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栖鄭 椎(すてい しい)
年齢:
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非公開
誕生日:
1983/06/25
職業:
契約社員
趣味:
ビルバク
自己紹介:
 24歳、独身。人形のルリと二人暮し。契約社員で素人作家。どうしてもっと人の心を動かすものを俺は書けないんだろう。いつも悩んでいる……ただの筋少ファン。



副管理人 阿井幸作(あい こうさく)

 28歳、独身。北京に在住している、怪談とラヴクラフトが好きな元留学生・現社会人。中国で面白い小説(特に推理と怪奇)がないかと探しているが難航中。

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このブログは、友達なんかは作らずに変な本ばかり読んでいた二人による文芸的なブログです。      
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  前回
 
 8月21日、東方早報上海書評上で陳一白は、新星出版社から出た《ホームズ全集》の注釈が海外書籍からの全くの盗用であると指摘し、注釈者である劉臻と新星出版社に対し辛辣な批判を加えました。

 それからおよそ2週間後の9月4日、注釈者である劉臻が同ニュースサイトに反論文を掲載します。以下はその抄訳です。
 

対《福爾摩斯被窃醜聞》一文的回復
 
 
 陳一白氏が上海書評に掲載した《ホームズがスキャンダルされた》は、筆者に非常に強烈な言葉を浴びせ人身攻撃の疑いがある。陳氏は結論を下すのがあまりにも独断的であり、多くの事情を理解していないため、筆者はここで謹んで解説をする。
 
(中略)
 
・ホームズの4大注釈本
 
 ホームズの全集を集めるのは容易であり版本も多い。しかし支持者(シャーロキアン?)にとって厳格な校勘と注釈を経た正典はまさに彼らの“バイブル”だ。
 最初の注釈本はクリストファー・モーリーの《シャーロック・ホームズとワトソン博士》であり、この本の出版以降4つの注釈本が現れる。
 
 1,ウィリアム・ベアリング・グールド 《注釈付きシャーロック・ホームズ》
 
 2,オーエン・ダドリー・エドワード 《オックスフォード版シャーロック・ホームズ全集》
 
 3,レスリー・S・クリンガー 《シャーロック・ホームズ参考文庫》
 
 4,レスリー・S・クリンガー 《新注釈付きシャーロック・ホームズ全集》
 
 
・私とホームズ
 
 筆者は推理小説の愛好者であり、長期にわたって多くの推理小説を読み続けてきましたが、同時にその歴史や作品の評論方面に興味がありました。2000年から筆者は“ellry”というハンドルネームで【推理之門】などのサイトでいくつものスレッドを作成し、推理小説評論研究をテーマにしたサイト【神秘聯盟】を立ち上げたことがあります。

(注:ellryと言えば歳月・推理誌上でちょくちょく海外作家のコラムを発表している評論家だ。10年10月号ではホームズ特集を、11年3月号ではアガサ・クリスティ特集、11年10月号ではポーに関するコラムを発表している。
(残念ながら去年の10月、私は日本に帰国中だったので歳月・推理を買っておらず、10年10月号のコラムの内容が確かめられない)
 


 
 2008年、筆者は新星出版社の委託を受けて《注釈本 ホームズ全集》の仕事に取りかかり、2009年中に原稿を納品しました。そして2011年7月に新星出版社から《ホームズ全集・図解本》として正式に出版されました。
 
 陳一白氏は《ホームズがスキャンダルされた》で注釈盗用云々の指摘の矛先は筆者の方を向き、【全くの詐欺である】とレッテルを貼ってくれました。
 
 アマチュアの愛好者として筆者は具体的に出版と版権問題について語る権利を持ち得ていません。出版前も当該書の見本を読むこともなく、正式に発売されてから複雑な問題を抱えていることを目の当たりにしたのです。しかも本では筆者の原稿が数多く削除されていました。
 

 例えば《ボヘミアの醜聞》では90以上あった注釈が70まで削られている。
 
 筆者が執筆したあるいは翻訳した関連項目の文章にはひとつも署名がついていなかった。
 
 注釈の引用元や説明を書いた序文と参考書目録が削除されており、注釈の形式や引用元に対する読者の理解不足を引き起こした。
 
 海外作品の版権問題はこれまでずっと出版社が協議するのが決まりなのですから、どこの世界に個人(例えば筆者)で国外にいる著作権保有者と話し合う人がいるのでしょう?陳氏は『爆発』する対象を明らかに間違えています。


 
 
 このあとellryこと劉臻は陳一白の質問に丁寧すぎる態度で答え、この反論が売り言葉に買い言葉的な様相を呈してきます。その返答を全部翻訳するのはしんどいので、Q&A方式で掲載することにします。
 
 
 
・『国内1のホームズ研究家』ってなに?
 
・これまで一度もそんな肩書きを名乗ったことがありません。新星出版社とネットショッピングサイト京東商城が勝手に付けただけです。
 
 

 ・クリンガーの注釈本にそっくりなんだけど。
 

 ・注釈本という書籍にはある慣例が存在します。注釈者の主な仕事は編集、整理、そして各専門家の意見や観点を収集し、関連文章を本文に挿入することです。大部分の注釈は注釈者本人の研究成果ではなく、例えばクリンガーの《シャーロック・ホームズ参考文庫》は基本的に他人の意見や観点を引用しており、自分の意見を述べている箇所は少ないです。

 注釈にも一定の形式がありまして、ホームズ学界の研究者たちの意見を取り上げる際にはその作者や作品の名前を書きますが、事実性のある資料、例えば人物や場所や物の名前などに関しましては客観的に述べるに留まり、その出所を書くことはしません。
 筆者もその慣例におおよそのところ従いました。
 
 

 ・どうしてランガムホテルのオープン年月日がクリンガーと同じ間違いをしているのか?
 

