またエライもんを見つけてもうた……
ラーメンが食べたい。
知人が新発売のカップ麺や地元のラーメン屋をやけに褒めるので、こっちも美味いラーメンが食いたくなった。
建外SOHOに横浜家系の無敵家の2号店ができたのを思い出し、調査ついでに食べに行くかと風寒い外に出た。
そしたら建外SOHOでとんでもないものを見つけてしまった。
「寄ってってくださーい、新装開店でーす」
ふっ福井ラーメン?!
最近のラーメン屋は店名に都道府県名をつけるのがトレンドなのか?!
エグイラーメンを食わされて、長野県民の友人からは「そんなもんしらん」と一蹴され、舌のエグミもとれないうちにまた都道府県シリーズかよ。
今日は無敵家に行くんだからまた今度にしようと店を通り過ぎようとしたのだが、この福井ラーメンの立地に度肝を抜かされた。
隣が、日本人経営のラーメン屋『え~やん』なのだ。
すげぇインファイトをしかけているぞ福井ラーメン。
路上ではえ~やんと福井ラーメンの店員が大声で店の宣伝をしている。
え「味噌ラーメンいかがですかー。北海道伝統の味噌ラーメンでーす」
そう、この店は味噌がウリだった。そして店内に何故か鎧が飾られてあるのだ
対する福井ラーメンの方は……
福「いらっしゃいませー」
福「魚頭火鍋と焼肉ありますよー」
日本料理ですらねぇのかよ!
こりゃとんだラフファイトだ。
これを無視するわけにはいかない。
店内は意外と奥行きがあった。壁には料理の写真と相撲の絵。
味千ラーメンという中国の有名ラーメンチェーン店の内装と酷似している。
そして恒例のメニューチェックに入る。
豚骨ベースのラーメン、丼物、サイドメニュー、ドリンク類…
どうして中国のラーメン屋はこんなに味千ラーメンが好きなんだ。
日本語の間違いなどあるのが前提なのでもはやスルーできる。しかし酒類の欄に、『日本のワイン』と日本語でタイトルをつけているのに、紹介しているのは日本酒だけって一体どういうことだ?
あと、豚骨スープを推薦したいんだろうが、どんな翻訳ソフトを使えば『豚骨のスープ イルカの骨』なんてウミガメのスープ的な意味不明の訳文に仕上がるんだ?日本語がわかる外国人いたら卒倒するぞ。
メニューを見ただけでお腹いっぱいになりそうだったが、とりあえず浴衣みたいな変な和服着ている店員に福井ラーメン(16元)と焼き餃子(9元)を頼む。そして今度は店内をゆっくり見回してみることにすると、妙なことに気が付いた。
壁に貼られたラーメンやうな丼、天ぷらや寿司の写真以上に魚の火鍋の写真の方がデカイのだ。オススメの味噌火鍋は味噌汁にテラテラ光沢のある魚の頭がプカリと浮かんでいるような絵で、まるで愛のエプロンでインリンオブジョイトイが作ったアンコウ鍋のようなビジュアルだ。
こりゃ長野ラーメンを超えるかもしれない…ノートに店の危なげなところをメモっているとなんと日本人の男性三人組が入店してきた。
顔を見てわかった。コイツラ、ボクと同類の怖いもの見たがりだ。だって顔がニヤケてるもの。
そうこうしているうちにラーメンが来た。具は味千や長野ラーメンとまったく一緒だ。
だがスープを一口すすって認識を改めさせられる。スープの味は長野ラーメンは言うに及ばず、味千より若干濃いめである。
メンもコシがほぼゼロの前二者と比べてやや固い。噛むとジワリとメンの味が口の中に広がる。
残念なことにチャーシューは牛タンのように固く臭さはあったが、キクラゲはエグミもなくコリコリとしており歯触りを楽しめた。味のアクセントとなる備え付けのオニオンチップは長野ラーメンのように湿気っておらず、タマネギの他にニンニクと唐辛子も入っているようでスープに入れると茶色い油が浸みだした。
そして餃子の方も予想外に旨い。底面がカリッと焼かれ、焦げた羽まで付いている餃子を噛み千切るとヒダの隙間から肉汁が滴り落ちる。そして味付けは白いご飯に合う濃さなのだ。
どうしよう、美味しい。
計画としては、マズイラーメンの口直しに無敵家に寄り、『やっぱ本場の日本ラーメンが一番だな』と余韻に浸ろうとしていたのに、これじゃあ満足して帰宅できちゃう。
まぁ一応、比較の意味合いで寄ってみるかということで新しくできた無敵家2号店に行き、いつもの黄金看板ラーメン(35元)を食べる。
ドロドロとした濃厚豚骨スープは若干臭みがあったが、ひとくち口に含んだだけで脂の甘味が口内に広がる。スープがよく絡んだ太麺はモチモチと日本人には嬉しい歯応えがある。卵は半熟、チャーシューは箸を入れるだけで崩れてしまう柔らかさだ。ドンブリを持ってスープをすすると徐々に見えてくるドンブリの底が悲しい。
無敵家の店員、まさかボクがたった今他の店でラーメンと餃子を平らげてきたとは思わないだろう。それぐらいの喰いっぷりだったと自負している。
膨らんだお腹を抱えた帰り道にふと思った。
確かに無敵家のラーメンは美味かった。だけどそのラーメンに、35元の価値があっただろうか。
その反面、善戦を見せた福井ラーメンは16元とは思えない味の良さだった。
両者を比較すれば無敵家の味の方が優れていることは論を待たないが、16元という安値で客を十分に満足させるラーメンを提供する福井ラーメンも素晴らしいと思う。
北京の日本人経営の日本料理屋ではラーメン一杯50元で出すところもある。良い材料を使い日本と同じレベルの料理を提供しようとすれば原価が高くなるのも当然だが、安くてそこそこのものを出すのもまた料理屋の本分だとは思うのだが…
家に帰り、福井ラーメンについて調べてみた。
オーナーは味千ラーメンで長い間修行をしたのち独立し、中国各地で富田ラーメンや吉田ラーメンなどのラーメン屋を次々と開店させていったらしい。
参考資料 http://blog.china.alibaba.com/blog/zhangcong431924/article/b0-i19837082.html
しかし、以前味千ラーメンの社長がインタビューで、肝心なノウハウは教えないと話していたのだが、福井ラーメンのオーナーはどうやって味を盗んだのだろうか。あと、訴訟とか問題は今まで起きていないのか。
参考資料 http://diamond.jp/articles/-/9737?page=4
そして昨日、出先で満腹ラーメンと富岡ラーメンって店を見つけたのだが、流石にもう寄る気はしなかった。
※追記・2011年4月14日にここを通りかかったらお店が代わっており、福井ラーメンの名前はどこにもなかったです。