贅沢は敵だ。でも貧乏はもっと敵だ。
今更言うまでもないけれど、自分は北京で暮らしている。
その生活は日本と比べれば不自由だが、一人でなんなく暮らしていける環境にある。
以前は朝昼晩の三食を買ってくるか外で喰うかしか選択肢がなかったが、食器や調理器具などが増えた今となっては、時間があれば自分で作った飯も食える。
傲慢な言い方いなるけれど、一般の中国人より良い暮らしをしてると思う。あくまで金銭面だけの話ではあるが。
さて、小金が貯まってくると今度は清貧に憧れるのが人間というもの。
せっかくの長期休暇なのだから、何か北京で日本的なことをしてやりたい。
そこで近所の高級デパート(レシートにマジでこう書かれてた)で偶然見つけたものが、ボクの清貧心を刺激した。
そうだ、漬け物を作ろう。
前川つかさの大東京ビンボー生活マニュアルというマンガをご存知だろうか。
上京した青年が東京のちょっと中心から外れたところで近所の住民と暮らす、1話5、6ページのマンガだ。昭和後期が舞台で非常にノスタルジックなのだが読者を泣かせたり怒らせたりする描写は一切なく、人情マンガでもないので何度でも読める。
このマンガの素晴らしいところは主人公たちの生活水準が食べ物で表しているところだ。とにかくこのマンガ、食い物がいっぱい出て来る。しかもB級グルメとかのレベルではない。
新聞紙に包まれた一個50円ぐらいのコロッケや揚げパン、ウナギ屋に行ったら食べるのは鰻重ではなくウナギの頭の串焼き、とC級グルメっていうかグルメという言葉を冠するのもためらわれるものばかりなのだ。
たまに凝った料理を作ると思えば、カレーをスパイスから炒めるクセに肉は入れないとか。
1話まるまる、白飯だけをどうやって美味く食うかにページを割くマンガなんてこれ以外ないだろう。ちなみにふりかけとかタラコなんてないから、マヨネーズとかバター乗っけて凌ぎ、最後は大家さんから貰った生卵をかけてた。
その中で主人公がカッチカチのフランスパンを使って、パン床という漬け物を作るぬか床みたいなものを作るという回があった。
それで漬けたかぶらの漬け物が旨そうなこと。
日本の大学にいたときから、いつか自家製の漬け物を作ってやろうと思っていました。パン床なら簡単そうだしと。しかしボクの股下以下の冷蔵庫では収納スペースがなく、それも叶わぬ夢となった。
そしてそんな夢も忘れていた。
しかし先日高級デパート(この差別感がたまらない)でぬか漬けの素を見つけてあのときの記憶が蘇ってきた。
早速その素とタッパーと野菜を買い込みぬか床を作ることに。ぬか漬けの素は日本からの輸入品なので日本語で書かれた説明を読めば、水を混ざればあとは野菜を漬けるだけらしいのだが、ちょっと不安になり母親にメール。(なんだろう、この自立してるようで依存してる感じ)
そんで、どうやら大丈夫そうなんでそのまま作ることに。
そして封を切ったら驚いた。全然イヤな臭いがしない。まるで豆乳のような、しかも豆乳を飲みやすくしたコーヒー豆乳のような香ばしい匂い。
スーパーで買った出来合いのぬか漬けの素だからだろうか、それとも炒ったぬかは良い匂いなんだろうか。
ベーシックに大根とニンジンとキュウリと茄子を漬けてみたが、一回目に漬けるものは美味しくならないのであまり期待しない。これからが大切なのだ。
これでボクの清貧生活が始まるのだ。
なんかカブトムシの幼虫を飼育してるみたいだなぁ。
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