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年齢:
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性別:
非公開
誕生日:
1983/06/25
職業:
契約社員
趣味:
ビルバク
自己紹介:
24歳、独身。人形のルリと二人暮し。契約社員で素人作家。どうしてもっと人の心を動かすものを俺は書けないんだろう。いつも悩んでいる……ただの筋少ファン。
副管理人 阿井幸作(あい こうさく)
28歳、独身。北京に在住している、怪談とラヴクラフトが好きな元留学生・現社会人。中国で面白い小説(特に推理と怪奇)がないかと探しているが難航中。
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未来形小説 人形軟件 著:譚剣
2012/02/07 [Tue] 01:49
人形軟件
(humanoid software)
01霊魂上載
注:軟件…ソフトウェア
上載…アップロード
本書は
首届
(注:第1回)
全球華語科幻星雲賞最佳長篇小説賞
に輝き、
劉慈欣
と
韓松
や
倪匡
ら中国で著名なSF作家の支持を受けた作品だが、正直な話をすると内容よりも表紙に惹かれてジャケ買いをした。
本書は香港人作家
譚剣
により2010年に香港で発表され、翌2011年には中国大陸でも出版されたSF小説だ。つまり繁体字版(香港・台湾版)と簡体字版(大陸版)があるわけだが、私はその繁体字版の表紙に魅せられてしまった。
だから本当はこの香港版が欲しかったのだが、私は繁体字なんか読めないし、何より香港版を購入する手段がわからなかったので、妥協してアマゾンで大陸版を買った。
大陸版の表紙も悪くはない。壁に寄りかかる男性の体には青い光の筋が点滅して走っている。彼の背後に鏡写しに見える白いシャツを着た平凡な姿の男性は影が薄く、この世に存在していないようだ。大陸版は大陸版で本書の特徴を上手く表しているのだが、やはり香港版のこのアナログかハイテクかわからないサイバーパンク的なジャケットの方が面白そうな中身に見えてしまう。
中国大陸の読書家が海外作品を語る際、大陸版と台湾・香港版の表紙を比較して大陸版はやっぱりダサいと自嘲することがあるが、まさか自分まで大陸の人間と一緒に向こうの世界を羨むことになるとは思わなかった。
・主人のいないコピー・
SFでも科幻小説でもなく未来形小説というジャンルに分けられる本書の世界観は、現代と地続きしているかのように不自然さが少ない。
ネット世界で生活することが当たり前になったこの世界でネット依存症の人々は人形軟件という自らの分身をネット世界に作り、香港や東京などの現実世界を模した仮想空間に彼らを住まわせていた。
物語は香港人の主人公の寧志健がマフィアに拉致され交通事故死するところから始まる。そのほぼ同時刻に寧志健のネット上の人格である人形軟件の『我』も仮想空間の香港銅鑼港で正体不明の何者かに襲われ、大規模なテロに巻き込まれる。
すんでのところで逃げ切った『我』は主人の安否を確かめるために仮想空間の調査をするが、そこで自分の主人が死者の身分を偽証してネット世界に登録していたことを知る。一介の青年が何故そんなことをする必要があったのか。そして主人の分身であるはずの『我』は何故そのことを知らなかったのか。現実と仮想の事件はより混迷を極める。
そして日本ではネット世界の香港で起きた大規模なテロ事件が、1年前に起きたネットバンクへのハッキング事件と関係していることに気付いたハッカーの天照(現実の職業モデル)が事件の真相の解明に乗り出した。
・自己と犯人を探す探偵・
現実世界と遜色のない仮想空間で主体のないデータが現実に起きた事件を調査する未来形ミステリ。舞台を仮想空間に移しただけでは移動する上で都合の良いミステリだが、『我』を付け狙う謎の人形軟件やハッカー集団が障害となり真相になかなか辿りつけさせてくれない。
香港人作家譚剣は他書の
【輪廻家族】
が第1回島田荘司推理小説賞に入選しているだけあり、謎が謎を呼ぶ展開には手馴れた気配さえ漂わせる。
・変わった日本びいき・
日本人のモデルが『天照』なんてちょっとイタイハンドルネームを使っている理由は本書で少しだけ触れられていて、それが2作目の伏線ともなっているのだが、香港が舞台のこの本には日本色がやたら出ている。
人形軟件のコピーが次々生まれるようになるウイルスの名前が、小説の登場人物の口調や性格を真似る読者が多く、模倣者が後を絶たない作家の名前を取って
『村上春樹ウイルス』
なのは作家ならではの皮肉だ。
また2作目の舞台は秋葉原だと聞く。
作者の譚剣が日本を重要な役どころに置いたのは、日本が香港人にとって身近に感じる外国ということだけが理由ではないだろう。
検閲の壁もなく有志ばかりが自治を行う自由なネット世界を描いた未来形小説で、日本が重要な役割を担えているのであれば嬉しい限りだ。
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