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栖鄭 椎(すてい しい)
年齢:
40
性別:
非公開
誕生日:
1983/06/25
職業:
契約社員
趣味:
ビルバク
自己紹介:
 24歳、独身。人形のルリと二人暮し。契約社員で素人作家。どうしてもっと人の心を動かすものを俺は書けないんだろう。いつも悩んでいる……ただの筋少ファン。



副管理人 阿井幸作(あい こうさく)

 28歳、独身。北京に在住している、怪談とラヴクラフトが好きな元留学生・現社会人。中国で面白い小説(特に推理と怪奇)がないかと探しているが難航中。

 Mail: yominuku★gmail.com
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このブログは、友達なんかは作らずに変な本ばかり読んでいた二人による文芸的なブログです。      
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 前回の【東野圭吾、中国の海賊版に激怒。版権許可取り下げ】のニュースですが、ネットの反応を見るにどうやら本当らしいです。
 26日にはこの件に関するニュースが報道されました。
東野圭吾が『出て行った』背景
 
 
 マイクロブログにありがちな流言飛語の類だと思い、ガセネタであることを見越してブログに取り上げたのですが、まさか本当に東野先生が憤慨してらっしゃるとは。
 
 せっかくマイクロブログの続報や出版社側から噂を否定する公式発表が出たときのために、『釣られたクマー』のAAまで用意していたのに、とても残念です。
 
 
 しかし肝心の東野圭吾や出版社側からの公式発表はまだありません。なので確定していない以上ネットの反応だけを見て答えを出すのは早計かもしれません。
 
 だけどガセネタだとしたら、出版社側はベストセラー作家・東野圭吾が中国から撤退するという大ニュースに対応しなければいけないはずです。にも関わらず、噂を否定するコメントがどこからも出ないということこそが、このニュースが真実だという何よりの証拠なんじゃないでしょうか。
 
 なんかUFO肯定派みたいな論調になってしまいましたが、ここは最も早く速報を流した推理小説家出版関係者(どうやら版権バイヤーのよう)を信じて先に進みましょう。



 dongye.JPG

 信頼できる筋からの情報によると、東野圭吾はもう中国に新作を出版する版権を与えない。既に契約済みのは別として



 dongye1.JPG

 アップルストアに電子書籍版の東野圭吾全集(簡体字版と繁体字版)が売りに出されているのを見た東野が中国語の版権を与えないと宣言した。


18日にマイクロブログに流れた第一報と続報

 

   ・発端・
 
 そもそも何故東野圭吾が正規版の版権を中国側に売らなくなったのか。しかも簡体字版(大陸版)と繁体字版(台湾・香港版)両方という念の入れようです。
 
 版権取り止め騒動はアップルのapp storeに電子書籍版の東野圭吾全集
(まだ現役なのに)が売りに出されていたのが原因と言われていますが、根本的な問題は海賊版の存在にあります。

 
 路上や書店で安価で売られている粗悪な作りの書籍や、無料で読める電子書籍を禁止することは現時点では現実的ではありません。ならば海賊版の原型である正規版自体を取り上げるという選択はおそらく苦渋の決断だったのでしょうが仕方のない判断かと思えます。

 
 何せオリジナルがなければコピーが生まれようはずがありませんから。
 


 さて、今回の騒動は8月18日にとある推理小説家が新浪微博につぶやいたことが発端ですが、その知らせを受けた中国のマイクロブログや掲示板では多種多様な反応が見られました。
 
 


   ・百年の孤独の奇跡・


 例えば、上記のニュースでも触れられていますが、東野圭吾の中国市場撤退を【百年の孤独】出版の例に置き換えて、未だ希望を捨てないネットユーザーの姿が散見しています。
 
 
 何故ここでガルシア・マルケスが出てくるのでしょうか。
 
 
 実は今年の6月頃から書店で平積みになっている【百年の孤独】を見る機会が増えました。今更こんな名作をアピールする必要性があるのだろうか、と訝しく思っていたのですが、その原因がようやくわかりました。
 
 
 百度百科の情報で恐縮なのですがここにガルシア・マルケスと海賊版の闘争の歴史が記されています。
 百度百科・百年の孤独

 
 マルケスの代表作『百年の孤独』はこれまで少なくとも4度中国でその翻訳版が刊行されました。しかしその全てが実はマルケス側の許可を取っていない海賊版だったのです。その海賊版の多さは1990年に中国の書店を訪れたマルケスに『オレが死んで150年経ってからじゃないと中国に版権は渡さねぇ、【百年の孤独】だったら尚更だ』と言わしめたほどです。
 