 ・この間違いはベアリング・グールドの注釈本にも見ることができます。クリンガーはおそらくベアリングの誤った注釈を使ったのでしょう。クリンガーの本には他にもベアリングの注釈と類似した箇所が数多く散見しています。

 ベアリングが1967年以前に蒐集した大量のホームズ学の観点や資料があるために、クリンガーの新注釈本もそれらの観点や資料の引用を避けられなかったのです。

 

 ・注釈に挙げている100年以上前の古い資料を見にアメリカやイギリスまで行ったの?
 

 ・まさかそんなことを指摘されるとは思いませんでした。《The Times》に関わらず、世界的に影響力のある新聞はデータ化されて、創刊以来のバックナンバーをネットで読むことが出来ます。

 確かに年代の注釈の引用元はベアリングの研究です。筆者は研究者である彼の名前を隠しておらず、これはウィリアム・ベアリング・グールドの推理であり、筆者独自の意見ではないとはっきり説明しています。
 
 
 
 この反論の中で劉臻は、陳一白の誤解の原因は新星出版社にあると言及し批判の矛先を躱しています。また、ホームズ研究の事情を知らない第三者がとやかく口を出すな、と陳の指摘自体を一蹴しています。
 
 
 しかし、この反論文にあるような新星出版社の勝手な添削が事実ならば、そもそもこの問題に声を上げるべきだったのは陳一白ではなく劉臻自身だったのではないでしょうか。
 
 
 さて話は前後しますが、8月21日に陳一白が《ホームズがスキャンダルされた》を発表してすぐ、SNSサイト豆瓣でこの問題の真相を求めるスレッドが立ちます。オリジナルのスレッドは既に削除されているので転載文章を紹介しますが、なんと新星出版社の編集者褚盟が質問に答えています。
 
参考サイト:豆瓣のとあるページ
 :東方早報 《福爾摩斯被窃醜聞》後書
 
HD612
 新星はレスリー・S・クリンガーの注釈本の著作権を買っていないだろうな。そしたらellryが付けた注釈と原文の注釈を分けなかったためにこんなことになった……というのが個人的な推測。
 
褚盟
 きっと買っていないし、また分けてもいないし注釈もしていない。新星が《著作権法について新星は理解している》と思っていないというわけじゃない。私はもともとこの版本と他の物にこんな関係があるなんて知らなかったんだ。
 
 
HD612
 褚盟さんに聞きたいんですけど、真相はいったいどうなのでしょうか?新星とellryとの間でかわされた契約書でも見れば事情も分かるんですけど。
 
 
褚盟
 いまはellryがどうのこうのとは言っていない。不明瞭な事情をはっきりさせるには法律による線引きが必要だ。契約書を公開するなんて不可能だが、書面には条項にはっきりと【注釈者は注釈内容に対する完全な著作権を必ず備えていなければならず、揉め事が起きたら内容提供者がその責を負う】と書いてある。契約書には控えがあるから必要なときには提示する。
 
 

 褚盟はこの問題に関して出版社と注釈者の責任は分けて考えるべきと言っています。ただし上記のコメントが新星出版社の見解なのか褚盟個人の意見なのかは不明です。

 それにしても、他の出版社から出した自著に捏造コメントを勝手に付け加えられた褚盟が自社で起こった版権問題に悩まされるとはなんとも皮肉です。
 
 
 
 褚盟の対応で一旦は収まるはずだったこの問題ですが、ここに渦中の人物、劉臻ことellryが現れたことにより、疑惑がますます複雑かつ深刻になります。以下は褚盟のコメントに対するellryの反応です。
 
 
ellry
 その1、原稿には序文と参考書目録があり、序文にはっきりわかるような形で、この注釈本は4大注釈本を底本にしていると明記し、参考書目録には多数の参考書を列挙した。しかしこの2編の文章は正式出版されたときはすっかりなくなっていた。
 その2、【注釈者は注釈内容に対する完全な著作権を必ず備えていなければならず、揉め事が起きたら内容提供者がその責を負う】なんて規定は契約書に記載されていない。
 
 
 
 これからおよそ2週間後にellryは劉臻として上記の反論文を発表するわけですが、その間に新星出版社と何か話し合いの場でも設けたのでしょうか。可能性が高いだけでその真偽は定かではありません。
 
 
 兎にも角にも、《ホームズ全集》問題に関して新星は公式的な見解を提出せず、劉臻は9月4日に反論を発表してから静かなままで、真相解明にはまだまだ時間がかかりそうです。
 
 
 しかしこの問題に黙っていない男がいました。次回は陳一白の最終宣告をお伝えします。
 

 そして最後に、《ホームズ全集》の注釈問題をまとめたミステリ掲示板に書き込まれていたコメントを紹介します。
 
参考サイト:推薦:《福爾摩斯被窃醜聞》
 
この陳一白は劉臻にどんな恨みがあると言うんだ
 
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