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栖鄭 椎(すてい しい)
年齢:
41
性別:
非公開
誕生日:
1983/06/25
職業:
契約社員
趣味:
ビルバク
自己紹介:
24歳、独身。人形のルリと二人暮し。契約社員で素人作家。どうしてもっと人の心を動かすものを俺は書けないんだろう。いつも悩んでいる……ただの筋少ファン。
副管理人 阿井幸作(あい こうさく)
28歳、独身。北京に在住している、怪談とラヴクラフトが好きな元留学生・現社会人。中国で面白い小説(特に推理と怪奇)がないかと探しているが難航中。
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十二星座連続殺人事件 著:潘恩
2012/12/29 [Sat] 05:34
真本格、純推理、2010年オリジナル本格推理の幕を開ける作品…とちょっと目を引く文言が帯に書かれているが、中身はミステリファンの期待を手酷く裏切る内容だった。だが先入観を取り払って読んだ場合に全く別の感想が生まれる怪作の可能性もなくはない。
惨劇の舞台となる山頂の別荘は過去に何度も関係者が死んでいる曰くつきの物件であり、12室ある客室にはそれぞれやぎ座やおうし座などの12星座の名前が割り当てられている。
そこに集った無個性な主人公の『私』をはじめ、タロットや占星術ができるちょっと『イタイ』女や、洋楽とAVが大好きなチャラ男、本書で探偵役を引き受ける推理小説オタク、病弱な女など12人の大学生が殺人事件に巻き込まれる。第一の殺人が行なわれたあと、携帯電話の電波が不意に消え、更に悪天候で外に助けを呼びに行く事もできない完全な陸の孤島と化した別荘で、主人公はアマチュアの探偵を頼りに連続殺人を食い止めようとする。
クローズドサークル、密室殺人、占星術などミステリ小説の王道を踏襲しており、舞台設定もトリックにおあつらえ向きである。更に肝心の探偵が成り行きで探偵役になっただけの素人で、徐々に探偵の不可解な行動が目立ってくるという展開には十重二十重の謎の存在を感じさせる。
しかし死体の側に描かれた梅の花と『0914』という数字の意味について全く言及されなかったり、犯人の動機どころか被害者同士の関係性すら読者に考えるヒントも与えられないまま物語が佳境を迎える段になって、本書に漂っていた地雷臭がいよいよ顕著になる。
言ってしまえば本書はミステリ小説の体裁を取っているんだけど、探偵に推理をさせず、トリックなんてあってないようなもので、真実はすべて犯人の口から語られて初めて明らかになるという、ミステリの定石をことごとく裏切った内容なのだ。
極め付けは後半で犯人の口から明かされる13人目の人物の存在である。この人物が真犯人だったら本書を最初から読み返し、13人目の存在をなんとか探そうと読者は努力するだろう。しかし彼はイレギュラーで偶然別荘に侵入し、他の人物に気付かれることなく犯人に殺されてしまうだけの名前すら出てこない要員なのだ。
また別に大したネタバレにならないからここに本書でクローズドサークルが成立した理由を書くが、電気街で購入したジャミング装置で携帯電話の電波を妨害していたという拍子抜けな方法だ。
そして梅の花や『0917』という数字にもそれ以上の意味は含まれていない。
この本には読者と探偵が『推理』する余地と作者がトリックを創る『工夫』を欠いてある。まるで従来のミステリ小説を嘲るような肩透かしの連続に、帯文に釣られて購読した私のような読者はさぞかし面を食らうことだろう。
だが、もし『新本格』や『バカミス』などのキャッチコピーが付いていたなら、評価は真逆になったかもしれない。敢えて推理せず、敢えて工夫せず、敢えてミステリの常識を無視した本書の構成を単なる手抜きと見るか、それとも何かを教えてくれているのかと捉えるのかで『壁本』にも『傑作』にもなり得る。
このような評価に困る作品に遭遇する度に、中国ミステリの読者がもっと増えて欲しいと思うばかりだ。
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