 だから2011年5月30日に中国語の正規版が出版されたことは奇跡のような出来事だったわけです。

 
 マルケスの前例を目の当たりにした東野圭吾の読者が奇跡の再臨を待つ気持ちはわからなくはないです。しかしマルケスは中国で正規版出版を認めるに当たり1つの条件を出しました。それが【百年の孤独】を含むマルケスの著作の海賊版の排斥です。

 
 つまり東野を中国に引き戻すためには結局のところ海賊版問題を解決しなければならないのです。
 
 
   ・東野バブル・

 マルケスの【百年の孤独】の版権には100万ドルの価格が付いたそうです。では、果たして一度中国から手を引いた東野圭吾にはいくらの値段が付くのでしょう。
 
 2010年のasahi.comには東野の【白夜行】が21万部、【容疑者Xの献身】が20万部、【放課後】が13万部もの売れ行きを見せたという記事が載っています。
 中国 東野圭吾ブーム(2011年9月2日)
 
 
 出す本全てがベストセラーとなった東野は2010年中国で最も稼いだ外国人作家ランキングのトップ10入りを果たします。
百度百科・中国で最も稼いだ外国人作家ランキング
 

 ちなみにこの記事に出ている新経典文化とは東野圭吾のほかに村上春樹や宮部みゆきらの作品を取り扱い、ついにガルシア・マルケスを口説き落として【百年の孤独】の版権を手に入れた名うての版権管理会社?(出版社ではなさそう)です。


 
 またこれは中国語のニュースサイトですが、2011年7月の第一財経週刊に【狂ってる推理小説】と題した東野圭吾バブルを報じる記事が掲載されています。
第一財経週刊発 新浪財経・瘋狂的推理小説

 

 08年中国で【容疑者Xの献身】が大ヒットをしてから東野の著作の版権は急騰した。推理小説としては一般的な値段だった30万円という版権料は50万~100万に跳ね上がり、300万~400万の値段がつけられた作品も少なくない。そして、

「去年東野圭吾が書いた、とある小説の版権料は600万円まで高騰した」

 そう語るのは出版社・北京鳳凰雪漫文化有限公司の総経理である鐘擎炬氏。彼はマイクロブログで東野圭吾版権停止問題の第二報を書き込んだ人物です。
 
 
 記事によるとこの版権料は小説家自身に支払われるらしいです。また東野圭吾は講談社で出版した小説の版権は講談社に委託し、その他大部分の作品の版権は彼の事務所が管理しているようです。
 
 
 
 出版すれば確変並みのベストセラーが見込める作家を抱えたいのはどの出版社も同じです。東野圭吾は本来なら狭く浅かった中国の推理小説市場を一気に開拓しました。2万部でベストセラーと言われた中国の推理小説業界は彼がいる限り縮小することはなさそうです。
 
 この記事はマイクロブログや掲示板で言われた【中国市場は大きいんだから版権取り止めなんかあるわけがない】というコメントを補強します。
 
 
 では作家側にとって中国市場はどうなのでしょうか。
 
 
 今回の一件とは無関係ですが≪推理の神≫こと島田荘司は以前Twitter で、中国で翻訳小説を出版したときに発生する印税に関するツイートをしました。
 
 
  URLも貼れなくて申し訳ありませんが(モバツイも見られなくなるんだもんなぁ)、2月8日付けのツイートで先生はこう仰っています。

 

 S_S_Kingdom

 最近はからずも、北京、新星出版等の依頼で、日本人作家の中国出版窓口みたいになっている。でも人民元切り上げがなくては、5万部売れても1万部の感覚。さらにこれからエイジェント2%、出版社3%の搾取で、印税5%、5千部の感覚になるから、これでは作家に勧められないよね。


 
 
 中国でいくら売れようとも最終的に作家の手に入る印税は本来の売り上げの1/10程度にしかならないらしい。
 
 反面、東野圭吾は2010年最も稼いだ外国人作家ランキングによると530万元(約6,400万円)もの印税収入を手にしている。

 この収入がたった5%の印税から来ているのだとしたら、東野圭吾の作品は一体何百万部売れたんでしょう。1冊25元の小説が100万部売れたとしたらその印税は単純計算して125万元(約1,500万円)です。
 
 
 しかしこの多額の印税の裏には著者や出版社側に決して行き渡らない不法な金銭が動いています。それが海賊版による売り上げです。
 海賊版が国内外の作家たちの収入を圧迫していることは今更言及するまでもありません。
 
 海外の作家は海賊版に目をつぶって正規版を購入する読者のために版権を売り続けるか、不当な利益を掠め取る海賊版を撲滅するために正規版の出版を取り止めるかの選択ができます。
 
