謎の服毒自殺を遂げた有名女優白麗沙の葬儀に参列した主人公のフリーライター莫蘭(女性)はその席で弔辞を述べる麗沙の弟までもが突然の毒死に襲われたところを目の当たりにする。
莫蘭の恋人であり彼女に十数年思いを寄せる刑事高克は事件の背後関係を探ると、亡くなった白麗沙の周りで不可解な事件が多発していたことを突き止め、莫蘭とともに事件の謎を解明しようと奔走するが、彼らの周りでは次々と厄介事が発生しなかなか真相まで辿り着けない。
上記の「なかなか真相まで辿り着けない」ってところは粗筋というよりボクの感想です。
いや本当、ひと言で言い表せば
人間関係ウザ過ぎ!!
莫蘭と高克は付き合っているのだが彼ら二人にもただならぬ因縁があり、まず莫蘭は以前別の男と結婚をしていたがある女により仲を引き裂かれて離婚の憂き目に遭う。その女は高克の実の妹の高潔であり、現在は莫蘭の元旦那と結婚をしている。高克は莫蘭と真剣な付き合いをするために唯一の肉親である高潔と勘当しようとする。だがそれに心を乱された高潔は兄を散々責め、莫蘭を悪し様に罵倒し、ついには親が兄妹に遺してくれた実家を勝手に売り払ってしまう。
高克の職場環境もこじれており、警察の上司鄭恒松は白麗沙の友人と以前関係を持っていて、その友人が殺害されて一転殺人事件の嫌疑者になってしまう。彼の妹で同じ刑事の鄭氷は高克に恋をして高潔と手を組み莫蘭を出し抜こうと動き、高克にストーカー的な求婚を仕掛ける。
また莫蘭のイトコの喬納も同じ職場で働いており、過去の邂逅がもとで鄭恒松に惚れられ辟易する。更に部下である女刑事が実は白麗沙の私生児と同級生であり過去に事件に巻き込まれていたという事実まで発覚する。
作品内では目眩のするような濃厚な男女関係と切っても切れない肉親との絆のわざとらしいほどに強調されている。確かにミステリの根幹を作っているのは登場人物が意図せず紡ぎ上げた人間関係であるのだが、このクドさを抜けばこの作品は短編小説に生まれ変われる。
作中には大したトリックも存在せず、謎の解明は莫蘭と高克が足を運び様々な容疑者と話をすることで矛盾を突き止めるだけなので推理小説としては物足りないデキである。
しかし愛憎劇に目を向けるならば良作の部類に入るだろう。登場人物は事の発端となった白麗沙を中心にとても小さな輪の中でその輪の中で己の欲望を第一に考え行動する。その中で真面目に事件を追っているのは、フリーライターである莫蘭が唯一と言っても過言ではない。
そもそも白麗沙がとんでもない女であり、過去を調べると醜悪な男女関係が露呈されるがそれでも既に死んでいるので最終的には聖女のように扱われる。
それと比べて自分の我が儘で他人の幸せを潰そうとする登場人物たちには本当に苛々させられる。
コイツラ全員死んでくれないかなぁと願ってしまった。
一週間以上の時間をかけて読み抜く作品ではなかった。実はこの作品は《莫蘭シリーズ》と呼ばれていて、おそらく一作目から読んでいる読者にとっては莫蘭と高克の距離が縮む節目となる作品になったのだろうが、ボク個人としてはもう初期作も後期の作品も読みたくはない。
今回の読書で一番ショックだったことは、鬼馬星を調べようと百度で検索したら過去作品が全て掲載されているサイトを見つけたことだ。