超級学園 探案密碼/著:早安夏天
ライトノベル雑誌『意林・軽小説』に連載されていたライトノベルミステリ。だが正確に言えばミステリ風のライトノベルだろう。以前この作家の別の作品『推理筆記』を読んだことがあったが、それよりもパロディ成分は薄かったものの超常現象に探偵が立ち向かうという構図は似ていた。
校内に勝手に『福爾摩桑偵探社』という探偵クラブを作り、喧嘩など様々な問題を起こしている不良少女で自称『名探偵』頼小桑のもとにどこから見ても美少女にしか見えないいわゆる『男の娘』の陽簡安が奇妙な依頼を持ってきた。それは預言により死が運命づけられている大金持ちを犯人から守るという内容で、預言者曰くそれができるのは頼小桑しかいないということだった。
意気揚々と依頼を引き受ける頼小桑と何故かついてくる陽簡安は依頼人徐釘歌の屋敷に招かれる。そして腹に一物ありそうな大人たちが集まる屋敷に『地獄預言師』という預言者が現れ、彼の発した不吉な預言は参加者の死という犠牲で実現することになる。
ライトノベルミステリというジャンルにおいて超常現象としか思えない事件が発生した場合、それが論理的に解決できる謎なのかそれとも本当に超常現象なのかどうか読者は悩まされる。
本作では『預言』がそれに当てはまるのだが、結構早い段階で超常現象だと読者にバレてしまうのはちょっとネタバレが早い気がしたが、その後に参加者が死に、更に目を話した隙にその死体が消失するという正統派推理展開もあり、最低限の公正さは用意されている。
暴力探偵美少女と男の娘の主人公コンビに限らず、作者と同名の貧乏作家や謎の男Lなど個性的なキャラが沢山出てくる割には一人ひとりの掘り下げが浅く、続編を意識しているかもしれないが消化不良の感が強かった。
そして一番残念だったのはイラストだ。本書はライトノベルとして表紙に限らず各章の最初のページにイラストが掲載されていたのだが、実は雑誌連載の時はカラーイラストもあったらしい。そのカラーイラストが単行本版に掲載されていなかったことが誠に惜しい。