 東野圭吾は多額の版権料を支払う出版社や安くはない本代を捻出する読者のために敢えて版権委託の禁止に踏み込んだのではないでしょうか。
 
   ・ネットユーザーの本音・


 東野圭吾の本が中国で読めなくなる事態に一番素直な驚きを見せたのは中国人の読者です。
 
 
 ネット上には作品が二度と読めないんじゃないかと危惧する声、東野圭吾を恨む声、海賊版に反対する声など様々な反応が見られました。
 その中には『正規版がなくたって誰かが翻訳するさ』と開き直りの声もあり、海賊版問題は依然として根深いことを思い知らされます。

 
 これは知人から聞いた話ですが、大陸には推理小説の電子書籍版を専門的に作るサイトがあるそうです。その組織は大陸よりも出版が早く値段も高い台湾の繁体字版を購入して、数日後にはネットに無料で作品をアップします。
 
 
 8月16日に台湾で正規版が出たばかりの東川篤哉の長編推理小説
【謎解きはディナーのあとで】を簡体字に訳してネットにアップロードしたのもこのサイトの仕業だそうです。
 
  
 台湾の掲示板には悔しさに滲むコメントが書き込まれていました。
 
 「なんでいつもいつも大陸のネットユーザーがやった失態のせいで俺たちが巻き込まれなきゃいけないんだ」
 Cbox
 
   ・今後何をすべきか・

 今回、東野側が下した処置は以降の新作の版権を譲らないというもので、既に版権受け渡し済みの作品は引き続き出版して良いそうです。中国市場完全撤退という最悪の結末こそ迎えなかったので、東野圭吾作品は今後も店頭に並びます。
 
 
 注目すべきは近い将来に新作が出たときの中国人読者の反応です。
 

 そのとき彼らは悔しげな眼差しで日本を見つめるのでしょうか。それとも懐を痛めない最新の電子書籍版を読んで優越感に浸るのでしょうか。
 
 
 上述のガルシア・マルケスは中国の書店に並ぶ自著の海賊版に憤慨し、自分の目の黒いうちは中国に版権を渡さないと宣言しました。
 
 数年後再びネットを見た東野圭吾が、存在しないはず中国語版の海賊版を目にしたときなんと思うでしょうか。
 
 読者がいまするべきこと。それは東野圭吾の決断を重く受け止めて、海賊版と正しく向き合うことなんじゃないでしょうか。
 
 
 最後に、中国の推理小説家であり自身も電子書籍の被害に遭っている御手洗パンダのコメントを抄訳してここに転載します。
kuma.JPG

 
 ≪みんな電子書籍にやられた≫

 東野圭吾が中国に版権を渡さないというニュースを聞き、初めは驚いたが理由を知って納得した。東野が下した決定についてなんら話し合うことはないと思う。
だが東野に反対する声もある。
 

 まず1つ目は、版権をくれないなら今後も自分たちで翻訳してみんなに読ませれば良い。と言ったものだ。
 
 海賊版作りは今後も続けられるだろうが、東野は自分の作品が無断でコピーされているのを見て行動に出ただけだ。彼の行動に中国はどう応えればいいのだろうか。

 東野は中国の海賊版排斥運動の手助けをする必要はなく、この決定は単に海賊版に対する自分の立場を表明しただけに過ぎない。海賊版が横行し版権意識のない中国に自作を提供したくなかったのだ。
 
 2つ目は、東野はツンデレだ。海賊版を作らなかったら中国にいるお前の読者はどうなる?というものだ。
 
 彼らの言葉に隠れている真意は、版権をくれないんなら俺たちも読まない。それか、だったらいつも通り海賊版を見るぜ!である。

 版権が取り上げられても中国の読者はこれっぽっちも反省しておらず、むしろ作者の我侭な行動と考えており、ある種の宣伝とすら思っている。

 一個人が自分の権利を守るためにとった公正で正当な行動を、ツンデレだとか宣伝と思うのか?これには私もこの国の道徳を疑わざるを得ない。
 
 
 3つ目は、東野は結局のところ日本人だから中国の情勢を考えていない。海賊版が横行し電子書籍がアップロードされるなんて中国じゃ大したことじゃない。というものだ。
 
 確かに中国の社会状況はそうである。中国人には物質主義が蔓延しており文化や知識といったものを軽視している。今回の東野の判断は中国人にとって衝撃的だったのではないだろうか。

 しかし中国は間違いを認めない国である。東野の荒っぽい決定でも何も変えられない。

 電子書籍版の製作組織が増長し、日に日に広大になるこのインターネット時代に作家と作品に対するダメージは目に見えて大きくなっていく。

 作家と作品が好きだから電子書籍を作るという人間は知っているのだろうか、その行為は紛れもなく好きな作家と作品に強烈な一撃を与えているということを。
 


 ランチを無料で食べたい。この考えは他人の労働価値を軽視し、厚かましくも他人の成功を横取りし、ついには労働で得た収入を奪い取ることである。

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