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プロフィール
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栖鄭 椎(すてい しい)
年齢:
41
性別:
非公開
誕生日:
1983/06/25
職業:
契約社員
趣味:
ビルバク
自己紹介:
 24歳、独身。人形のルリと二人暮し。契約社員で素人作家。どうしてもっと人の心を動かすものを俺は書けないんだろう。いつも悩んでいる……ただの筋少ファン。



副管理人 阿井幸作(あい こうさく)

 28歳、独身。北京に在住している、怪談とラヴクラフトが好きな元留学生・現社会人。中国で面白い小説(特に推理と怪奇)がないかと探しているが難航中。

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 CIMG0301.JPG

 アマゾンの説明文を読んで小説の内容を知った気になったり、本の表紙だけを見て作品の雰囲気をわかった気になったりする読者にとってこの小説は地雷である。

 アマゾンの編集者推薦文には『福島県』が作品の舞台と書いてあるが、正解は神奈川県だ。そして、表紙にはセーラー服を着た少女と学生服の少年が佇んでいるが、本書の主人公は二十歳はとうに過ぎている中国人である。

 CIMG0299.JPG

 アマゾンURL:窒息-吾妻山霊異事件簿

 物語の冒頭でわざわざ静岡県に近い神奈川県の湘南地区と明記しているのに、何故よりによって編集者の推薦文で『福島県』と誤記されているのだろうか。

 それはおそらく作品で重要な役どころを担う『吾妻山』を編集者が福島県にある吾妻山と勘違いしたせいだ。
 

 アマゾンで本書を購入した読者は『吾妻山』つながりで作品の舞台がいつか福島県に移るのだろうかと無駄な勘繰りをさせられてしまう。しかも特典として本書に同封されている作者自身が撮影した吾妻山や江ノ島のポストカードにも『日本の福島で撮影した吾妻山』と書かれているので、ここまで来ると編集者のミスと言うよりも、編集者自身が福島の吾妻山に何か思い入れがあるんじゃないかという気がしないでもない。

 
 そして朝刊を読むのが好きで、タバコを吸い、そもそも中国からやってきた中国人と紹介されているのに表紙で何故か日本の学生服を着せられてしまっている主人公を見て学園モノを期待した読者は、ホラーとファンタジー色が強く日本の関東地方を次々移動する本作を読んで、いつ学園パートに移行するのか気が気でなくなるだろう。

 
 そのようなこともあり、編集者とイラストレーターに恵まれなかったなと同情するぐらい、中身は面白いジュブナイルものだった。
 


 
 日本で生活をする中国人の『私』を主人公にしているにも関わらず、異文化コミュニケーションの描写は作中でほとんどない。それは『私』の日本への理解度を表しているのだけど、そもそもこの作品には言い方は悪いが普通の、いわゆる一般的な日本人がほとんど登場せず、『私』の周りには自身の姉や来日前からの友人など中国人ばかりしかいないので、そもそも日本文化と衝突することがないのだ。

 また作中で『私』が遭遇する異文化圏と言えば、深山に存在する隠れ里や古い因習の残る閉鎖的な島など日本人にとっても異常な土地なので、本書から中国人の日本観を読み取ることは難しい。(そもそも作者にそのような意図がないが)

 
 自分が2人存在するというか、世界が2つ存在しているかのような感覚、そして過去と未来を行き来するような悪夢に苦しむ『私』が自身の存在に対してどんどん疑いを深めていく描写や、家族や友人のよそよそしい態度から作品の流れがサイコホラーになるかと思いきや、神社やら巫女やらが出てきて和風ファンタジーの様相を呈してくる。(日本が舞台だからわざわざ『和風』なんか付けなくて良いんだが、やはりどこか妙な『日本』らしさが感じられる)

 
 吾妻山の隠れ里の秘密を解き明かしたり、江ノ島の祭りで怪異に巻き込まれたり、日本という異国の更に異常な土地で完全な第三者である『私』が異変に巻き込まれ、異変を解決するというストーリーは諸星大二郎の『妖怪ハンター稗田礼二郎』と同じなんだけど、その役目を怪異に対する知識が皆無で何の変哲もない中国人が担っているというのが妙におかしい。
 

 本書のストーリーは作者の白夜が日本で実際に体験した事実を基に創られている。作品に出てくる地名が神奈川の二宮とか吾妻山とか箱根だったりして、作中に奇妙な生活感を漂わせているのはそのためだ。
 
 本書を読んでも『中国人から見た日本』をうかがい知ることはできないが、中国人でも日本の伝統や因習を日本人と遜色なく小説のネタとして昇華できることがわかる。

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