それは人から人、メディアからメディアの伝播によって原話が変貌して中国社会に根差すような都市伝説になったのかもしれません。
もしくは日本の『タクシー幽霊』とアメリカの『消えたヒッチハイカー』のように偶然にも内容が酷似しているだけなのかもしれません。
しかし既に話を知っている身としましては、前述の『紅いチョッキ』はやはり稲川淳二先生の『赤い半纏』の焼き直しとしか思えません。そのような視点で再び中国の都市伝説を調べてみますと、日本の都市伝説や怪談、そして2chのオカルト板発祥の怖い話が原型と思われる話が他にも見当たります。
例えば
・何を見たかわかった
古い女子寮に住む2人の女生徒が首吊り自殺者の出た部屋まで肝試しに行く。しかしその部屋には鍵がかかっていて扉が開かない。そこで1人が鍵穴から部屋を覗いてみたが、中は血のように真っ赤で何も見えない。
「なんでこんなに赤いの?」
彼女の呟きを聞いたもう1人の女生徒がその場に崩れ落ちた。そして真っ青な唇を震わせてこう言った。
「先輩が言ってたんだけど、その首吊り自殺をした女の子って、死んだとき目が真っ赤に染まっていたんだって」
これはネットの有名な怖い話『赤い部屋』に似ていますね。
日本の話だと、気になる女性が住んでいる部屋の扉のドアスコープを覗いた、または壁に空いた穴から隣の部屋を覗いたら、真っ赤で何も見えなかった。後日調べてみると、その人は眼病を患っていて目が血のように真っ赤だったことがわかった。という筋立てになっています。
見ているコッチが実は見られていた。恐怖が1拍子遅れてやってくる怖い話です。
またこんな話もあります。
ページを見ると台湾や香港の他に中国大陸に存在する都市伝説が列挙されています。この単語もとっくの昔に中国語に馴染んだようです。
では北京に都市伝説はないのかと再び百度で調べたら、その名もまさに『北京的都市伝説』といううってつけの掲示板がヒットしました。
50近くあるのでボクが気に入ったものだけ訳して紹介してみたい。下手な日本語訳なのはご容赦願いたいです。
1,故宮
みんなも知っている通り故宮って実は一部分しか開放していなくて、大部分は閉鎖されている。具体的な原因は誰もはっきりとは説明できない。けれど噂では解放(注:1949年の中華人民共和国成立のことか)されたばかりのとき、故宮博物館を夜中巡回している警備員がいつも奇妙な動物を目撃していたらしい。ネズミのようだけどとても大きく、豚のようだが恐ろしく速い。人が言うには皇族が東西宮の鎮宮で飼っていた獣らしい。
その後多くの人間がこれを捕まえようとしたが、60年以上が経った今でも、見た人間ばかり増えるだけでまだ誰も捕まえられていない。考えてみれば不思議だ。
いかんせん故宮は一度も観光したことがないので、その大部分が閉鎖されているとは知らなかったです。
ネズミや豚に似ているということはきっとありきたりな姿をしているのでしょう。ですが正体不明の奇怪な動物が今も故宮に暮らしていると考えると、改めて故宮の広さに思いを馳せます。
先日故宮博物館で間抜けな盗難事件が起きたときも、きっと警備員は泥棒をその動物だと勘違いして見逃してしまったんでしょう。
故宮にはこの話の他に数多くの異変が起きたと言います。