日本のライトノベルを代理出版する出版社となるために何が必要かと考えると、翻訳の質はもちろんのこと一定の発行量の確保や広告力も大事ではありますが(その点『天漫』という雑誌媒体を持っている天聞角川は強い)、書籍本来の品質も非常に重要です。
例えば日本のアマゾンのレビューで『紙質が良いから☆5つ』って評価はあるでしょうか。
中国のアマゾンだとよくあります。
(訳)以前の出版物と比べると、カバーが合っていないし、文字の濃淡があってインクにムラがあり、触った感じも以前と違って明らかにページが薄くなっており、品質が悪くなっている。何か原因があるのかもしれないが、最近の天聞の本は以前のものより全体的に劣っている。印刷工場の関係かも知れないが、角川には品質をずっと保持してもらいたい。
《俺の妹がこんなに可愛いわけがない11巻 レビューより》
(訳)中身はまだ読んでいないが、包装がとっても海賊版っぽい。
表紙はペラペラだし、紙質は普通、印刷された文字の効果も普通。だけどカラーページは良さげだ。ビニールカバーがしっかりしていなかったから上のほうがすぐに剥がれた。
《僕の妹は漢字が読める1巻 レビューより》
(訳)印刷の質は天聞角川に遠く及ばない。
カバーはガバガバだし、扉絵は地味だし、全然ライトノベルに見えない。(以下略)
《這いよれ!ニャル子さん2巻 レビューより》
これはライトノベルに限った話ではなくミステリのジャンルでも言われますし、中国国内の書籍でもこの問題がつきまといます。
紙が安っぽい、めくりづらい、文字のフォントがおかしい等など書籍の内容とは無関係の部分に不満を表すのは正規版が国内に横行する粗雑で安価な海賊版と対して変わりなかったことへの怒りかもしれません。
中国ではデータ形式で尚且つ無料で簡単に作品を読むことができるから、購入するその本は既に読み終わっているものかもしれず、形として残る書籍をわざわざ購入するのは記念品や保存版の収集といったマニア的な意味合いがあるのかもしれません。
とにかく、翻訳の質が良くても読まれる前から☆1つの評価を付けられる可能性があります。読者の中には先に日本語版や台湾語版を手に入れている人もいるだろうし、他の正規版と比較すれば中国語版の粗さが更に際立つことになるでしょう。
本の作りは読者が書籍を購入する条件の一つになっていますが、今後は日本側の出版社も中国で書籍を代理出版してくれる出版社を選ぶ指針にするんじゃないでしょうか。印刷がダメだから売上が落ち、ひいてはその原作の評価まで落とすことがないよう日本のライトノベルを出版する出版社は気をつけていってもらいたいです。
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