壹読
日本帰る前に近所のコンビニで購入した雑誌の一つ『壹読』。この本はゴシップ記事のない週刊誌的な内容で中国国内の問題や社会情勢に軽めの視点で切り込むというスタイルです。
今回私が買った雑誌に気になる内容の記事があったので紹介します。記事全文は下記のアドレスで読めますので気になる方はこちらに目をお通しください。
中国姓名:不重名的戦争
中国の名前:同姓同名にさせない戦い
http://www.183read.com/magazine/article_314109.html
内容を要約すると中国人の名前は時代の趨勢と不可分であり中国建国当初は「解放」だとか「建国」が多く、文化大革命前後には「衛紅」や「文明」などがよく見られましたが、中国人は姓と名の短さから同姓同名の人間が少なくなく、現在では子供を他人と同姓同名にさせないために通常使われない漢字を子供に付ける親がいるせいで、名前の読みづらい子供が増えたという現代中国の社会問題です。
一見しただけでは読めない名前と聞けばDQNネームやキラキラネームが思い浮かびます。確かに赤線を引いている漢字なんて中国で生活していて見たことありませんし読み方もわかりませんが、これも一種のキラキラネームでしょうか。
中国のキラキラネームと聞いて思い出すのが薄煕来の息子の薄瓜瓜です。
あと、本名は出せませんが私の中国人の友人に『炎尾燃』みたいなニュアンスの名前を持つ男がいます。要するに名字と名前に炎や氷などと言った自然属性が付いていて、更に彼の弟も『炎尾焼』のような個性的な名前でいた。ただし、今回記事で取り上げられている読めない漢字を使用した名前の問題は、漢字の組み合わせや発音の妙ではなく、単純に難読漢字を使っているだけですので、名前からあんまり創意工夫は感じられません。
こういう難読漢字を名前に使うことが通常となると例えば中国の小説のレビューとかにも影響が出るので、日本語の漢字にはない中国語はあまり使わないで欲しいです。
我的偵探路 著:孟広剛
本書は2006年に出版された中国初の私立探偵・孟広剛氏の自伝です。彼が中国で初めてとなる探偵事務所を興してから遭遇した代表的な事件が紹介されています。
タイトルの『我的偵探路』は翻訳すれば『我が探偵人生』とでも言い換えられるでしょうか。本書の表紙には『中国第一私人偵探真情告白 当代中国福爾摩斯探案伝奇』(中国初の私立探偵の真の告白 現代中国ホームズの事件簿)と書かれており、今から8年前の書籍とは言え探偵=ホームズという相変わらずの短絡的な連想に悲しくなります。中国ミステリも国産化の波に遭って霍桑とか宋悟奇とかの中国人探偵がクローズアップされたらいいのに。
孟広剛は初め公安で働いておりましたが公安だけではできる限界があると悟り、1993年に瀋陽で中国初の探偵事務所・『克頓偵探所』(アラン・ピンカートンのオマージュ)を立ち上げます。しかし、何しろ中国初ということなので役所も探偵事務所の申請など受けたことがないから全然受理されず、創設以前から苦難の連続だったようです。ですがやはり物珍しさもあってかメディアには好意的に扱われました。
ただ、存在こそセンセーショナルではあるもののミステリ小説のように警察の代わりに殺人事件を捜査するなどということはなかったようです。しかし本書で取り上げられている事例を見ますと探偵もその国の文化によってその業務に特徴があるということがわかります。
例えば、金持ちの旦那が愛人を囲っているから何とかしてくれという奥さんの依頼に対して、探偵スタッフがその愛人の彼氏となることで旦那が愛人に愛想を着かせ奥さんの所へ戻すという業務などは浮気調査ではなく別れさせ屋の範疇です。
また本書でも『ホームズすら遭遇しなかった問題』と紹介されている、有名ブランドの模造品調査などはいかにも中国という業務ですが現代ならば法律事務所の仕事でしょう。しかしこの事例、依頼人であるカミソリ会社のアメリカ本社が市場調査にわざわざ私立探偵をリクエストして実際に孟広剛にコンタクトを取る所なんかは、ちょっとズレているなと思います。
本書で紹介されている事例の中で私が一番面食らったのはとある腐敗分子をターゲットにした復讐の依頼です。女好きのターゲットの弱みを握るため孟広剛が使った手段は商売女を遣わしてその情交の様子を録画することでした。女性の協力もあって仕事は見事成功し、孟広剛は依頼人や女性とともに祝杯を交わすのですが、これって要するに『ハニートラップ』じゃないんですかね…
孟広剛の活躍は中国全土にとどまらず、日本のメディアにも取り上げられるまでになります。
「金の次は女か。楽をしてもうけてぜいたくしている証拠だぜ」と日本のテレビ番組でゲスな字幕を付けられている孟広剛。この番組を放送した日本アジアテレビ局ってどこなんだろう。
しかし現在、中国大陸で私立探偵は禁止され、2013年1月までに2,500人を超える私立探偵が検挙されたと伝えられています。
