1923~2013 日本推理的前世今生
1923~2013 日本ミステリの前身と現在
日系推理十大関鍵字
日系ミステリ十大キーワード
新星出版社の編集者であり日本人ミステリ作家との太いパイプを持つ中国ミステリ業界の実力者褚盟氏は冒頭の記事にふさわしく、日本のミステリの歴史を年代ごとに簡潔に説明している。
記事の中でジョン万次郎が日本ミステリの歴史に関わっていると述べているが、これは彼の著書『謀殺的魅影』から変わっておらず、著書でも今回の記事でも乱歩や横溝、清張、そして島田荘司も日本ミステリを語る際はジョン万次郎から始めたと主張している。
そして十大キーワードには四大奇書、変格ミステリ、東野圭吾路線など日本ミステリを語る上で欠かせない要素を挙げている。
昭和時代的通俗之王 江戸川乱歩
昭和の通俗王 江戸川乱歩
専訪 藤井淑禎
独占インタビュー 藤井淑禎
江戸川乱歩の紹介及び日本近代文学研究者藤井淑禎氏による日本ミステリにおける乱歩の地位が語られる。
従小説道理与推理小説伝統看松本清張
小説の法則とミステリ小説の伝統から見た松本清張
松本清張が社会派ミステリを書くまでに至った過程を当時の歴史背景を根拠に精密な筆致で記している。
和風万華鏡
日本推理小説諸面観
和風万華鏡
日本ミステリ小説の無数の姿
大陸では数少ないミステリ評論家天蝎小猪氏が個性豊かで独自色に富む作家と小説が生み出される理由を日本ミステリが現在置かれている5つの優位的状況から説明する。
専訪:島田荘司
本格推理之我的天職
独占インタビュー:島田荘司
本格ミステリは私の天職です
中国ミステリではもうお馴染みの巨匠島田荘司氏のインタビュー記事だ。『占星術殺人事件』を書くきっかけを語り裏話を披露してくれているが、最大の裏話は島田荘司推理小説賞に関する以下の文章の赤線枠内だ。
訳:島田荘司推理小説賞はすぐには儲けも見込めないから最初から3回で終わらすことにしていたんですが、台湾の『金車』(注:台湾の飲食品製造会社)の社長の娘が御手洗潔の大ファンで、父親にスポンサーになるよう説得してくれたおかげで第4回もできることになったんです。ただし、賞の名前の前に商品名が付くことになりますけど。
えっ、そんな事情があったの?!ってかここでバラしていいの?!
島田先生はサービス精神豊富でインタビューに対応し中国ミステリについても言及してくれているのだがここでは取り上げない。
専訪:綾辻行人
懸疑与恐怖是分不開的
独占インタビュー:綾辻行人
サスペンスとホラーは切り離せないもの
『Another』の続編を1、2作書きたいと述べているだけで他に目新しい情報はなさそう。麻雀好きって情報は中国人にとっては新鮮なのだろうか。
談到推理時我們談京極夏彦嗎
ミステリを語る際、京極夏彦に言及するか
京極夏彦先生の小説は中国ではサスペンスに分類されるらしい。どこに分類するか悩まされる京極夏彦の作品から『推理小説』というジャンルを語る。
専訪:伊坂幸太郎
在平凡的世界里書写奇跡
独占インタビュー:伊坂幸太郎
平凡な世界に奇跡を書く
インタビューによると伊坂先生はいま日本を舞台にした魔女狩り関連の長編を書いているらしい。
閑話 加賀恭一郎
加賀恭一郎に関する雑記
この本の企画段階では東野圭吾先生のインタビューも予定していたんだろうか。
専訪:馳星周
我写的是人内心的黒暗
独占インタビュー:馳星周
私が書いているのは人の心の闇
先生は最近周星馳(チャウ・シンチー)監督と連絡を取っていないらしいぞ。
筆尖上的異端者
非典型日式推理
筆先の異端者
非典型的な日系ミステリ
歌野晶午、麻耶雄嵩、泡坂妻夫など主流にはならない(?)ミステリ作家を取り上げている。
城市中的推理 推理中的城市
都市の中のミステリ、ミステリの中の都市
江戸川乱歩がなぜ東京を小説の舞台にしたのかその考察を述べている。
推理小説地図
尋找亦真亦幻的案発地
ミステリ小説マップ
真実でもありフィクションでもある事件現場を探す
メジャーなミステリが日本のどこを舞台にしたのかを地図にチェックを入れて説明しているが、対象作家に西村京太郎も入れていたら成立しない企画だろう。
伝統本格到幻想的推理
紛繁的推理漫画
伝統本格からファンタジーへ至るミステリ
複雑に混み合ったミステリ漫画
金田一、コナン、あやつり左近、スパイラル、魔探偵ロキなどのミステリ漫画を紹介。
専訪:天樹征丸
以金田一之名
推理漫画的開端《金田一少年事件簿》
独占インタビュー:天樹征丸
金田一の名をもって
ミステリ漫画の草分け『金田一少年の事件簿』
思ったんですけど同じ誌上に天樹征丸氏と島田荘司先生を載せて良かったんでしょうか。あの騒動からずいぶん時間も経っていますしもう手打ちは済んだと思いますが余計な心配をしてしまいます。
島田先生が前記のインタビューで『占星術殺人事件』ができる経緯をわざわざ語っているのも、島田先生なりの先制ジャブのように見えてきます。
窺一斑而知全豹
窮極思変的推理劇
一部分を見て全体を推察する
考え尽くされたミステリドラマ
土曜ワイド劇場や火曜サスペンス劇場など曜日によって時間帯が固定されたミステリドラマを紹介。
没有真正完美的犯罪
経典推理劇《古畑任三郎》
完全犯罪はない
古典ミステリドラマ『古畑任三郎』
古畑任三郎の分析。人に指を指した回数や事件を解決するまでのスピードをグラフにしているが、これは執筆者が自分で調べたのだろうか。
名偵探VS名罪犯
名探偵VS犯罪者
ミステリ作家がこれまでに生み出した名探偵及び手強い犯人をまとめている。
日本偵探業的真実
日本の探偵業の真実
フィクションでは殺人事件や難事件で警察より抜きん出て活躍する日本の探偵のリアルを中国人読者に教える。
日本推理雑誌
推理世界里的密雲重畳
日本のミステリ雑誌
ミステリ業界の夥しい繰り返し
これまで日本国内で刊行されたミステリ雑誌のまとめ。各雑誌の特徴を簡単に説明している。
謊言与謎題
追尋真相的推理遊戯
嘘と謎
真相を追うミステリゲーム
逆転裁判シリーズとレイトン教授シリーズについてまとめている。
このように記事の数は多く執筆者もバラエティに富んでいるので各方面から日本ミステリを論じられていると思いますが、インタビューを担当したのが全員編集者であったこともあり、各作家に対してあまり深く掘り下げた質問ができていなかったのが読者にとって不満が残るところでしょう。
日本人にとっては中国の読者やミステリ関係者が日本ミステリをどのように考察・分析しているのかがわかる資料として使える内容かと思います。