新型コロナウイルスによる感染症が問題視されてから、ちょっとした体調の変化にも敏感になった。1月初旬からずっと北京にいる自分は、コロナの影響で在宅ワークになったり、行動面で不便が生じたりして生活面での変化が多々あったものの、衛生面ではこの8月末まで肺炎とはほぼ無縁だ。しかし全くの健康体とも言えず、実は半年ほど前から主に腹部に違和感を覚えている。
日記を読み返すと、4月27日に発熱して腹痛を起こしている。熱は1日で引いたが、この腹痛とはだいぶ付き合う羽目になった。これまでの人生で腹痛とは下痢を伴うものだったが、この時の腹痛は逆で、人生初と言える便秘を体験した。それ以降ずっと下腹部の左右が痛み、終始膨満感を覚えた。毎日不愉快だったが、声を上げるほどの痛みもなく、それ以上悪化しないのでいつか治るだろうと放っておいた。
この時期にはまた手足のしびれも気になり出している。5月8日の日記にその記述があるが、手足の指先にしびれが走るのはその前からあり、これは不定期に一瞬だけ起こるので、神経がおかしいのかと思ったが、これも大事と捉えることはなかった。
その後、腹部の痛みや不快感は徐々に小さくなっていったが、完全に消えるということはなく、意を決して病院に行ったのは6月17日。最初は日中友好病院に行ったが、コロナのせいかシステムのせいか事前予約制になっており、またその時間に内科の医師がいなかったため、急遽龍頭クリニックへ行く。この数日前に北京の新発地市場で感染が確認されていたため、病院の予防対策が厳重になっており、龍頭クリニックでは市場や他の感染確認地に行っていないか聞かれた。
診察をしてくれたのはやや高齢の中国人男性医師で、流暢な日本語だったためストレスを感じることはなかった。聴診器を当て、エコーを取って出た答えが消化不良。特に左の下腹部からぐるぐると音が出ているらしい。医師からは、在宅ワークの運動不足が原因かも知れず、お粥やうどんなど消化に良いものを食べるようにと言われ、2週間分の薬をもらった。診察費などは3000元を超え、海外保険に入ろうかと数年ぶりに真剣に考えた。
薬を飲むとたしかにお腹の調子が良くなり、便のキレも良く、痛みも減った。だが飲み続けても消化不良が完治することはなく、むしろ効かなくなっている感覚を覚えた。
腹痛と並行していたのが左の脇腹から背中にかけた痛みだ。ベッドのスプリングがバカになり、背中が当たる部分が完全に凹んでしまい、起きるたびに背中が傷んだ。流石にコレはまずいと思って硬めのマットレスを購入して敷いたら痛みは幾分引いた。しかし左腹と背中の痛みは消えず、どうやら背中と腹の痛みはリンクしているのではと思うようになった。また左足の付け根も痛くなり出したと共に、左側の睾丸に違和感を覚えるようになった。
8月下旬になると腹部の不快感はほぼなくなった。でも相変わらず左脇腹がたまに痛む。それとともに今度は頭痛が起き、これもまた左側だから、自分の遺伝子で左側に傷がついているのではないかと疑うようになった。頭痛は当初左後頭部に起き、それが徐々に上り、左眉の上まで移動した。痛みは一瞬で、その瞬間、何かが傷ついたような破壊されたようなイメージが浮かぶ。「頭が痛い」のではなく「頭部が痛い」わけであり、頭部のごく一部、具体的に言うと左側の頭蓋骨と皮膚の間の一点の筋肉が緊縮しているかのように痛むのだ。
痛みが一匹の生きた虫のように左側の体を這い回っているみたいだ。いま一番気になるのが頭痛だから、眉まで来ている頭痛はこの後に眼球部など柔らかいところから突き破って出てくるかもしれない。それで体が快復するなら良いかもと思ったが、左目がなくなると困るし病院に行くのが面倒だ。
しかし、もういい年だ。寝れば治るという段階は過ぎ、体の不調に不安を覚えるようになった。何より怖いのが、痛みや不快感に慣れてしまい、それを当たり前として受け入れている現状だ。いま一番したいことは、日本に帰って病院で検査を受けることだが、このコロナ禍にあって中国と日本でスムーズな往来ができる日が来るのはいつになるのか分からない。そして、これぐらいならまだ真剣に考えなくてもいいかと思ってしまっている自分を客観視すると、愚かであり恐ろしさすら感じる。とりあえず今の状況を記録に残すためにこの日記を書いた。