尖閣諸島の一件で日中関係がここ数日悪化したみたいで、在中の日本人は大使館から行動を慎むよう注意を受けた。そして9月18日は反日デモが起こるので特に気を付けるよう勧告されたのだが、あんまりにやることがないので見学しに行ってしまった。
日本大使館がある北京市の建国門はいつもながら車輛で賑わっており、これからデモが起こる風景には見えなかった。しかし大使館に近付くにつれて公安警察の車と人間が増えてきて緊張感が高まる。建国門はもともと各国の大使館が密集している土地で、公安や警備員の姿など見慣れたものであるのだが人数の多さに物々しさを感じる。
大使館の周りには行けずに一般人は大使館から若干離れたホテル周辺で足止めを喰らわされていた。
ホテル周辺の道路はテープが張られて多数の公安と野次馬がたむろしている。遠くの方から時々聞こえる怒声というか罵声というか、肝を冷やす大声に怯えていると、ホテルの陰で中国旗を配っている集団の姿が見えた。
まだデモは始まっていないそうだし、周りにいる人間はみな単なる見学者なのに周囲の視線が恐ろしい。彼らがボクに暴力を働かないってことは理解しているのだが、万が一何か起こったにしてもボクを守ってくれるわけでもないんだと考えると後悔した。中国旗ぐらい準備してくれば良かった。
しかし、アウェーにいる興奮感も沸々たぎる。こうなりゃ公安に怒られるまで大使館の近くに行ってやろうかと歩を進めると、見知った顔を見つけた。留学生時代からの日本人の友達だった。
9月も中旬になったというのに外を歩くと汗が吹き出す彼岸前。しかし今年も夏に40度を記録した北京に住む人々は涼しげな顔をして道を行き交う。
読書の秋やらスポーツの秋やら言われるこの季節は動き出すのにふさわしい時期なのだろう。道端には真夏の間には見かけなかった人々の姿を眼にするようになった。
9月に入って乞食の姿をちらほら見かけるようになった。それも同じパターンの乞食を4組も。
乞食については以前も書いたが、最近見かける乞食はでも触れた、一人が布団に寝てもう一人が通行人に向けて土下座をしている乞食だ。
布団に寝ている乞食は大抵白髪の老人で寝返りも打とうとせずじっと仰向けになっている。そして彼の傍らで土下座をしている人間は年齢も性別もまばらである。しかし中年ならばその老人の子供で同じ老人ならば彼らは夫婦なのではといろいろ想像を膨らませられる組み合わせだ。
この土下座乞食の乞食方法はそのものズバリ土下座である。ただ土下座と言ってもずっと顔を伏せているわけではなく、「謝謝、謝謝」と口にしながら何度も何度も首を振るのだ。
北京で暮らしていれば決して珍しくない組み合わせなのだが、先日見かけた乞食には驚いた。
中国の書店には中国語訳された日本の書籍が平積みされている。人気はやはりミステリだがエッセイ系も多く売られており、一体誰が目を付けたのか疑問視するような本もある。
以前書店で中国語訳された『来自水的信息』(水からの伝言)を見かけたときはとうとうここまで来てしまったかと恐ろしくなったものだ。日本ならネットやテレビで検証をしているが、ここ中国ではなんの検査も通されず大勢の人間に読まれるわけだ。日本でも批判の対象になっている問題の本が外国で読まれて良いのだろうか。
しかしその心配は杞憂に終わり、『来自水的信息』は反論すら出ることもなくブームにすらならなかった。中国の教育現場で採用されなくて良かった……
そしたら先日日本人向けフリーペーパーA誌を読んだらエライ告知が書かれてた。
とある音楽教室で「水の結晶に見る、水と音楽の不思議」という講座をやるというのだ。
アワワワワワ(((( ;゚Д゚)))
帰宅途中に交通事故を見た。乗用車と2人乗りのオートバイが別々の車線からカーブを曲がる際に接触した事故だ。
車がスピードを出さずに走るのは北京では当たり前の交通事情だ。オートバイに乗った二人も車体に接触し転倒こそ大した怪我はなさそうだ。
だが車から出て来た人間を見て厄介な問題になりそうだと感じた。乗用車には乗客がいた。車の助手席から降りたのは白人の外国人、つまり乗用車は黒車(白タク)だったということだ。
憮然とした表情の運転手とは違い、罪悪感と気恥ずかしさを浮かべた外国人は如何にも居心地が悪そうで倒れている二人を見ている。心配をしている風ではない。
ノーヘルで二人乗りのオートバイと黒車、果たしてどちらが警察に連絡するだろうか。北京の交通状況は窮屈でせせこましい。車のナンバープレートで運転の制限をかけているがそれも焼け石に水程度の効果しかなく、ドライバーは快適とはほど遠い運転をしている。
車はスピードを出してはいないので事故が起きても重大な怪我には及ばない。しかし事故となればただでさえ狭い車道に車を放り出してドライバー同士が言い争う。冷静に電話を掛け保険会社?に連絡している状況も見かけるが、熱くなりすぎたドライバーの警察が来てもまだ言い争っている姿も良く見かける。
しかし今日のようなケースの場合、理はどちらにあるのだろう。普通の車両同士の交通事故でさえお互い自分に非があることを隠して相手が悪いと指摘しわめくのが常なのだ。中国の法律でノーヘルは合法だろうが、2人乗りは不明だ。そして黒車は公然の存在ではある物の全くの非合法である。
すねに傷を持つ両者の言い争いがこれから起こるであろう事故現場をあとにして、おそらく何の罪もない外国人が一番可哀相に思えた。
一ヶ月半北京から離れていたボクは最新の北京情報を収集しに行こうと日本人が経営している近所のカフェで日本人向けフリーペーパーを持ち帰った。
その中の一冊に北京のナイトスポットを紹介している雑誌がある。スナックやクラブの広告には雑誌の規定で人物の写真を使ってはいけなかったり、扇情的な言葉を載せてはいけなかったりする。だから各雑誌ともに間接的な表現を用い、写真がダメならとイラストを持ち出してくる。
この雑誌、けっこう前から明らかに日本のイラストを無断使用していて読者を楽しませてくれていたのだが今月号にとんでもない人物がスナックの広告内にいた。
ハルヒがいるならオレ、貯金切り崩しても通うぜ!!
と意気込む客がいるのだろうか。ターゲットは30~40代のオジサンだと思うのだが。でも雑誌の中で一番目を惹いたのがコレだったりする。