トリフィドの日が来ても二人だけは読み抜く中国産ホラー漫画　非人類

　２４歳、独身。人形のルリと二人暮し。契約社員で素人作家。どうしてもっと人の心を動かすものを俺は書けないんだろう。いつも悩んでいる……ただの筋少ファン。

副管理人　阿井幸作(あい　こうさく)

　28歳、独身。北京に在住している、怪談とラヴクラフトが好きな元留学生・現社会人。中国で面白い小説(特に推理と怪奇)がないかと探しているが難航中。

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トリフィドの日が来ても二人だけは読み抜く

このブログは、友達なんかは作らずに変な本ばかり読んでいた二人による文芸的なブログです。　　　　　　

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2024/11/24 [Sun] 04:12

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中国産ホラー漫画　非人類

2012/04/26 [Thu] 01:43

　漫画はネットで読むことが常識の中国にウェブコミックのジャンルが存在した。

　

　この非人類は個人のホームページにアップされている漫画ではない。中国の月刊漫画誌尚漫のウェブ上で連載されている商業誌である。単行本が既に発売されているというのに公式オンライン上では第1話から最新話までアップされっぱなしなのが中国らしくて素晴らしい。

　田舎から都会へ舞台を換え人から人に感染する呪いが主軸となっているだけに、ホラー漫画として新鮮味は欠ける。また画力が妙に高いことも相まって、一見すると日本漫画の中国語版を読んでいるような錯覚を起こしてしまう。トイレのゴミ箱や部屋に置かれたウォーターサーバーなどの中国らしさが描かれていなければ判断に迷うところだ。

　農村に遊びに来た少女達は理不尽にもその呪いを受け、都会に戻って災厄を撒き散らす媒介者となる。人面疽にも似た醜悪な出来物を後頭部に生やした少女達は次々と死を遂げ、不審死の謎を追う刑事たちは大量殺人事件と伝染病の両方の線を追う。

　そして少女たちを故郷の農村に連れてきた少年は罪悪感に苛まされ、彼の兄はまるで誰かを庇うように刑事の追求をはぐらかす。呪いと聞いて兄弟が思い浮かべたのは、子供の頃同じ村に住んでいた名前も知らない少女だった。

　

　田舎で起こった怪奇事件、精神を病んだ女性、伝染する奇病、そして田舎から都会へ伝播する呪いなど出てくるネタはみなホラーマニアの心をくすぐる設定だが、故に使い古された感は否めない。ただし同じ作品内で少女パートと刑事パートでホラーとサスペンスの舞台を切り替えメリハリを付けることで手垢まみれの素材を上手く活かしている。

　

　読者に次の展開を想像させる構図、ホラー漫画独特の『溜め』など高い画力と描写力を見るにつけ、この作品が何故本誌連載ではないのかがますます奇妙に思えてくる。ウェブ連載がかなり不定期さを差し引いても最初から紙媒体に載せるべきではなかったのか。

　しかもこのウェブ漫画、日本のウェブ漫画サイト

みたいにページにコメントを投稿できるようになっているから、そこかしこに読者のツッコミやコメントが入る。伊藤潤二の漫画ならともかく、ホラー漫画にこのシステムは不要だろう。

　不満な点は少なくないが、多くの登場人物を動員して多角的な視点を用いたストーリー性の高いホラー漫画は中国ではお目にかかったことが無いので、この漫画が今後どう化けるのかが非常に楽しみではある。

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