北大培文杯(北京大学作文コンテスト)で一等賞を取った作品に、実は過去にネット掲示板に投稿された小説を盗作したものだという疑惑が上がっています。これだけならよくある盗作疑惑ですがその出典となった作品が日本の有名アニメ『ヘタリア』の同人小説ということもあり、現在は同人作品の著作権の有無についてまで話が及んでいます。
今回の事件に関するニュースやサイトを見て私なりに簡単にまとめてみました。
北大培文杯盗作疑惑に関する幾つかの説明
暖之874の微博(マイクロブログ)
2016年5月4日にとあるネットユーザーが高校3年生の王さん(女性)が2015年度第2回『北大培文杯』で一等賞を獲得し、更にその優秀作品を収録した『傾聴未来的声音』にも掲載された『閃電』が2011年に『ヘタリア』の『露中』スレッドに掲載された『未完成的肖像』を盗作したものだと指摘しました。
(『露中』とはヘタリアのロシアと中国のカップリングを指す。記事では「露中カップリングは中国で人気がある」と説明されている。)
そのネットユーザーは更に王さんの同賞の入選作品『琥珀 回家』も他のネット小説2作品を盗作したものだと指摘し、各作品の相似箇所をまとめた比較表をアップしています。
ここではその比較表の内容を説明しませんし、実際に『閃電』と『未完成的肖像』を読み比べることもしません。なにせ『閃電』は抗日戦争と世界反ファシズム戦争の勝利から70年周年を祝うという内容なので、面白いわけがないのです。
この比較表を見てみると2つの作品はどちらも登場人物の名前が王耀(ヘタリアの『中国』の名前)と伊万(訳:イワン。ヘタリアの『ロシア』の名前)であり、そのキャラクター設定や背景も酷似していることがわかります。
ネットでの指摘を受けて5月6日に北大培文杯は『閃電』に対して審査をすると発表。翌日5月7日にはその一次審査に参加したネットユーザーがネット上で「内容的に見て盗作だと認められる材料は多いが、最終的な判断は法律家の意見を待つ。」とコメントしました。
そしてこのコメントに対し同人文化研究者が「本当に盗作かどうか判断するのは難しい。」という趣旨の文章を発表。検証は論文より慎重に行うべきだと述べました。
この同人文化研究者の文章を読んで非常に驚いたのですが、北大培文杯は事前に文章を書いてきて提出するという形式ではなく、当日に現場でお題が発表されて生徒たちがその場で手書きで執筆するというテストのような内容だそうで、だから今回の盗作疑惑はよくありがちな『コピーアンドペースト』ではないから余計に判断が難しいというわけです。
この件は近いうちに盗作が認定されて決着が付きそうですが、微博でもニュース記事でもこの王さんの名前及び所属高校が実名で出ているので彼女を追い詰めることにならないのか心配です。まぁ一等賞を取った時点で名前どころか顔もメディアに出ているのかもしれませんが相手はまだ10代なのですから真偽が明らかになるまで作品名も隠した方が良かったのではないでしょうか。人肉捜索なんてことが起きないことを祈ります。
あと今回の事件は次回への課題を残すことになりましたが、元ネタが同人小説でもお偉方(先生方)の好きそうな内容を書けば合格するという現代中国の作文教育の批判に繋げてこそ後世に伝えるべき好例になるのではないでしょうかね。
壹読
日本帰る前に近所のコンビニで購入した雑誌の一つ『壹読』。この本はゴシップ記事のない週刊誌的な内容で中国国内の問題や社会情勢に軽めの視点で切り込むというスタイルです。
今回私が買った雑誌に気になる内容の記事があったので紹介します。記事全文は下記のアドレスで読めますので気になる方はこちらに目をお通しください。
中国姓名:不重名的戦争
中国の名前:同姓同名にさせない戦い
http://www.183read.com/magazine/article_314109.html
内容を要約すると中国人の名前は時代の趨勢と不可分であり中国建国当初は「解放」だとか「建国」が多く、文化大革命前後には「衛紅」や「文明」などがよく見られましたが、中国人は姓と名の短さから同姓同名の人間が少なくなく、現在では子供を他人と同姓同名にさせないために通常使われない漢字を子供に付ける親がいるせいで、名前の読みづらい子供が増えたという現代中国の社会問題です。
一見しただけでは読めない名前と聞けばDQNネームやキラキラネームが思い浮かびます。確かに赤線を引いている漢字なんて中国で生活していて見たことありませんし読み方もわかりませんが、これも一種のキラキラネームでしょうか。
中国のキラキラネームと聞いて思い出すのが薄煕来の息子の薄瓜瓜です。
あと、本名は出せませんが私の中国人の友人に『炎尾燃』みたいなニュアンスの名前を持つ男がいます。要するに名字と名前に炎や氷などと言った自然属性が付いていて、更に彼の弟も『炎尾焼』のような個性的な名前でいた。ただし、今回記事で取り上げられている読めない漢字を使用した名前の問題は、漢字の組み合わせや発音の妙ではなく、単純に難読漢字を使っているだけですので、名前からあんまり創意工夫は感じられません。
こういう難読漢字を名前に使うことが通常となると例えば中国の小説のレビューとかにも影響が出るので、日本語の漢字にはない中国語はあまり使わないで欲しいです。