汚職官僚を暴きすぎた?中国で私立探偵を一斉検挙=2500人超えるとも―米華字メディア
そもそも中国ではだいぶ昔から私立探偵の存在は違法とされていたらしく、克頓偵探所が正式に営業した1993年7月から二ヶ月後の1993年9月に公安部から『【私立探偵事務所】的な性質を持つ民間機構の開設を禁止する通知』が発布されています。
ただ、その一方で孟広剛が探偵として大手を振るいテレビなどにも頻繁に出演していることから、この通知の強制力がどれほどのものだったのかが不明瞭です。本書に彼が何故取り締まりから逃れられたのかが書かれていないので推測するしかありませんが、孟広剛の元公安出身という経歴が活きたのか、それとも需要があってお目こぼしされていたのか、そもそもこの通知にそれほどの威力がなかったのかもしれません。
また、この通知は公安や武警などの警察機関が私立探偵事務所を組織したり関係したりすることを禁止しており、これが中国ミステリに探偵を登場させられない一種の『縛り』になっています。とは言え、『上に政策あれば下に対策あり』と言われる中国では、中国ミステリにも堂々と『探偵』を出せることができるのですがその説明はまた別の所で。
えげつない調査方法を駆使する探偵と大金を支払ってまでそこまでさせる依頼人、これじゃあお上から禁止されるのもさもありなんと言ったところですが、こんなんじゃ中国で探偵が子供の憧れの職業にはなるのはまだまだ先でしょう。せめてフィクションの中ぐらい格好いい探偵が描かれていればいいのですが、如何せん私立探偵が禁止されている世界では結局現実には存在しないキャラとして認知されるか、または警察と対をなすアンチヒーローになるのが関の山と言ったところでしょうか。
現実でもフィクションでも探偵が生きづらいのが中国という世界です。
時差党とは国外で生活しているため時差の問題があり母国の友人と交流する機会が得難い人々を指す中国語で、国外留学をしている学生を意味する場合もあります。(ちなみに日本と中国の時差は1時間しかありません。時差を感じる経験はあまりありません。)
本書で言う時差党は後者の意味合いです。あと、『党』とは言っていますが別に彼らが海外で徒党を組んで何か活動をしているというわけではありません。
この本はSNSサイト『豆瓣』で多くの中国人留学生の知人を持つ作者曽良君が各人の留学生活の思い出などを書いて投稿してもらい、それをインタビュー形式にしてまとめたものです。
帯には『留学生のリアルな成長を書いた10篇のストーリー』と書いてあり、アメリカ、ヨーロッパそして日本を含む海外各国で苦学する若者たちも苦労話や成功譚、そして留学希望者に向けたアドバイスが書かれています。
確かに『リアル』と銘打っているだけあって、友達だと思っていた他の留学生に騙されたり、下宿先の華僑に部屋を追い出されたりなどの留学苦労話はなかなか面白いのですが、それでも素人の海外体験記に過ぎません。海外生活で頼りになるのが人間関係ならば、自分を苦しめるのも人間関係である、程度の感想しか抱けず、ネットニュースならともかくお金を出してまで読むものではないなと思いました。
ちなみに作者の曽良君というペンネームは『ギャグマンガ日和』の奥の細道シリーズに登場するキャラクター『曽良』から取ったのだと思います。おそらくこの作者(女性)はオタクでしょう。
以前紹介した『料理美男図鑑』と同様の美男図鑑シリーズの第2、3弾です。『料理美男図鑑』は小籠包、寿司、おでんなどを美男子に擬人化させたイラスト集でしたが、今回のは若干趣向が異なっていて、数学教師や生物学者、エンジニアや弁護士などと言った各教科や分野に従事する美男子を描いたイメージキャラクターイラスト集になっています。
各キャラクターは彼らが所属するジャンルと関連性のあるダジャレのような名前になっています。例えばパイロットなら『斐翔』(飛翔)、数学教師なら魏季分(微積分)、企業家なら董士長(董事長)、配達員なら『宋惑』(送貨)などと言った具合に、各自の名前の発音が彼らの職業と関係のある単語と同じです。
探偵の夏羅刻(シャーロック・ホームズの中国語表記である夏洛克から)
検察官の鄭義(正義)
生物医学研究職員の柯隆(クローンを意味する克隆と同じ発音)
その他にエンリコ・フェルミやガリレオ・ガリレイ、アダム・スミスやマルコポーロなどといった歴史上の人物を美男子化させていますが、何故ここに孔子や諸葛亮孔明がいないのかがわかりません。あと中国独特の授業である中共党史のイメキャラとかも見たかったのですが、やはり中国関連のネタは弄りづらいのでしょうか。
(マルコポーロ)
続刊に『体育美男図鑑』の出版が予定されていますがこれは各スポーツをイメージするキャラクターのイラスト集になるのでしょう。キャラの名前とスポーツをどのように組み合わせるのか、作家たちの命名センスに期待しています。