ひとつを取っても前者がどれだけ『ホームズ研究家』として優れているか述べる。
 

 また2つ目の質問、新星と劉臻が犯した著作権侵害の是非に対するクリンガーの返事をこう転載する。
 

 『そりゃ当然著作権侵害だ。もう私はノートン出版社に通知済みである。あとは法務部が取るべき行動を取るだろう』

 
 このあとも陳一白が劉臻の反論を一つ一つ摘出して再反論を加えているのだが、今後は海を越えて出版社同士の話し合いになる可能性が高いこの話題で、個人同士の応酬をこれ以上取り上げる意味はない。
 

 そもそも陳一白の指摘も劉臻の言い訳も根本的な問題からずれているのだ。両者とも相手の言葉尻だけを捉えて、自分に有利な意見ばかり言おうとしている。

 
 劉臻に関して言えば新星出版社から受けた仕打ちは考慮に値する。だが陳一白に《ホームズ全集》の注釈の不備を指摘されるまで、不手際な処理をした新星を訴えてもおらず沈黙していたのに、突如受けた批判に対して理解が足りないと反論するのはあまりにも自分本意すぎる。

 読者は書物からしか事情を汲み取れないだろう。
 


 そして陳一白の方は、劉臻氏は句読点の使い方を理解していないせいで先人の見解をまるで自分の意見のように書いているように見える。と劉臻にまるで大人気ない批判をしている。

 また国際的な新聞のバックナンバーはネットで検索して読める、という劉臻の反論を受けて、2000年1月1日以前の【The Times】がネットで検索できるんだったら発言を撤回するが、逆にもし見つからなかった場合は盗用を認めるしかないぞ。というやり取りはまるで子供の喧嘩である。
 


 《9月26日:追記》
 陳一白の切った大見得に対し豆瓣では、【The Times】を初め各種大手新聞のバックナンバーがともすれば創刊号まで遡れるという紛れもない事実が挙げられている。
 参考サイト:豆瓣・陳一白が指摘する【The Times】検索問題について
 :The Times タイムズ・アーカイブス

 昔の【The Times】が読めるかどうかはそもそもこの問題の争点じゃなかったのに、どうして墓穴掘っちゃうかな。
《追記終わり》

 
 
 さて、アメリカにまで飛び火したこの《ホームズ全集》注釈盗用問題。劉臻の言葉を信じるのなら、本来であれば《ホームズ全集》に掲載されるはずだった序文参考書目録が2つとも未収録だったことが、そもそもの原因です。
 

 では何故新星出版社はその2編を添削対象にしたのでしょうか。よしんば、劉臻が出版社の予想を超えるページ数を提出したのが理由の、半ばやむを得ない処置だったとしても、そこは執筆者である劉臻に一言かけるべきでしょうに。
 
 また、両者は豆瓣で契約書内容の食い違いを見せる醜態を演じましたが、彼らの間に交わされた契約書には、校正後の原稿は作者に確認し校了のサインを貰うというごく当たり前の規約は書かれていなかったのでしょうか。
 


 著作権侵害で訴訟と言うことになれば気になってくるのが責任の所在です。発行元の新星出版社と注釈者の劉臻、この問題の責任を負うのはどちらなのでしょう。

 クリンガーの注釈本も新星版《ホームズ全集》も持っていない私には、劉臻の注釈がどれくらいクリンガーの注釈を翻訳しただけなのかわかりません。削除された参考書目録の中にクリンガーから引用している出典の原文が記載されていた可能性があることも捨てきれません。
 (まぁそれをやっていても劉臻は【注釈者】という肩書きをもう名乗れないと思いますが)


 もしも彼らの行為が著作権侵害に当てはまり、クリンガー側から訴えられたとしても、両者には誠実な対応を心がけていただきたいです。


 
 今回の一件で中国の推理小説界から再びいろんなものが遠のきました。しかしそれでも新星と劉臻(ellry)の今までの活躍と功績を知っている読者は見捨てずに支えてくれているわけで、彼らのためにも1日も早い真相の解明が望まれます。
 

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